工事業者選択の難しさ
マンションにおいては、複数の住戸に安定した圧力での給水を行うため、増圧ポンプ(直結給水)および揚水ポンプ(受水槽)を使用します。(一部低層マンションを除く)ポンプは機械製品なので、消耗が激しい部位は3-5年、全体のリニューアルは10-15年毎に発生します。日常管理においては、給水ポンプが万が一停止すると、ライフラインがストップ(断水)することから、法的な義務はないものの重要な設備として、管理会社に点検業務を依頼します。ポンプの点検回数および内容は委託契約に定められており、年数回(1~6回)は専門技術者が点検を行います。点検する専門技術者は、管理会社が下請け業者に再委託することが一般的です。ポンプに故障、不具合が生じた場合、改修の提案がありますが、点検を実施する業者の見積に管理会社のマージン(10-30%)を乗せ、管理組合に見積が提示されます。合い見積を取らないと管理組合が高い工事費の支出を強いられる・・ありきたりのことは書きません。ポンプを含む給水設備、給水管を全て一斉に交換することは稀です。通常、劣化の状況に応じて、部分的に改修を行っていきます。(ケース1) 年数が経って、ポンプの調子が悪くなった時に、Aの劣化が考えられAを交換する提案がなされたとします。しかしAを交換したものの、Aの原因は解消されたものの、ポンプの調子が改善されず、B、Cという複数の原因を解消しないとポンプは改善されないと新たな提案、見積が出されます。Aを交換するときに、いっしょにB、Cを直しておけば、2回にわけた分割高になった工事費を払わなくて良かったのに・・管理組合はそう思ってもおかしくありません。専門の技術者が見れば、素人でないんだからAだけではなく、B、C複数の原因が考えられることが初めからわかったのでは?Aだけを提案した専門家の見落としでは?と点検を行った技術者、そして契約先である管理会社に責任があるのでは?と考えるのは自然です。これについては、管理会社の再委託先である点検業者が提案した内容に基づく改修方法で、管理会社に発注した場合、管理組合は管理会社に強く言えると思います。日常管理を行うことでポンプのことを一番良く知っているわけだし、経年により、どこの部品が耐用年数に達したかプロであればある程度判断がつく訳はずです。Aがメインの原因と考えられたとしても、Aの改修案と、心配と思われるA+B、Cの改修案の二つの提案をし、管理組合に選択してもらうのが、管理組合のことを親身に考えた親切な方法です。(ケース2) ケース1の工事業者選定方法を変えて考えて見ます。管理会社から提示された見積書をもとに、金額を隠したものを仕様書として、複数者に見積を依頼、入札方式で工事業者を決めたとします。この場合、ケース1のようなことが起きた場合には、発注した工事業者に文句を言うのは難しいでしょう。事業者は管理組合が指示をした工事を実施したのに過ぎず、B,Cは工事範囲外だからです。ポンプが調子悪い状態は変わらないので、管理組合が入札により選び直接発注した工事業者の施工不備、落ち度によるものだと想定し、改善を強く要求します。仮に工事業者がB、Cも駄目なので交換して下さいと提案しても、追加工事をもらうための策略では?と勘ぐってしまうでしょう。それは、入札で選んだ、マンションにとって実績のない業者ですから、その工事業者がキチントしてくれると言う信用がないから疑ってしまうのです。プロだからといって、パッと見ただけで、ポンプの全てがわかるわけではありません。複数の業者が見積前に現地調査をしたからとしても、別の原因を特定できないと思います。よほど、管理会社の再委託先の点検業者がヘボであれば話は別でしょうが・・管理会社に文句を言っても、当社では工事をしていないので、管理組合が発注した業者の落ち度だろうから、そちらに文句を言って下さいとまともに取り合わない可能性があります。(ケース3)ケース1の工事業者、提案方法を変えて考えて見ます。管理組合の要望により、調子が悪くなったポンプについて複数の業者に現地調査を依頼。提案および改修の見積をそれぞれの会社に提示させる方式をとろうとします。まず、管理会社下請けの点検業者はお金をもらって日常点検をしています。他の業者は、普段から点検していないポンプをスポットで、しかも無償で確認することになります。これって差が出る気がしませんか?仕事が欲しいから、タダでもしっかり見るかもしれませんけど・・現地調査を行った複数の会社から、それぞれの見解、見積が示されます。・管理会社再委託先の点検業者 Aの部品を交換する・最も高い工事業者 A,B,Cの部品を交換する・最も安い工事業者 B,Cの部品だけを交換する管理組合は何を基準に、どのプランを選択しますか?管理会社に意見を求めても駄目です。なぜなら、管理会社は見積を取った一候補業者でしかありません。当然自社のプランを一番推奨するでしょう。たまたま役員に専門の人がいればよいのでしょうが、そんな都合良くいきません。 さて、ケース1、ケース2、ケース3とも、共通の事案について考察してみました。それぞれメリット、デメリットがあります。管理会社が信用できないから、直接契約をする、コンサルタントをする・・確かに一つの手法だと思います。直接契約、合い見積を勧めるNPO団体、外部専門家の起用を勧めるコンサルタント会社のやりかたが、必ずしもリスクのない方法ではないのです。インターネットで簡単に色々な情報が入手できるようになったこのご時世。間違った知識、これが絶対正しい論等、管理組合を惑わせるような情報が氾濫しています。前回の日記で、「削減屋」について熱く語らしてもらいましたが、管理組合の円滑な運営、適切な資産価値の維持を阻害させる原因は、管理会社だけではないのです。管理会社に物申すことはたくさんあります。それは当事務所のホームページや過去日記をご覧いただければご理解頂けると思います。今の管理業界の実情を良しとする気持ちはありません。管理会社を悪者に仕立て、利権を得ている連中は数多くいます。ある意味管理会社より性質が悪いのではないでしょうか?「マンション管理を良くする」ために、正しい情報を得られるよう、しっかり見る目を育てて下さいね!にほんブログ村↑マンション管理のブログ集結!