昼前に目を覚ますと、あたらしい眼であたりをみまわしてみた。米びつにはまだ越後の特上米が残っているが、底のほうに厚さは米粒の高さでほぼ均等に散らばる状態である。容器の底面積が25糎×38糎=950平方糎で、米粒一粒の占有する面積は平均21平方粍だから、4523.8095238095粒と推定。それで、ま、あと一日分は何とか大丈夫だと判断した。冷蔵庫内部の風景はどうか。いくつか黒いものが点在するきりで、バブル崩壊直後の高級マンション高級分譲地区画風景くらいな様子か。ただ、キューピーの絵柄の中身があざといオレンジウクライナのように変色しているのが新鮮だった。それで、ナンカお手伝いしたいと以前からときどき遊びに来る若造に、ちょっと買い物してくれと頼んだ。道が凍結して転倒したくなかったからだ。小一時間ほどしてもどってきた彼は、何をカンチガイしたのだろう。小型トラックの荷台の四分の一ほども正月用品をまとめ買いしてきて、締めて2万円ほどでしたと嬉しそうに言ったのだった。麻薬の取引じゃないんだから、それにわたしの家族何人か知っているの、とぶん殴りたくなった。これだけの食料を青山の紀ノ国屋スーパーで買えば、まあ10万円ほどだろう。おかげで、冷蔵庫はITバブルの雄・楽天広場みたいに賑やかになった。半年はもつだろう、きっと。
落丁レッツ手帳@3990圓の件で、銀座伊東屋へ電話を入れた。五階手帳売り場の女性が応対に出た。すみませんでした、さっそく宅急便であたらしいものをお送りします、落丁品は帰りの便に託してくださいと、と丁寧だった。ご褒美に落丁品に代えて、わたしのミステリーでも託してあげるかな。
六畳の和室から、暮れてゆく山と空をながめている。おのれのない男からの電話はおもったとおり無かった。他者といちどもまみえることなくその生涯を閉じるのも、ま、仕方がない? 冗談ではない。生きるとは他者と相まみえること以外の何者であるのか。他者こそはおのれであり、世界の主要な一部ではないか。阿呆であれ小利口であれ卑怯であれ悪であれ残酷であれ心優しくあったとしても。薄青い空と山のあいだが帯状に焼ける。微塵をかき集め乱反射を繰り返しながら本日も日が暮れる。
煮凝りやシャベルで掬う雪景色 雑巾控
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Last updated
2005.03.01 15:28:06
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