孵化11日目のヒナ(「ニチィ」)
鼻風邪。昼に『パブロンS錠』を飲んで少し眠ったら、だるさがいくぶん和らいだ。安上がりな体質といえよう。
風邪薬と言えば、思い出すのが中学生の頃の友人トーゴー君だ。大学生の時に道端で出くわし、まとわりつかれ、喫茶店でコーヒーを飲み、薬局に付き合わされ、彼が液状風邪薬『某』を買ってきて(当然、対面販売ですよ)、自販機でココアか何かをおごらされ(なぜ彼の要求に従順だったのか、今考えると不可思議だが、昔から妙な奴がなおさら奇妙な様子だったので、刹那的な興味をもったのかもしれぬ)、「薬だけ飲むと胃の粘膜が~」などと語るのを聴きながら、どうするつもりか見ていたら、その風邪薬を一気飲みにしたのには驚かされた。一回1本という薬ではない。濃縮液でおチョコ1杯以下の分量を飲むものだから、1本で本来数十回分の分量のはずのものなのだ。そんなことをしていたら、胃の粘膜以前に体を損なわないはずがない(覚醒効果のある成分が入っていたようだが、現在は処方が変わったようだ)。
その後、さらにこの危険人物の自宅まで上がり込んだが、部屋が雨戸を締め切って真っ暗なのに辟易し、全部開放させた。そこで、彼得意のイラストのデッサンについてと(色物系統のアニメーターだか漫画家的な仕事をしていたらしい。彼の描いた修学旅行用の印刷物の表紙絵、金閣寺が「金隠し」【和式トイレの部分名称】になっているそれは、秀逸であった)、薬剤についてと、ナイフの扱い方についての講釈を受けた。前2つの話は記憶にないが、ナイフの方は記憶にある。護身用に持ち歩いているとかで、ゲーセン(今や斜陽のゲームセンターのこと)などでもめた際に、見せつけるのだそうだ。相手をつくようにしつつ、刃先を当てない、他愛の無い技を実演してくれるので、心して平静な顔で、「そのようなものを持っていると、殴り合いが殺し合いになりかねず、刃物があれば刃物、拳銃があれば拳銃を使いたくなるから、身に付けない方がよほど無難だ」といった、平和な日本人としてはごく常識的な意見を、全くつまらなそうな口調で言ったように思う。もちろん、聞く耳持たずで、次にはモデルガンを持ち出し、数発撃ちながら何やらしゃべっていた。
その後、順調に廃人となったか、案外に更生しているのか。消息を知りたくはないが、とりあえず大きな犯罪は起こしていないようなので、旧友としては安堵している。
閑話休題。
「ニチィ」は、明日には開眼する気配だ。なお、再三指摘することだが、開眼したからと言って、数日はほとんど見えていない。初めて見たものを親と思うのが、鳥類の刷り込み(インプリンティング)だと小耳にしていると、目が開く前に親鳥の元から引き継がなければならないと思ってしまう人がいるものだが、ごく単純な勘違いである。それは、アヒルなどの、孵化した時にすでに目が開いており、間もなくモノを判別することが出来る種類での話で、目が開くまでに10日以上必要とし、しっかり見えるまでさらに数日必要な文鳥のような生き物と混同してはならない。
文鳥の場合は、開眼後、徐々に視力が発達し、1週間程度して、ようやくはっきりものを判別できるようになる。従って、孵化14~18日目程度で引き継げば良い。より幼くよりか弱いヒナを引き継ぐのは、それでもうまくいっているベテランであっても、必然性がないのでやめるべきだろう。必然性があるとしたら、親鳥に育雛疲れが見られるケーズだが、これは孵化数を、3羽以下くらいに減らして対応することを薦めたい(有精卵の数を調節するだけのこと)。