The Mozart Album:Lang Lang
多少鮮度が落ちてしまったが、ラン・ランの新譜の感想を一言。今回はアーノンクール指揮ウイーン・フィルと共演したモーツアァトのコンチェルト2曲とソナタ集の二枚組。コンチェルトはバックがアーノンクールのためか、ごくオーソドックスな解釈。テンポも中庸で、落ち着いている。どちらも、意表をつくような表情は皆無でモーツアルトの音楽を楽しめる。k.491のカデンツアは聴いたことのない版でダイナミックな演奏を聴かせていた。ブックレットを見るとリリー・クラウス作でランランがアレンジしているようだ。k.491のラルゲットの中間部の木管アンサンブルの部分のハーモニーがとても美しい。ラン・ランもアンサンブルの邪魔をしていない。ラン・ランと楽員の心の通い合いが伝わってくるようだ。アレグレットでも同じことが言える。k.453も同じ趣向。ウイーン・フィルはこの楽団でなければ出せない木質系のサウンドで、ソロを暖かく包んでくれる。独奏者はさぞかし気持ちがいいのではないだろうか。アーノンクールも特に古楽的なアプローチを強調するわけでもなく、ごくオーソドックスな解釈。サウンドではティンパニが古楽器風のゴツゴツした音の他は特に目立ったところはなかった。二枚目はランランの独奏でピアノ・ソナタがロンドンのロイヤル・アルバートホール、そのほかがパリのサル・コロンヌでのライブ録音。コンチェルトに比べて、あまり精彩がない。思いっきり個性的なアプローチであれば、それはそれで面白いと思うが、新奇な解釈も聴かれない。ロイヤル・アルバート・ホールでのアンコールのトルコ行進曲はさすがに個性的だが、完全に技巧を誇示するショーピースになっていて醜悪としか思えない。まあ、強弱をつけたり、音符の処理を変えてみたり、色々やっているのはわかる。ただ、その結果が聞き手に伝わらないのだ。悪く言えば、「ふ~ん、それで。。。」という感じか。ブックレットの裏表紙にセッションを上から撮った写真が載っている。こういうアングルのショットは初めて見たが、年季の入った床が目に付いた。年月を経て重厚な外観になるのが普通だと思うのだが、単に汚くなっているとしか思えないような代物だ。元々の材質や表面処理が良くないのかもしれないが、黄金の間と呼ばれる割にはお粗末だと感じられるのは私だけだろうか。The Mozart Album:Lang Lang(SONY 88843082532)CD1:Piano Concerto No. 24 in C minor, K. 491Piano Concerto No. 17 in G major, K. 453CD2:Piano Sonata No. 5 in G major, K. 283Piano Sonata No. 4 in E flat major, K. 282Piano Sonata No. 8 in A minor, K. 310March in C major, K. 408/1Piano Piece in F major, K. 33bAllegro in F major, for piano, K. 1cPiano Sonata No. 11 Rondo Alla TurcaLang Lang(p)Vienna Philharmonic OrchestraNikolaus Harnoncourt(cond)Recorded April 14-17,GoldenSaal,Musikverein,Vienna(CD1)November 15,17,2013,Royal Albert Hall,London(CD2,Track 1-9,13)May 18,2014,Saal Colonne,Paris(CD2 Track 10-12)