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カテゴリ:戦争と平和
米国務長官 ICCのネタニヤフ首相への逮捕状請求に制裁措置を示唆
ICC(国際刑事裁判所)がイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を請求したことに、アメリカのブリンケン国務長官はICC関係者への制裁を示唆しました。 21日、ワシントンで議会の公聴会に出席したブリンケン国務長官は、ICCがネタニヤフ首相らをガザ地区での戦争犯罪や人道に対する罪で逮捕状を請求したことに「明らかに誤った方向の判断には対処する」と述べ、逮捕状請求の決定を下したICCの検察官らに対する制裁措置を示唆しました。 議会上院ではイスラエルを支持する立場からICC関係者への制裁が議論されていて、今週にも採決される見込みです。 アメリカ政府はICCの決定に対して「イスラエルとハマスを同列に扱うことは言語道断」と逮捕状請求に強く反発しています。 --- プーチン氏逮捕へ協力促す 米長官、ICC加盟国に ブリンケン米国務長官は国際刑事裁判所(ICC)がウクライナ侵攻を巡る戦争犯罪容疑でロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出したことに関し「全てのICC加盟国は義務を果たすべきだ」と述べた。プーチン氏が今後訪問した場合に逮捕状の執行に向けた協力を促した。上院歳出委員会小委員会などの公聴会で述べた。 米国はICCに加盟していないが、バイデン大統領も逮捕状が「正当だ」として判断を支持している。 --- 1年前にはプーチンに逮捕状を出したICCを称賛して「すべてのICC加盟国は義務を果たすべき」と言っていた同じ米国(もっとも、その米国はICC非加盟ですが)の、同じバイデン政権下の同じ国務長官が、今度は「イスラエルとハマスを同列に扱うことは言語道断」だからICC検察官らを制裁対象にすると息巻いています。 その、あまりのダブルスタンダードぶりには呆れかえります。 ちなみに、いずれの案件もICCの主任検察官はイギリス人のカリム・カーンが務めています。1年前には賞賛したカーン検察官を、今度は制裁の対象にする、本気でそんなことをするつもりでしょうか? 実は米国は過去にICCの関係者に制裁を行ったことがあります。米兵のアフガニスタンでの戦争犯罪についてICCが逮捕状を発行した時のことです。だから、今回もやるのでしょう。もっとも、この時はトランプ政権でしたが。 つまり、トランプ政権でもバイデン政権でも、結局やっていることは同じ、ということです。いや、厳密にはバイデン政権はまだ「やろうとしている」段階ですが。 実は、ICCのプーチンへの逮捕状と今回のネタニヤフ(およびハマス)への逮捕状はつながっています。 というのは、プーチンへの逮捕状発行で板挟みになった国があります。それが、ロシアを含むBRICS首脳会議を昨年主催した南アフリカです。南アフリカはICC加盟国なので、プーチンを逮捕する条約上の義務を追っています。そしてもちろん、プーチンがウクライナに対してやっていることは全面的に批判されるべきだし、いつかその法的責任を追及されてしかるべきだとは私も思います。でも、現実問題として、首脳会談のために訪問する外国元首を逮捕するという選択肢が国際儀礼上取り得るのか、と考えると、事はそう単純ではありません。 結局は、プーチンは南アフリカ訪問を取りやめ、BRICS首脳会議にはオンライン参加になりました。 南アフリカ政府としては国際会議主催国の面目を潰された不満はあったでしょう。それに、ICCはアフリカなど非西欧世界の人道犯罪ばかりを目の敵にして、欧米諸国の人道犯罪には見て見ぬふりか、という反発もあったようです。 その後、昨年11月には、その南アフリカとバングラデシュ、ボリビア、コモロ、ジブチの各国が、ICCに対してガザの状態について調査するように要請しています。 おまえら、プーチンの人道犯罪を有罪にするなら、イスラエルの人道犯罪もちゃんと捜査しろよ、というわけです。その時点ではすでにICCはガザの状況について捜査は開始していたようですが、捜査を急ぐことへのプレッシャーにはなったでしょう。 いずれにしても、プーチンが人道犯罪の容疑者としてICCから逮捕状を発行されるのは当然のことですが、ネタニヤフもまた、それは同じと言うしかありません。もちろんハマスもです。プーチンの逮捕状は正しいのに、ネタニヤフの逮捕状は言語道断、などというのは、そのように主張する側が「言語道断」というしかありません。 もっとも、現実問題として、ICCが逮捕状を出しても、プーチンは逮捕されていないし、ネタニヤフも逮捕はされないでしょう。ではICCの逮捕状は無意味かというと、決してそうではありません。 昨年、プーチンが南アフリカ訪問を中止したことからも、歴然としています。南アフリカ政府はロシア寄りの立場を取っており、プーチンを逮捕したくなかったのは明白です。しかし、それでもプーチンは南アフリカ訪問を断念せざるを得なくなったのです。ICC加盟国に課された逮捕義務は、実際にそれが実行されなくても、ICC加盟国への渡航に重い足かせになります。 特にヨーロッパ諸国、米国以外の南北アメリカ各国、アフリカ諸国は多くがICC加盟国です。南アフリカとプーチンの経緯を考えれば、たとえ親イスラエルの国であっても、ネタニヤフがICC加盟国を訪問するのは難しくなるでしょう。つまり、ほとんどの外国を訪問することは困難になります。国のトップしては、それは結構痛いことではあるはずです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.05.23 22:35:29
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