SFJAZZ Collective
SF JAZZとはどういう意味なんだろうと、しばらく考えていました。San Franciscoのことだったんですね。私は、レッドマンのファンでして、そのつながりで購入してみましたが、これがなかなか良いです。ちょっと、レトロっぽいところと、新しめの所が混在している感じで、それが何か絶妙な味を出していて、結構特徴のあるサウンドだと思います。このグループはSF JAZZというNPOの資金援助を得て、レッドマンが2000年に結成したグループです。サンフランシスコ・ジャズ・フェスティヴァルとSFJAZZの春のシーズンに限って、活動を行っているようです。比較的若手中心のメンバーで、その中にお年を召した?ボビー・ハッチャーソンが入っていて、異彩を放っています。フロントが4管編成で、あとはヴァイブにリズム隊という、8人編成のバンドです。プログラムは、オーネットコールマン3曲に、メンバーのオリジナル4曲という構成です。このグループのコンセプトの柱である、ジャズの偉大な作曲家にスポットを当てる目的で、このコンサートではオーネット・コールマンが取り上げられています。この録音は、2004年3月と4月に行われた、サンフランシスコとカリフォルニアでのコンサート・ツアーのライブ録音です。編曲は、ピアノ、アコーディオン奏者でもあるギル・ゴールドスタイン。彼の演奏は聴いたことがありませんが、ギル・エヴァンス・オケで指導を受けていたようです。結構、構成が複雑で、テンポも良く変わり、演奏者にとっては、なかなか骨の折れる編曲ではないでしょうか。一聴、ミンガスとかドルフィー、勿論オーネットもですが、そのような音楽を洗練させたようなサウンドであり、展開です。最初は、サックス奏者ミゲル・ゼノンのオリジナル、「LINGALA」です。面白いハーモニーで、テーマが奏されますが、どこかで聞いたような響きであり、懐かしくもあり、ちょっぴり新しさもあるといった感じでしょうか。最初のソロは、ハッチャーソンのヴァイヴ。他の曲でのソロは、いまいちですが、この曲ではなかなか良いソロを聴かせます。途中から入るアンサンブルのフレーズも、かっこいいですね。テンポが速くなり、ゼノンのアルトソロが続きます。このソロが大変素晴らしいです。マリンバのオスティナートに乗って、曲が次第に昂揚していくかと思いきや、そのまま静かに終結します。続いては、オーネット・コールマンの初期の傑作「ジャズ来るべきもの」に収録されていた作品で「Peace」テーマに続くソロが、アルト、ソプラノ、トランペット、トロンボーンの順に2回繰り返されますが、さわり程度といったところで、あっさり終わってしまいます。どちらかというと、アンサンブル主体のミンガス風な編曲。10分ほどですが、やけに速く終わったなと思えるほどで、ちょっともの足りません。3曲目はリニー・ロスネスの作品「OF THIS DAY'S JOURNEY」これが、なかなか充実した曲であり、演奏です。最初のけだるいムードのテーマのフルート、トランペット、トロンボーンのアンサンブルが、ビッグ・バンドっぽい響きで良いです。ハッチャーソンのよく分からないソロのバックで、ワルツが聞こえてきます。テンポを速めて、最初のメロディーが繰り返されます。次第に盛り上がりながら、ゼノンのアルト・ソロがスタイリッシュな演奏を繰り広げます。ロスネスのピアノ、ブレイドのドラムのバッキングもエキサイティングです。一転して、テンポが速くなり、ロスネスのソロが始まります。これが、快適なテンポに乗って、実にスリリングです。時折入る、ブレイドの一撃が効果的です。再びゆったりとした最初のテーマが現れますが、テーマの断片をまき散らしながら、次第に昂揚してクライマックスを築きます。本作随一の聞き物と思います。4番目は、再びオーネットの作品で、初リーダーアルバム収録の「WHEN WILL THE BLUES LEAVE」ここでは、ニコラス・ペイトンが全編にフィーチャーされています。ソロはまずまずですが、バッキングのドラムのフィルインの多彩さが目立ちます。次は、ジュシュア・レッドマンの作品「RISE AND FALL」イントロは、レッドマンのいななきを思わせるソプラノ・ソロの後、ひとしきり管のアンサンブルがあり、おもむろにテーマが出ます。レッドマンのテナーソロが続きますが、さほど昂揚することなく収束。ハッチャーソンの短いソロを経て、再びレッドマンのソロ。今度は、激情的な演奏で、ぐいぐいと盛り上げていきます。比較的平静なピアノソロの後、ソプラノにテーマが出て終了。オーネット作品の最後は、アトランティックの2作目「Change of the Century」に収録されていた「UNA MUY BONITAオリジナルでは、フレーズの処理がヒップで凄くかっこよいが、この演奏は、少しゆっくりとした、とても軽い柔らかなタッチで、原曲とはひと味もふた味も違います。ちょっと、コールマンのイメージから外れるような気がしますが、これはこれでいいのかもしれません。テーマを2回繰り返した後のソプラノとトランペットの掛け合いが面白いです。続いて、レッドマンのソプラノ・ソロ。これはなかなかいけてます。ソロ後半での、ドラムスの攻撃的なバッキングから、アンサンブルが加わるところも、とても良い流れです。ハッチャーソンのあまり面白くないソロ、トロンボーンの短いソロを挟んで、最後にテーマのテンポを急激に上げて、いろいろなフレーズが飛び交う中、曲は終了します。最後の曲は、ハッチャーソンの「MARCH MADNESS」この曲は、他の作品が比較的シリアスなので、気分を変えることを意図した選曲のようです。テーマは、ぐるぐるとスパイラル状に上昇していく、ただならぬ雰囲気を感じさせます。ひとしきり昂揚した後、ベースの少しコミカルなリズムフィギュアに導かれて、テーマが変形されて出てきます。ソロは、ニコラス・ペイトンが先発ですが、激しいプレイの割には、あまり聞き手に響いて来ません。「Dearly Beloved」の引用が聞かれます。休止のあと、再びテーマが奏され、その後にハッチャーソンのソロが出ます。笑いを誘いながら、例のコミカルなベースフィギュアに乗って、ウイリアムテル、76のトロンボーンなどの断片がコラージュ風に展開される中、突然終わってしまいます。ここいらへんがMadnessと名付けられたゆえんでしょうか。全体的にみて、ミゲル・ゼノンのソロが目立っていましたし、リズム隊、特にブライアン・ブレイドのドラムスが良かったと思います。久しく、オーネットの音楽を聴いていませんが、また聞いてみようかな、という気にさせてくれる良い機会になりました。SF Jazz Collective(Nonesuch 79866-2)1.LINGALA(M.Zenon)2.PEACE(O.Coleman)3.OF THIS DAY'S JOURNEY(R.ROSNES)4.WHEN WILL THE BLUES LEAVES(O.Coleman)5.RISE AND FALL(J.Redman)6.UNA MUY BONITA(O.Coleman)7.MARCH MADNESS(B.Hutcherson)Miguel Zendon (fl,as)Joshua Redman (as,ts)Nicholas Payton (tp);Josh Roseman (tb)Renee Rosnes (p)Bobby Hutcherson (vb, marimba)Robert Hurst (b)Brian Blade (ds)Gil Goldstein(arr)Recorded March and April,Center Arts,Humboldt State University,ArcataKXJZ,Crest Theater,SacramentoUCLA Live,Royce Hall,Los AngelsUCSB Arts and Lectures,Santa BarbaraUCSD Events,San DiegoJewish Community Center of San FranciscoSFJAZZ,Palace of Fine Arts Theater,San fransisco