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カテゴリ:経済問題
今日(20日)は、特に大きな動きがあったわけではありませんが、前回紹介した最近の動きに関連して、オムニバス形式、つまり、短い出来事をいくつかまとめて紹介し、最後に管理者の雑感を紹介します。 なお、最近、ブログが非常に長くなっているので、今回からあまり長くならないように努めます。そのため、今回は外交と経済の話題について紹介するつもりでしたが、経済に限定して紹介します。 ブログ更新のための励みにしていますので、クリックを是非よろしくお願いします。
前回はCHP内の動きについて、「ここ数日間で少しずつ状況が変わっている」と紹介しましたが、CHP内だけではなく、トルコの外交や経済などでもここ数日間でいろいろな動きがありました。 まずは、前回紹介したところから始めます。前回、「国家公務員及び年金生活者に関する給与・年金の改定に関する政府に対する要求が大きな話題になっています。公式インフレ率でも50%近くになり、年末には60%前後になるとトルコ中央銀行及びトルコの経営者たちも予測している状況(今回追加:中央銀行はインフレ率の低下が始まるのはいくら早くて2024年末としているので、今年末のインフレ率は2024年も少なくとも同じ水準で続くことになります)に対して、(中略)政府はそれぞれ(15(前半)+10(後半の追加))%と(6+5)%というような数字を2回目の交渉でも提示し、労働者側を大いに落胆させています。」と紹介しましたが、遂に公務員労働組合はストに入る方向のようです。公務員の労働組合もいくつかあります。一方、労働組合への加入率はトルコ労働者の13%程度とも言われていて、どの程度の影響力があるかは大いに疑問です。しかも、トルコ政府が相手にしているのは、いわゆる「御用組合」で、これまではストライキをはじめとする、激しい抵抗をほとんど示していませんでした。ゲズィ公園抗議行動後、市民が集まって政府に対して抗議する動きをトルコ政府は徹底的に取り締まっていますが、今回は公務員のストが本当に行われるのか、そして、ストが行われた場合、どのような状態になるのか(どこまでやるのか)が注目されています。 次は、3つ続けてシムシェキ国庫・財務大臣に関する話題です。イマムオール大イスタンブル市長がシムシェキ国庫・財務大臣に感謝を表明するツイートを行いました。それは、4年以上にわたり、エルドーアン大統領が署名を拒否していたイスタンブル市役所の外国からの借款について、同大臣が署名したことに対して表明された感謝です。欧州復興開発銀行(EBRD)か欧州開発銀行(EIB)か、それ以外なのかは分かりませんが、民間銀行ではなく、国際機関からの融資と思われます。(1)これ以上、市長を邪魔すると、来年3月の統一地方選挙で悪影響が出ると考えた(イマムオール大イスタンブル市長が“エルドーアン大統領が邪魔している”と大々的に宣伝することが予想される)、(2)これまでユルマズ副大統領、シムシェキ国庫・財務大臣、エルカン・トルコ中央銀行総裁が融資・投資を求めて日本を含め、世界中を行脚し、更にはエルドーアン大統領自らが中東詣でなどをして外貨を求めてきましたが、結局、思うように集められていないため、外貨が獲得できるなら何でも認めることとした、などが理由ではないかと指摘されています。 3つ目は、シムシェキ国庫・財務大臣が2日前に辞表を提出したという噂です。辞意を知らされたユルマズ副大統領は大慌てで、シムシェキ国庫・財務大臣の出した条件の多くを認め、慰留に努めたというものです。もしもこれが本当であるとすれば、ユルマズ副大統領にはそんな権限は有りませんので、エルドーアン大統領の意思が働いていることは確実です。上で紹介したイスタンブル市の国際借款を認める決定とほぼ同時であることが、この噂の信ぴょう性を高めているように思います。 4つ目の話題はIMFとの関係についてです。次の話題にも関係するのですが、シムシェキ国庫・財務大臣は、トルコはIMFと協定を結ぶこと(=IMFから融資を受けること)が必要と考えていると言われています。エルドーアン大統領は2010年以降(2001年の危機をIMFの協力で乗り切り、IMFとの協定が終了した後)、「IMFは“外国勢力”の回し者であり、トルコの主権を奪い、トルコ人の生活を貧しくしようとしている。」と言って、IMFへの攻撃をしばしば行って来ました(選挙前も、「野党はIMFに泣きつくつもりだ」、「野党が勝てばトルコはIMFの支配下に入り、苦しい生活を余儀なくされる」と野党攻撃にも使っていました)。ここでも「歴史的Uターン」はあり得ますが、IMFの場合は中東諸国と違って、頭を下げる(利益を分配する?)だけではすみません。つまり、IMFから融資を受けるための条件として「融資が終わった暁には、二度と同じ困窮状況に陥らないための体制を作ること」が求められます。しかし、公平な入札を行うこと(落札業者をエルドーアン大統領が決めることはできなくなる)、(不合理な)支払保証は行わないこと(自分の懐に帰って来させるための過剰支払いができなくなる)など、エルドーアン大統領のこれまでの政策を180度転換させる必要があります。「国の威信」など全く無視して、自分の利益のためには“歴史的Uターン”を連発したエルドーアン大統領ですが、今回、IMFとの協定が実現すれば、「エルドーアン大統領は、トルコ経済を救うために自分の利益を放棄することになる」とも言えます。このような“歴史的Uターン”を、エルドーアン大統領が本当に行うのか、大いに注目されます。(ただし、その場合でも、真の目的は“トルコ国民のため”ではなく“現体制を延命させるため”であることは明白です) 今日最後の話題は、“為替保護付き預金(KKM)”の事実上の廃止方針が打ち出されたという話題です。20日、中央銀行は「(市中銀行に対して、)KKMから一般のTL預金への転換を誘導するように」との方針を発表しました。つまり、段階的にKKMを廃止するという意味になります。現在までの通算のKKMの規模は1,243億ドルに達していると言われています。つまり、その内の残存預金額に対して、ドル/TL相場が下落した分だけ補填し続けている (ドル/TL相場が下がる(リラ安)になる毎に財政負担が生じる) ことになります。先日も紹介しましたが、「お金持ちの預金が価値を失わないように、貧しい人から搾り取った税金で補填している」という状態です。しかも、これまでは国庫・財務省が差損の大部分を負担してきましたが、今後は中央銀行が全ての差損を負担することになりましたので、中央銀行はインフレとの闘いを行う上で、このような負担を引き受ける続けることはできないと考えたものと思われます。
経済の話題だけに絞ったのですが、結局、相当な長文になってしまいました、、、、
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Last updated
2023.08.21 10:50:34
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