|
カテゴリ:邦画
「DEATH NOTE 」シリーズでキラこと夜神月を追い詰めた、もう一人の主人公Lを主役にしたスピンオフ。 Lを演じるのは、これまで通り松山ケンイチ。 粗筋 L(松山ケンイチ)は、名前を書かれた人間は必ず死に至るデスノートを駆使して犯罪者を粛清する人間死神のキラこと夜神月の野望を阻止することに成功。 しかしその代償として、Lは自身を犠牲にしていた。デスノートにあらかじめ自分の名前を書き込むことで、キラがデスノートを使ってもキラの思い通りに死なないようにしたのだ。これによって、Lはキラを現行犯として裁くことに成功。が、当然ながらLは自身の行為で23日後に死ぬことが定められていた。 一方、タイのある村で新種のウイルスによるバイオテロが発生。ウィルスを開発した組織は事件の証拠隠滅の為に村を爆撃して焼き払った。ウィルスは、インフルエンザ並の流行性とエボラウイルス並の致死率を掛け合わせた恐るべきものだった。 村の唯一の生き残りとなった少年BOYと、ウイルスを携えた少女真希がLを訪ねる。 L は、人類削減計画を掲げる環境保護団体『ブルーシップ』が関わる事件の解決に動き出すことを強いられる。 ただし、Lに残された時間は2週間を切っていた……。 感想 漫画を実写化したDEATH NOTEシリーズは、予想以上に成功。 そんな訳で、続編をもう一編製作しよう、と決定。 といっても、キラ対Lのバトルは決着してしまったので、単なる続編は製作できない。 「キラがあの世から復活して、Lと再び対決する!」なんてストーリーでは誰も納得しないから(DEATH NOTEの世界ではルール違反になる)。 幸いなことに、サブキャラの筈だったLが主役を完全に食うほど好評だった為、Lを中心とした作品を制作することが可能だった。 ただ、Lはあと数日で死ぬ予定。 どんなストーリーを捻り出せばいいのか……。 ……こんなストーリー。 ウィルスによるバイオテロを企む犯罪組織とLを戦わせる。 ストーリーそのものは悪くないのかも知れないが、「DEATH NOTE 」シリーズが好評を得た最大の理由である天才と天才の頭脳戦の要素が全くなく、正直今回の主人公はLでなくても充分勤まってしまう。 考えてみると、元の「DEATH NOTE 」シリーズも、主人公である筈のキラをサブキャラのLが完全に食ってしまう作品に仕上がっていた。 主人公より脇役が目立ってしまっていたのである。 その意味では、「DEATH NOTE 」シリーズは異端だった。 いくら好評を得ていたとはいえ、Lは元々サブキャラとして創造されたキャラ。脇役はどんなに目立とうと脇役に徹することで成立する。脇役を主役にしたところでまともな作品ができる筈がない。 本作においては、主人公を食われたキラの呪いが、降りかかってきた感じ。 本作は、大抵の邦画の例に漏れず、おかしいところを指摘していたら切りがない。 ・「全世界的に有名な名探偵」なんて有り得ない。特に、部屋から一歩も出ず、パソコンを通じて難事件を解決してしまう、なんて探偵は。もし難事件がパソコン操作だけで解決できるなら、世の中には迷宮事件なんてとっくになくなっている筈である。 ・バイオ兵器用のウィルスが一研究所でそう簡単に開発できる訳ない。それ以上に、その抗体が専門家とはいえたった一人で開発できる訳がない。もしこれが可能だったら、今頃世の中はバイオ兵器だらけで、バイオテロが頻発している筈である。 ・本作のテロ組織は、「人類は増え過ぎた。環境を守る為には人間の数を減らすことが必要」と極論を訴える環境保護組織を発端としたものだった。こんなアホな思想を持つ組織、有り得るか。実在していたとして、世界中の治安当局に目を付けられている筈。だが、その様子はなくノーマークで日本で行動できた。一応FBIに追われていたようだが、FBIは本作では全く無能。 ・ラストで、テロ組織が旅客機の乗客全員をウィリスに感染させる。乗客は血を全身から流しながら次々倒れるのだが、抗体を注射した途端に何事もなかったかのように回復。通常、ここまで急激に発症したら、抗体を注射したところで手遅れだろう。 邦画恒例の、無駄なキャラやゲスト出演や友情出演が多い。 南原清隆演じるFBI捜査官は、何の為に登場していたのかさっぱり分からないキャラ。これといった活躍はしないし。お笑いコンビのウッチャンナンチャンのナンチャンとあって、顔を見せるだけでシリアスな筈の作品がおふざけになってしまった。 本作では子役が2人登場するが(少年BOYと、ウイルスを携えた少女真希)、1人で充分だっただろう。映画製作に関わった事務所が、所属する新人タレントに箔を付けさせる為に捻り込んだ、としか言いようがない。芸能事務所はこういう捻り込みは逆効果、てことをいい加減学んで欲しい。 テロ組織の連中も何人も現れるが、工藤夕貴と高嶋政伸が演じるキャラ以外は雑魚。にも拘らず所属事務所の力関係からか、出番がやけに多い。特にこれといった活躍はしないのに。そもそもテロ組織の首謀も一人に絞るべきで、工藤夕貴と高嶋政伸演じるキャラの二人に分ける必然性が見出せなかった。 ストーリーも、Lの無能振りをひたすら描いた、といったものになっている。 「DEATH NOTE」の2部作では圧倒的な存在感を示し、無敵の印象があったLが、本作では無能だし、無力。 Lとしての魅力が全く引き出されていない。 「DEATH NOTE」との繋がりも、最初の15分くらい。2部作で激戦の中心となった「DEATH NOTE」いわゆる死神のノートは、冒頭でLによってあっさりと処分される。当然ながら、「DEATH NOTE」で登場していた死神も、それでお役ごめんになり、二度と登場しない。 「DEATH NOTE」の関連作品でありながら、その繋がりを早々と絶っている。唯一の繋がりは主人公Lだが、本作のLと二部作のLは、格好や喋り方や癖こそそっくりだが、それ以外は全くの別人。 元々オリジナルストーリーであった脚本を、「DEATH NOTE」シリーズの成功で急遽シナリオを書き直し、オリジナルキャラの主人公をLに置き換えたかのようである。 結末もおかしい。Lは「殺人は良くない」とかいう持論を展開し、テロリストらを救ってしまうのだから。勧善懲悪は今時子供っぽいということなのかも知れないが、「世の中には本当の悪人はいないんだ。みんな仲良くやろうよ!」というのも子供っぽいだろうに。前半ではかなり残酷なシーンもあり、お世辞にもお子様用映画とは言えないから、結末の幼稚さが一層際立ってしまっている。こうした結末にするなら、最初から残酷シーンを排除し、お子様用映画に徹すべきだった。 総括すると、本作は、思いがけない成功に酔った製作者が粗造してしまった、生まれるべきでなかった外伝。 本作は、せっかく成功していた「DEATH NOTE」シリーズに泥を塗ってしまった。 関連商品: お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2015.07.03 18:43:04
コメント(0) | コメントを書く |