ホリエモンのところに強制捜査がはいった。16日月曜日午後四時の時点では「任意」だったが、夕刻六時を回ったところで「強制捜査」へ切り替わった。この二段構えの迂回するような捜査の意味するところはなんだろう、とおもった。東京地検特捜部が正月明けからガサをかけるヤマは、世間に対するアピール効果をたいていは考慮したうえで選択されるから、ここまできた以上はおそらくはホリエモン自身の身柄も検察は「取る=捕る」(逮捕)つもりであろう。昨夏9.11総選挙で政権が立候補表明したホリエモンにたいし自民党公認をあたえなかった謎はこれで解けたわけだが、東京地検の直告係へのいわゆるタレコミがあったのは、推定ではあるが総選挙よりかなり前になるはずだ。すくなくとも2005年の5、6月よりもはるかに前だろう。フジテレビとの確執のさなかあたりか。すると地検特捜はほぼ一年近く内偵捜査をしてきたことになる。一報を最初に報じた報道機関はNHKで、総務省所轄の「民営化対象」機関なことはきっと偶然なのであろう。直接の容疑は直近の事件(2004年10月)で、子会社を使い株価の不正操作をはかったこと、いわゆる「風説の流布(偽計取引と風説の流布)」などらしい。不確かな情報を故意にながして株価を操作する疑いにたいし発動される証券取締法のひとつ(同法158条違反容疑)だが、これが捜査の端緒、つまり「入り口」にすぎないのか、本当の容疑がさらにその奥にあるのか(おそらくそうであろうと思うが)まだわからない。不透明な捜査の立ち上がりである。ライブドアの株価は急落し、17日の東京市場は混乱するだろう。また、ライブドアに440億円出資して12.75%の株を取得し、堀江貴文社長に次ぐ第二位の株主であるフジテレビも、売るに売れない株を抱え往生することになる。
さらに、昨夕から今朝まで12時間という異例の長時間に及ぶ強制捜査では、ライブドアグループ(およそ50社)が抱えるハード資産、多くの掲示板やブログの運営情報、個人情報、書き込みログなどの「ソフト資産」も、そっくり当局の手にわたっただろう。はたしてこのまま業務がつづけられるのか。ホリエモンにとっても「想定外」な危機であることはまちがいない。かつて取材に動いたリクルート事件のはじまりの時をおもいだす。午前七時、テレビで堀江貴文社長の記者会見を見たが、ホリエモンはまだ、権力の本当の怖さを知らないのだろう。…それにしても、「無」から「有」を生むからくりで巨額の利益をあげるのは、じつのところ新興IT企業がはしりでもなんでもない。世界中の富をほぼ独占するといわれる国際金融資本がいまも、過去から一貫してつづけてきている詐術(通貨発行権、準備金制度、BIS規定などなど)は、ホリエモンの錬金術をはるかにしのぐはずである。そちらはいっさい手つかずの治外法権に置くという、この娑婆というおかしなおかしな世界のほうにこそ、本当の巨悪が隠れているのではないかと、わたしなどは直感するのだが、さて。もっとも、すっかりそうしたカラクリの走狗となってしまった世界中のマスメディアという犬の、その吠える吠え方においては、駄犬であることがまずもっての約束条件でもあって、それは今も昔もこれからもずっと、たぶん変わらない。逆にいうならば、今回もまた、「事件」という皮相の奥に隠れたヌエの正体までをわれらは洞察しなくては意味がない。
■追記…東京市場が開いて二時間が経ったが、ライブドア関連の株価はストップ安のまま、値つかず。
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