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雀坊の納戸~文鳥動向の備忘録~

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2010年05月11日
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  農畜産品として、いくつかの農家から文鳥を集約して出荷する組合が解散しても、弥富で文鳥を飼育繁殖する人がいなくなったわけではない。今後は、生産規模にとらわれずに、また価格を上げる方向に意識を大幅に切り替えて(これまでの卸売業者その他との関係を改めるのはとても困難なことだが、無責任な第三者は気安くものが言えるので言っている)、この際、農畜産品としてではなく、『動物愛護法』の元での動物取扱業者として、つまり農業ではなくペット産業の範疇で、高くても良いものを提供してもらえるように期待している。高くても、高いだけの理由が明らかなら、評価されないはずが無いと私は信じている(消費者は理由もなく並べられた虫食い野菜は買わないが、『無農薬有機栽培』などと理由がわかれば喜んで買う)。
 もっとも、率直に言えば、あまり多くは期待していない。変るものなら、より以前から変ったと思っている。それほど古いシステムは変えにくいものだと承知しているので、弥富における文鳥の大規模生産が完全に消滅しても、私個人に特別な感慨はない。存続の努力をされた方に、深い敬意と人間としての共感を抱くものの、必然以外の何物でもないとしか思えないのである。ただ、文鳥組合も、繁殖農家も、白文鳥発祥地の記念碑すら、どうなっても構わないとしても、弥富系統の白文鳥が消えてしまうとしたら、やりきれない気分にはなる。この地方の白文鳥は、白文鳥同士でも、生まれるヒナの三分の一は桜文鳥になる特殊な存在だった。これは、白文鳥を生産する場合、必ず不利となる特質なので、結局、白文鳥同士からは白文鳥しか生まれない別系統が主流となるに相違ないのだ。白文鳥以外を生み出す個体は、白文鳥を生産する立場からは、選択淘汰の対象になってしまうだろう。
 せっかく珍しい遺伝子が存在し、それが長く弥富の人たちに受け継がれ、日本人に愛されてもきたので(※)、文鳥の中でも特に白文鳥を愛し、弥富文鳥と関わりを持った人たちは、意識的にこの系統を保護することを考えて欲しいところだ。我が家は桜文鳥主流で、白文鳥と言えば、桜文鳥の間でごま塩化ねらいなので、弥富系でない方をむしろ望むようになっているので(元々桜と白の産み分け狙いだったが、オールごま塩化した過去を持つ)、ここは一つ、白文鳥大好きで、何となくでも弥富に憧れる人たちが、弥富白文鳥保存会の設立を考えてもらいたいところだ。
※白と桜を夫婦にしても、産み分けが起きて、両方の子供を得ることが出来る。なお、最近刊行された『ザ・文鳥』が、「(台湾産系の白文鳥の白因子は)劣勢(原文ママ、劣性の誤りか)のため、サクラブンチョウと交配すると生まれるヒナはすべてサクラブンチョウ」となるとしているのには問題がある。その因子が対立遺伝子に対して劣性なら、実際の姿に影響しないはずだが、実際は100パーセントごま塩化するので(片親の桜文鳥より確実に白斑が増し、多くはごま塩柄になる)、有色の因子とこの白色の因子に優劣はないと見なすのが適当である。確かに現実として、ごま塩文鳥と白斑の多い桜文鳥を外見で区別するのは不可能に近いが、遺伝子型が異なる以上、一括出来るものではない(それを一括するなら、遺伝子の知識など無意味だ)。
 なお、弥富の文鳥生産農家は、弥富の文鳥が数多く台湾に輸出されていたことから、現在逆輸入される形になった台湾産の白文鳥を、弥富産の末裔と考えられているようだが、色柄の遺伝因子の面だけで見れば別系統と言わねばならない。おそらく関東その他に存在した白文鳥同士では白文鳥しか生まれず、白と桜ではごま塩化する系統が種鳥となり、弥富の白文鳥の形質(絶対優性の白因子)は淘汰されてしまったものと考えるべきだろう。

 なお、弥富での文鳥生産が無くなると、文鳥が買えなくなるのでは?といった誤解があるかもしれないので、この点付言しておく。
 弥富が文鳥シェアの80パーセントを生産などとしていたが、これは農畜産品として生産出荷されている文鳥でのシェアに過ぎない。実際は、農畜産業の括りに入らない中・小の繁殖家(飼鳥団体に所属するような、いわば繁殖のプロ。動物取扱業)が卸売や小売に売り渡す昔から多く行われており、それがこの「シェア」には含まれていない。また、台湾など海外からの輸入数も、この「シェア」には含まれていない。つまり、この「シェア」は、実際の流通に占めるシェアではなく、シェアの一部である農畜産品としての文鳥生産における、弥富など愛知県の文鳥農家の生産割合を示すに過ぎない。文鳥農家という形態は特殊なので、ほとんど弥富に限られており、農家生産数上の「シェア」は絶対的な出荷数量が激減しても変らないだけの話である。実際、弥富の文鳥組合における出荷数が年々減少の一途をたどっても、それで市場から文鳥がいなくなった事実は無く、元々弥富では生産されなかった、シナモンやシルバーも市場にあふれており、それを弥富でも後追いする形で導入したのが現実だ。つまり、弥富で文鳥生産が完全になくなったとしても、影響は限られるのである。

 この際、贅言するなら、本来ペット動物の繁殖は、大規模より小規模が望ましく、文鳥についても、一般家庭のブリーダーから譲られるなり購入する形態が望ましいと信じている。ただ、オマエはどうだと言われたら、自分の家で産まれた文鳥は、とりあえず門外不出で、嫁や婿はペットショップめぐりをして購入している(それでも冷やかし的に動物取扱業登録をしているんだな、これが)。
 私個人はともかく、今は一種の過渡期で、将来的にはより一般の飼い主の横のつながりを重視しなければならなくなるように思っている。個人的には、すでに存在する飼鳥団体が、元々言葉は悪いが「鳥キチ」「鳥ヤ」のおっちゃんたちの親睦組織的なものであったとしても、一般に開放した展示会の開催や一般会員の受け入れからさらに一歩進んで、一般の愛好者を中心にした組織になり、文鳥の愛好者拡大や実際の流通における結束点となってくれないものかとも思っている(なぜ飼鳥団体はホームページ一つ運営し続けられないのか?)。しかし、オマエが何かしろと言われると困惑するので、これ以上余計なことを言うのを自重しておこう。






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Last updated  2010年10月23日 12時48分49秒
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