Live & Let Live-Love For Japan
小曽根真がプロデュースした震災復興のためのトリビュートアルバム。 著名なジャズミューシャンを集めた豪華なアルバムです。ブックレットには、ミュージシャンの日本に対する思いと、ミュージシャン全員が手をつないでいる写真が載ってあります。間にポツンと一人分の空間が空いています。それは、アルバムを聴いているあなたの席を意味しているようです。 以前から気になっていたので、買おうかどうか迷っていました。amazonのレビューでは、急ぎ過ぎたため、一丁上がり的な出来になってしまったと書かれているのが散見されていたのも、購入に至っていなかった原因の一つです。レンタル屋さんに行ったときに偶然見つけたので、とりあえず視聴がてら借りてきました。良い演奏もあるのですが、ばらつきが多く、あまりいい出来とは思えません。レコーディングは4月29の東京から始まり、5月22日-24日のフロリダ、ニューヨークで行われました。ジェイク・シマブクロのウクレレとピアノのデュオが面白いです。ウクレレというとおもちゃみたいなものを連想しますが、ギターと全く遜色がありません。ウクレレと言わなければギターと思ってしまいます。さすがは「ハワイのジミヘン」と言われるだけあります。両者が火花を散らして真剣勝負を挑んでいるようなスリリングな展開で、緊迫感があります。このアルバム随一の聴きもの。モーツァルトのクラリネット協奏曲の弦のイントロは人数が少ないのもありますが、何か古い録音を聞いているような気がしました。ところが序奏が終わると、ソウルフルでユーモアも感じられるクラリネット、それにドラムスが入ってきました。鎮魂だから嫋々と進めていくものと思いこんでいたのが見事に裏切られました。ユリ・ケインの世界を思い起こさせる演奏で、これだと元気づけられます。パキート・デ・リヴェラはキューバ生まれのクラリネット奏者です。初めて聞きましたが、個性が強く、とても面白い演奏でした。ランディー・ブレッカーが競演する「There is no greater love」はごく普通の演奏ですが、メンバーが凄いので聞きごたえ十分です。特に、ワッツの挑発的なドラムスがいいです。ランディー・ブレッカー、小曽根、クリスチャン・マクブライトと続くソロはどれもいい感じです。特にブレッカーは65歳という年には思えない、パワフルで新鮮な感覚が素晴らしいです。ワッツの「GOLDAZE」はこのアルバムでは異色のナンバー。カリプソ風のメロディーですが、無機的なテイストとスピードに乗った疾走感満点の演奏です。小曽根のアブストラクトでパワフルなソロ、マクブライドの速弾き、そして、ワッツのドラム・ソロが力強く締めくくっています。1曲めの「Blue Bossa」はチック、小曽根、バートンと揃っていて、お馴染みの世界が展開されます。しかし、小曽根がこのメンバーに入っても全く違和感がないのは驚きでした。ピアノ・ソロは「AM I A DREAMER?」と題された1曲のみ。ドビュッシー風のハーモニーで、ダークで少し沈潜していくような雰囲気が感じられます。死者にささげるレクイエム的な演奏。「ふるさと」は、変にいじくりまわしたアレンジが気に入りません。もう少し素直に演奏した方がいいと思いますが、それではジャズにならないので敢えてこんな風になってしまったのかもしれません。菅野美鈴の癖のある歌もいまいち。これはなかった方がよかったです。今思えば、南郷で聞いた日野皓正の「ふるさと」は良かったです。素直に節を演奏しているだけなのですが、そこにこめられた氏の思いがほとばしるような演奏だったと思います。歌と言えば、ゲイル・モランの歌もひどい。ブックレットにはチックのセッションに一緒に来ていて、自分も歌いたいということで取られたテイクらしいですが、エキセントリックで、震災の皆さんに捧げる歌とは思えません。このナンバーは歌抜きの方が数倍素晴らしかったと思うと、彼女がその気にならなかったらと思わずにはいられません。佐藤可士和氏のジャケットとブックレットのポップなデザインはいい感じです。そういえば、この方、「クール・ジャパン」のロゴが、JOCのエンブレムと酷似していると話題になっています。参加したミュージシャンがブックレットに寄せている言葉は、日本に対する思いが述べられていて、読んでいると胸が熱くなるようです。Live & Let Live-Love For Japan(Verve UCCJ-2089)1.Kenny Dorham:BLUE BOSSA2.Polish Son:KUJIWIAK3.Jeff 'Tain" Watts:GOLDAZE4.Jake Shimabukuro:VARIATIONS ON A DANCE5.Isham Jones:THERE IS NO GREATER LOVE6.Geprge Gershwin:SUMMERTIME7.W.A.Mozart:ADAGIO8.Makoto Ozone:AM I A DREAMER?9.Teiiichi Okano:FURUSATOGayle Moran Corea(vo)(6)Chick Corea(p)(1,6)Jake Shimabukuro(ukurere)(4)Paquito d'Rivera(cl)(7)Gary Burton(vib)(1,6)Randy Brecker(tp)(5Christian McBride(b)(3,5)Anna Maria Joepek(vo)(2)Jeff 'Tain" Watts(ds)(3,5)Zach Brown(b)(7)Erick Doob(Ds)(7)Misuzu Kanno(vo)(9)Makoto Ozone(p)(1-9)Strings(7)Recorded 29 April,22-24 May