Eric Dolphy :Musical Prophet: The Expanded 1963 New York Studio Sessions
レゾナンス・レコードから出たエリック・ドルフィーの発掘音源を聴く。エリック・ドルフィーが1964年にミンガスのヨーロッパ・ツアーに発つ前に、親しいスミス夫妻に託して行ったスーツケースの中に収蔵されていた7時間半の音源のテープなかから、推測5、6時間あったとされるプロデューサー、アラン・ダグラスの63年のセッションを中心に作品された。既発売はFM Recordsの『Conversations』(1986-4曲)とDouglasの『Iron Man』(1986-5曲)それに上記二枚のCDの未発表テイク集Marshmallow Exportの『MUSES』(2013)これらもドルフィー自身が所蔵していた別テープを使用してマスタリングしている。完全未発表は8曲で75分ほど。「Out to Lunch」(1964)直前のドルフィーの演奏の全貌をまとめて知ることが出来るので、マニアにとっては垂涎の音源だろう。当初CDで買おうとしたが、HDtracksのバーゲンで15%引きの$31.86で購入。CDは100ページ余りのブックレットが付くし、import_CDだと$19.15なのだが、24bit 192kHz Flacに惹かれてしまった。この音源のブックレット(PDF)は30ページに満たないが、英語なので当ブログにとっては猫に小判状態なので、大勢に影響はあまりない。とにかく音質優先ということでの選択だったが、おおむね満足できた。音は当然ながら人数が少ないほどいい。特に、アルト・ソロの「Love Me」とバス・クラとベースのデュオの「Alone Together」は現在の録音といってもおかしくないほどビビッドで、ドルフィーの底知れない技量に今更ながら驚くばかりだ。「Love Me」は二つの別テイクも遜色のない演奏で圧倒される。「Alone Together」の別テイクは本テイクとは全く傾向の違う演奏。本テイクは前衛的で日本的な間が印象的だが、別テイクは始めからメロディーをまともに演奏している分月並みといえないこともない。全編にわたってドルフィーのアルトの超絶的な速吹きやバス・クラの驚異的な高音など聴きどころ満載。特にバス・クラの高音は軽いカルチャー・ショックを覚えた。他のミュージシャンでは、出番の多いリチャード・デイヴィス(1930-)の端正なベースが光っていた。ボーナストラックの「A Personal Statement」はデヴィッド・シュワルツのヴォイス入りの前衛的な作品で、他の曲に比べてちょっと異質だ。なお、「Burning Spear」のみ2ベースでの演奏。録音が近いためか「Out to Lunch」の雰囲気に最も近いのはこの曲だ。大人数の曲はもともとの録音の分離があまり良くなく、ざらついていて古臭く聞こえる。特に1曲目の「Jitterbug Waltz」は良くない。そのためかソロやベースとのデュオに比べるとあまり楽しめない。2xDHDのRené Laflammeniによる原テープから入念にマスタリングされた音は、ノイズがなく今までで最高の音質だろう。ラインナップとしては他にDSD(2.8/5.6)も取り揃えられている。Eric Dolphy :Musical Prophet: The Expanded 1963 New York Studio Sessions(2xHD HX711841744229) 24bit 192kHz FlacConversations:01. Jitterbug Waltz02. Music Matador03. Love Me 04. Alone Together05. Muses for Richard Davis (Previously Unissued 1)*06. Muses for Richard Davis (Previously Unissued 2) *Iron Man:01. Iron Man02. Mandrake03. Come Sunday04. Burning Spear05. Ode to Charlie Parker06. A Personal StatementPreviously Unissued Studio Recordings:01. Music Matador (Alternate Take) *02. Love Me (Alternate Take 1) *03. Love Me (Alternate Take 2)04. Alone Together (Alternate Take)05. Jitterbug Waltz (Alternate Take) *06. Mandrake (Alternate Take) *07. Burning Spear (Alternate Take) * * 完全未発表Eric Dolphy(as, fl, b-cl),William ”Prince” Lasha(fl), Huey ”Sonny” Simmons(as),Clifford Jordan(ss), Woody Shaw(tp),Garvin Bushell(bassoon), Bobby Hutcherson(vib),Richard Davis(b), Eddie Kahn(b),J.C. Moses(ds), Charles Moffett(ds)*Bonus Track:DISC2 track6”A Personal Statement” is a Bob James composition that was recorded at WUOM studios in Ann Arbor, MI on March 2, 1964 withEric Dolphy (alto saxophone, bass clarinet, flute),Bob James (piano), Ron Brooks (bass),Robert Pozar (percussion) and David Schwartz (vocals).Recorded on July 1 & 3, 1963 at Music Maker's Studios in New York City,, except 2-6, which was recorded in Ann Arbor, Michigan on March 2, 1964.