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-「人間・この未知なる物」-
三笠書房刊 アレキシス・カレル博士は、日本の野口英世博士と共にロックフェラー医学研究所で研究した人である。 これまで一番研究されたのが「人間」であり、また一番研究されなかったのも「人間」であるといえる。 ルネッサンス以来の学問は、物質重点主義の立場から科学的に人間を細かく分割して研究してきた。 政治学は政治という立場からのみ人間を見、経済学は人間が物を生産し消費するという点からのみ人間を見、教育学は知的に色々な事を教えるという点からのみ人間を見るというように、社会学、心理学、倫理学、美学、物埋化学、医学等みなそれぞれ専門の分野からのみ、人間というものを研究してきた。 だから政治学を研究した学者は、人間をいかに政治するかという政治の技術はよく知っていても、人間の情緒、情操、道徳心、宗教心というものは考えない。 教育学では、何をどのように教えるかという事で教育心理学は教えるが、攻治経済との繋がりとか、心が肉体に及ばす変化とか、崇高な信仰心というような事は知らない。 医学は人間を、眼科、耳鼻科、口腔歯科、内科、外科、精神科とバラバラにし、特に内科はまた消化器系統、循環器系統、泌尿器系統等に分割して、細かくは研究し治療しているが、人間全体を医者は全く知らない。 カレルがこの本を出版したのは昭和十年である。 カレルはこの本は、時代が経つにしたがって自分が主張している事の正しさが証明されるであろうといっている。 大抵の本は出版されると二・三年後には見向きもされなくなるものであるが、それから四十五年経って(1981年時点)いるのに今でも全く新しく、その言わんとしている事が身に迫ってくる。 カレルがこの本を書いたのは、 西洋文明は白人がつくった。 しかし、白人が、人間というものを十分に知らなかった結果、白人がつくった文明は崩壊に瀕しているという事で、 どうすればいいかを警告したのである。 宗教家をはじめとして世の指導者は、物質文明は行きづまった。これからは精神文明の時代だ、宗教心の時代だと騒いでいるが、その事についてカレルは警告している。 物質文朝は崩壊したと騒ぐようになったのは、ほんのここ四、五年のことであるが、全世界の各階層の指導者たちが、物質文明によって未来世界は確実にバラ色の理想世界が建設されるという夢を抱いていた昭和十年に、次のような事を警告している。 「物質中心主義が失敗したからといって、反動的に精神主義でなければならぬと、精神中心主義になることは危険である」と。 この事は現在の宗教家たちが物質科学を否定して、精神だけで宗教だけで、この世の中がよくなるように主張していることは間違っているという事である。 カレルは、事実は事実として正しく認識した上で、つぎの事を考えなければならないといっているが、私(園頭先生)の師、高橋信次先生は常に「色心不二」「心身一如」が神理であると説かれて、極端な精神主義、心霊主義は神理ではないといっていられた。 即ち、世の中の人々が正法神理を知るようになると、科学者たちも正法によって物質科学の研究をするようになるので、公害や破壊殺傷を招くような研究はしなくなり、科学者の心の次元が高くなると、天上界の心のきれいな指導者たちの直観を受けるようになり、今までとは全く違った、また今まで発見されなかった科学の法則が発見されるようになり、精神と物質と相まって理想世界が建設されるようになって行くのであるといって、物質科学を否定されるようなことは絶対にされなかった。 カレルは、小麦粉を漂白して真白いパンを食べさせたり、冷暖房装置の整った部屋で子供を育てると、弱い使いものにならない子供ができてくるから、パンは、ふすまもひき込んだ黒パンがいいし、子供は自然の中で鍛えよということを昭和十年にいっているのである。 これは現在の日本の子供たちに、そのまま当てはまる。 科学者としてのカレルの偉い点は、ほとんどの科学者が心霊の存在を否定しているのに対してカレルは、 「過去と未来を感じとる事が出来る人間がいる。肉体を脱け出して過去と未来を熟視するように見える。肉体を超えた心霊的なものが存在することを示している」 といって、人間が心霊的存在であることを肯定し、他の科学者たちに見られるように心霊の存在を否定していない事である。 心霊的存在である事を否定はしていないが、しかしカレルの研究はそこまでで、ともかく科学者として人格の向上、現在の努力は遺伝子を通じて未未へ伝えられる。 世界が平和になるためには精神と物質の調和にある、などといっていられる事は偉大である。 カレルは科学者として心霊の存在は否定しなかったが、心霊のことは詳しくは知らなかった。 カレルも色心不二が正しい事を説いたのである。 このカレルも主張した色心不二の正しさを更に充実させて、心霊の存在をはっきりされたのが高橋信次先生であった。 私(園頭先生)はこの本を一人でも多くの人に読んでもらいたいと、ずっと思い続けてきたのであったが、なかなか本屋で見つからなかった。 見つからないのも道理で、古本屋で買ったのは終戦前の出版であって、終戦後は出版されていなかったようである。 それを今度、三笠書房が上智大学教授渡部昇一氏訳で出版したのである。 渡部教授もこの本が一生の指針になったと書いていられる。 (※注 1981年の内容です) ~正法誌 第30号 1981年2月号より抜粋~ 参考資料として http://www.ne.jp/asahi/ikigai/yuyu/06library/book/2alexis.htm http://www.asahi-net.or.jp/~pi5a-kns/semicarr.htm http://www.asahi-net.or.jp/~ia8m-ings/man.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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