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照千一隅(保守の精神)

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「照千一隅(しょうせんいちぐう)」(一隅を守り、千里を照らす)は伝教大師・最澄の言葉。本を読み、考えたことをこのブログに書いて参ります。ご意見、ご感想など御座いましたら是非お寄せください。

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2023.02.08
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カテゴリ:歴史

今までの特権を失った人々にとって革新の代償が重たくかかって来るのと全く同じように、今まで特権のなかった人々にとっては過去の保存の代償が重たくかかって来るのです。甲の不幸は乙の幸福で諦めがつく、という主張はすべての政治の底に潜んでいるもので、これは保守的な学説でもあり、急進的な学説でもあります。ジョンソン博士は、現在の不平等を維持する理由として、その方が「小さな悪」だ、という暴論を持ち出しました。(E・H・カー『歴史とは何か』(岩波新書)清水幾太郎訳、p. 115)

It is better that some should be unhappy than that none should be happy, which would be the case in a general state of equality.

(幸せな人が誰もいない平等な状態が一般化するよりも、不幸な人もいる方がましだ)

 誰もが幸福でも不幸でもない平等な状態であるなら、それでも良いではないか、否、最高ではないかと思う人もいるかもしれない。が、それは、誰もが不幸にもならないと同時に誰もが幸福になれないということをも意味する。それは、怠惰に生きても不幸にならないと同時に、頑張って生きても幸福になれないということである。謂(い)わば、頑張ったものが報われない社会ということだ。このような社会は人間を駄目にする。そのことは、19世紀の壮大なる社会主義の実験が失敗に終わったことからも明らかである。「結果の平等」は人間のやる気を削(そ)ぐ。そしてソ連邦は崩壊した。

もしイギリスの産業革命を取扱う歴史家を範として、集団化における残忍と無慈悲とを嘆きながらも、この過程を工業化という望ましくもあり必要でもある政策に伴なう犠牲の不可避的な部分として論ずるといたしますと、私はシニシズムと悪事に甘いという罪を負うことになるでしょう。(同、p. 117

 まさに進歩主義者らしい考え方である。進歩ということからすれば、必ず通らねばならない道なのだから、否定的なことも「薔薇色の未来」に向けて甘受せねばならないということである。が、進歩主義が見据(みす)える「薔薇色の未来」とは、ただ進歩主義者が観念的に描いた楽園に過ぎない。世の中が進歩主義者が描く通りに進む保証はどこにもないし、実際進んでいるように思われない。人間は神ではない。未来の姿を予言することなど不可能である。が、進歩主義はこの摂理に背(そむ)いている。

19世紀に西洋諸国はアジアおよびアフリカを植民地にしましたが、歴史家たちは、その世界経済に対する直接の影響という理由だけでなく、これらの大陸の後れた諸民族に対する長期的な結果ということも理由にして、この植民地化を許容しております。つまり、現代インドはイギリスの支配が生んだ子供であり、現代中国は、19世紀の西洋帝国主義の結果とロシア革命の影響とが混じたものである、というのです。

ところが、不幸なことに、西洋人所有の条約港の工場や、南アフリカの鉱山や、第一次世界大戦の西部戦線に働いていた中国人労働者たちが今日まで生き延びて、中国革命が生んだ栄光や利益を享受しているのではありません。代償を払う人間が利益を得る人間と一致することは稀(まれ)にしかないのです。(同、pp. 117f






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Last updated  2023.02.08 21:00:09
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