17 ああ・・・あれは・・・。 [小説★島の伝奇]
17 [小説★島の伝奇] 「夜が明けたったい」 誠が笑顔をみせながら、 「お前は一人で寝とったったい・・だけんあれは朝日ぞ」 「おー・・。」勇太は驚きの声をあげ、 「僕だけ・・ねとったと・・。」 周りを見回してみる。 「寝とったとは勇太だけたい、みんなカヌーを寄せたり、行方がしれん人ば探したりたい・・・忙しかったとぞ」 啓二が呆れ顔でそういうと、 「ねえ、ルカちゃん。ルカちゃんも一生懸命カヌーを動かして皆を探してまわっとったよね」 啓二の言葉に 「ええ・・・まぁ・・。」 ルカは少し恥ずかしそうに答える。勇太に気をつかってか、誉められて恥ずかしいのか。そのルカの姿をみて、勇太がうつむく。 勇太は自分だけが気絶していたのが恥ずかしいのか、ルカに見つめられたのが恥ずかしいのか、真っ赤になって下をむいた。 それをみてスンダが、 「おおっ、いけない。調子が悪そうだ」 勇者を気づかう。 「顔があかい・・しばらく横になったほうがよろしいのでは・・・。」 心配そうに言葉をかける。 それをみて、啓二がわざとらしく眉間に皺をよせ、 「きっと別の病気だ・・・」と、小声でつぶやくと、 誠が大きな声で、 「ルカちゃん、こちらに移って看病してあげてよ。・・僕達は他のカヌーに移るから」 誠の冷やかしに 「あっいや・・その・・」勇太は急いで言葉を発したが、断りもせずモゴモゴと言葉を誤魔化した。より一層顔を赤くして黙り込んで下を向いてしまう。 その姿が、いかにも体調が優れないようにみえたのか、スンダが心配そうに、 「ルカじゃ心配だ。もっとしっかりしたトクをつけよう。トクなら安心だ」 「・・・・・・。」しばらくの沈黙。 勇太はすかさず顔を上げ、 「だ・・つろ・・大丈夫です。す・・スグに治ります」と断る。 回らない舌になおの事心配そうなスンダ。 勇者はすかさず言葉をつづけ、 「さぁ! あの島へ向かいましょう・・水と食べ物を集めて・・楽園へとむかいましょう」 勇太は立ち上がり、島を指差しそのままバランスを崩した。勇ましく指差すまではかっこよかったが、そのままバランスを崩してカヌーとカヌーの隙間から海へと落ちていった。 「楽園は遠そうだ・・・」 ザブンと落ちる音と姿にあわせて、啓二と誠はため息まじりでつぶやいていた。 それを見たスンダは 「やはり体調は悪い」そういうと大きな声で 「トクッ! 勇者の横に、導く者の側について看病してあげなさい」 海面に浮かんで引き上げられる勇者は、しょんぼりとしていた。 島の砂浜は遠めに美しく、脚で砂を踏みしめ見つめる景色は、 「この島も津波でやられとうね」 砂浜には海藻が打ち上げられている。 津波が押し寄せ引いた後、内陸から引っ張ってきた木々の残骸が大きな四角い石と一緒に辺りを散らかしている。 「とにかく水と食物を探すのだ。そして水と食物を探すのだ。そしてカヌーをより強固に結び、小さな船から大きな船に変えるのだ」 スンダのはりのある声が辺りに響き渡り、それに付随する言葉をルクが叫び指図する。 女達へは 「薬草を少しでも探し確保しよう」 トクが叫び、皆が辺りへと散ってゆく。 勇太は床の行く場所を眼で追い、 「ねえ、僕達はどげんすると」 啓二と誠へと顔をむける。 「・・・ねえ・・。」 啓二と誠は勇太を無視して、 「なぁ・・啓二・・・みえるか・・。」 「ああ・・・見えようよ・・」 海のかなたを見つめている。 勇太は二人が何を見ているのだろうと海へと眼をむける。 「・・・あれ・・・。」 海面に何やら丸っこいものがいくつも浮いていた。 少しの上下を繰り返す海面に浮かんだり沈んだり。 「悪魔たちだ・・・」誠がつぶやく。 「・・・あいつら何やってんだ」 啓二が疑問を言葉にする。 二人は静かに考え込み、誠が考えを先に言葉にする。 「・・・陸じゃ勝てないから・・・様子を見とるとやないか・・。」 「うん・・」 啓二はうなづき 「夜・・寝ているときに来るかもな・・・。」