|
カテゴリ:時間マッチ
狭い部屋にいる。
部屋に電気は点いていないが、 高い場所にある、格子付の窓から、 碧(あお)い光が降り注いでいる。 丸い月、 今日は満月のようだ。 ひんやりとした室内、 簡素なベッド。 洋式のトイレ。 蛇口。 何だここは? 鉄格子が嵌っているのは、 月が覗いている窓だけじゃなかった。 オレの今いる部屋と、廊下の様な場所とをさえぎる、 格子の向こうに“さっきまで居なかったはず”の、 誰かがいる。 鍔付きの帽子をかぶる、初老の男。 スーツの色は、月の碧色が強すぎて、 本当は何色なのか分からない。 そのジイさんの口ヒゲが動くが、何も聞こえない。 声が聞こえない。 音がない。 そうか、オレはまた、あの夢を見ているのか。 今日も音声はOFFらしい。 それにしてもこのリアルさはどうだ? ジイさんとオレとの間を遮る鉄格子を握ると、 鉄格子がオレの手の熱を奪って行く感覚が、 “ありあり”と、伝わってくる。 ジイさんは、オレが夢があまりにもリアルなことに、 感心していることなどお構いなしに、 口ヒゲを、振るわせ続けている。 オレに何かを、話しかけている様だ。 そしてジイさんは、 長い長い演説を終えると、 オレに何かを渡してきた。 小さな箱。 オレはそれを、月明かりに照らしてみる。 箱の表面に“時間マッチ”の文字が読み取れる。 オレはこのマッチを知っている。 “時間マッチ”世界最小のタイム・マシン。 俺の手の中の小箱から、格子の方へと目を移すと、 そこにはもう、誰もいなかった……。 変な夢を見た……。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年06月02日 22時53分11秒
コメント(0) | コメントを書く |