地上に降りしく 奇すしき光よ
こんにちは、星見当番です。お好きな方はタイトルを見ただけでピンとくるかもしれませんが、今回は当番の好きな唱歌『冬の星座』の話です。前にも一度、この歌について書いたのですが、しつこく書きます。当番、この歌が大好きです。こがらし途絶えて 冴ゆる空より地上に降りしく くすしき光よものみな憩える しじまの中にきらめき揺れつつ 星座はめぐるほのぼの明かりて 流るる銀河オリオン舞い立ち 昴(すばる)はさざめく無窮をゆびさす 北斗の針ときらめき揺れつつ 星座はめぐる歌詞が古風なので、昔からある唱歌みたいに見えますが、それにしては「オリオン」なんて横文字も入っているのが変です。調べてみたらこの曲が文部省唱歌として登場したのは1946年くらいのようです。明治時代から歌われている「われは海の子」や大正時代から歌われている「朧月夜」と比べると、小学校で習う唱歌としては新しい方なんですね。戦後生まれの当番母に訊くと『冬の星座』を学校で習ったと言ってましたが、大正生まれの祖母に訊くと子供たち(当番母とその姉妹)は歌っていたけど、自分は習ったことがない、と言っていました。これの原曲はW.ヘイス(フルネームはウィリアム・シェイクスピア・ヘイス!)の`Mollly Darling(愛しいモリー)’というラブソング。日本語の『冬の星座』とはまったく重ならない、コテコテの甘い歌詞です。星のことは二番目にちょっと出るだけ。愛しいモリー、僕だけを愛してると言っておくれ、みたいな歌詞です。「アニー・ローリー」の原歌詞に似た感じです。Won't you tell me, Molly darlingThat you love none else but meFor I love you, Molly darlingYou are all the world to meOh tell me, darling, that you love mePut your little hand in mineTake my heart, sweet Molly darlingSay that you will give me thineStars are smiling, Molly darlingThrough the mystic veil of nightThey seem laughing, Molly darlingWhile fair Luna hides her lightOh no one listens but the flowersWhile they hang their heads in shameThey are modest, Molly darlingWhen they hear me call your nameMolly, fairest, sweetest, dearestLook up, darling, tell me thisDo you love me, Molly darlingLet your answer be a kiss`Molly Darling’の歌が聴けるサイトを見つけました。誰が歌ってるのか、とても聴き取りやすい歌い方です。日本人が歌ってるのかも。ご興味のある方はこちらのページ(音が出ます)へ。やっぱり当番は、日本語の『冬の星座』が好きです。当番の母語が日本語だからかもしれないけれど、『冬の星座』の方が歌いやすいし。歌詞の描き出す世界も、『冬の星座』の方が綺麗だと思うんですよね。『冬の星座』の日本語歌詞をうまく英訳して本国に逆輸出したいくらいです。この日本語歌詞を書いたのは堀内敬三。1897年12月6日生まれ(なに、射手座かい!)、1983年10月12日没。作品を調べてみたら、ドボルザークの『新世界より』に「遠き山に日は落ちて」と歌詞をつけた人みたいですね。『アニー・ローリー』の訳詩もこの人かー。それから『蒲田行進曲』もこの人の作詞だったんですね。日本版『冬の星座』を歌っててどこが気持ちいいと言って「くすしき光よ」の箇所です。ここの箇所「くーすしきひかりーよー」って「オー」で終わって、次のフレーズで「もーのみないこえーるー」と同じ「オー」の響きに繋がるところがいいんです。原曲である`Molly Darling’でも、「くーすしきひかりーよー」に当たる箇所は「オー」の響きで終わっています。わかりやすいように英語と日本語、歌うときに同じ音に当たる文字を対応させて書いてみますね。(少々配置がズレて見えるかもしれませんがご容赦ください) Won't you tell me, Mo-lly dar - ling( こ が ら し と だ え て ) That you love none else but me( さ ゆ る そ ら よ り ) For I love you, Mo-lly dar-ling( ち じょ う に ふ り し く) You are all the world to me Oh-( く す し き ひ か り よ) tell me, dar-ling, that you love me( も の み な い こ え る) Put your lit-tle hand in mine( し じ ま の な か に ) Take my heart, sweet Mo-lly dar-ling( き ら め き ゆ れ つ つ ) Say that you will give me thine( せ い ざ は め ぐ る )「くーすしきひかりーよー」の箇所は「ユーアオールザワールドトゥミー、オー」ですね。次の行の最初の言葉「オー」が前のフレーズの末尾になってる、ちょっと変則的な感じです。日本語の「くーすしきひかりーよー」は歌詞の意味の切れ目とフレーズの切れ目がちゃんと一致していて座りがいいと思いませんか?日本語の『冬の星座』の歌詞ですばらしいのは、二番目の歌詞も同じ箇所で前の行の末尾の母音と次の行の頭の母音が一致しているところです。歌いやすいんですよ。「すーばるはさざめーくー」と「ウー」で終わってその母音を引き取るように「むーきゅうをゆびさーすー」と「ムー」で始まるから。読んで美しく、歌って心地好い『冬の星座』。たぶん当番、この歌が一生好きだと思います。