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JEWEL

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完結済小説:狼と少年

2012.10.08
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小さな田舎町を揺るがした殺人事件は、ジェフ=ハノーヴァーの逮捕により更に報道が過熱し、世界中から観光客が押し寄せるようになり、その結果町の経済は一時的に潤った。

ラリーの顧客情報ファイルはハッカーによって世界中に発信され、ハノーヴァーは殺人罪で有罪となっただけでなく、その財産も没収、長年築き上げてきた政治家としてのキャリアを失った。
事件の被害者であるラリーの墓には、彼の死を悼んで観光客達からの花束が絶えることがなかった。
殺人現場となったクラブ『ジャーヘッド』は、ラリーの友人・アレンがオーナーとなり、ダイナーとして生まれ変わった。
ラリーの死により、この町が隠していた秘密が次々と暴露され、その中にはジョージ=タンバレインが過去に犯した数々の不祥事が明らかになった。
「これからどうなるかなぁ?」
「さぁな。良い方向にも悪い方向にも変わっていくだろうよ。」
そういいながら、ウォルフはクッキーを頬張った。
「そろそろ時間だな。」
「そうだね。」
彼らは長距離バスのターミナルに居た。
アレックスは第一希望のカルフォルニア大学への入学を果たし、LAに移住することになったウォルフとともにLA市内のアパートでルームシェアリングすることになっている。
「LAはエンターテイメントの街っていうけど、どんな所なのかなぁ?」
「ホットでクールな場所だから、きっと気に入るぞ。」
「そうかなぁ・・」
LA行きのバスに乗りながら、アレックスは次第に遠ざかってゆく母の故郷を窓から眺めていた。

一年後。

『アレックス、どうだ大学は?』
「うまくやってるよ。おじいちゃんのほうこそ、大丈夫なの?」
『ああ。メグのほうはこっちに戻ってるぞ。アレンのダイナーで働いてる。少しでも自立したいって言ってな。タンバレイン家はどこかに引っ越したよ。』
「そう。ママとアレンに宜しくね。」
『わかったよ、お休み。』
「うん、お休み。」
祖父との久しぶりの会話を楽しんだアレックスは、スマートフォンを充電した。
「マックスは元気にしてたか?」
「元気にしてたよ。ああ、ルナのこと言いそびれちゃったよ。」
そう言ったアレックスは、ゲージの中に居る愛猫のほうを見た。
ラリーの事件で二人が忙しくしている間、ルナは近所の野良猫と懇(ねんご)ろになり、アレックスがウォルフと共にLAに移住した後6匹の子供を産んだ。
まだ目も開いていない子猫たちは、必死にルナの乳首に吸い付いて母乳を吸っていた。
「どうしよう・・」
「子猫の貰い手を探すしかないな。ネットで探すのもいいし、大学の掲示板に張り紙を貼るのもいい。」
「じゃぁ、今からつくろうかな。ウォルフ、悪いけど手伝ってくれる?」
「ああ、わかった。」

メグはアレンのダイナーで働きながら、ふと壁に掛けてあるカレンダーを見た。
今日は長期休暇を利用してアレックスとウォルフが帰ってくる日だった。

「メグ、今日は早めに上がりな。久しぶりにアレックスたちが戻ってくるんだから、親子水入らずの時間を過ごしなよ。」
「悪いわね、アレン。」
「いいってことよ。」

メグはエプロンを外すと、息子達が乗っているバスを迎えに行くためダイナーから飛び出した。


―完―

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最終更新日  2015.05.11 07:22:47
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「口封じのために俺達を殺すつもりか?」
「まぁ、そんなところだね。さっさとブツを寄越して貰おうか?」

ジャックの秘書・スティーブはそう言ってウォルフとアレックスに拳銃を向けた。

「お生憎様だが、お前のボスが欲しがっているものはここにはない。残念だったな。」
「そんな嘘に、俺が騙されるとでも?」
「嘘かどうか、確かめればいいだろう?」
スティーブは舌打ちすると、ウォルフの車の中を調べ始めた。
彼が銃を車のボンネットに置いたのをウォルフは見逃さずに、素早く銃を奪った。
「走るぞ!」
アレックスの手を掴んで森の中へと逃げ出すウォルフの姿を見たスティーブは、怒りに顔を歪ませながら彼らの後を追ってきた。
「いいか、絶対に俺から離れるなよ!」
「わかった!」
二人が息を切らしながら森の奥へと走ると、背後から銃声が聞こえた。
「畜生、あいつ車から銃を取りに行ったんだ!」
銃声が聞こえる距離が、徐々に近づいていく。
「やっと見つけたぞ、ガキども!」
怒りに顔を歪ませたスティーブが、トレンチコートの裾を翻しながら二人に向けてショットガンを発砲した。
銃弾は二人のすぐそばにある幹へと当たった。
「くそっ・・」
ウォルフはそう言って舌打ちすると、スティーブに向けて発砲した。
向こうの木立から悲鳴が聞こえた。
「元来た道を戻るぞ、早く!」
アレックスは走りすぎて胸が苦しくて、死にそうだった。
足も荊や棘が刺さり、走るたびに痛かった。
「がんばれ、もう少しだ!」
ウォルフは隣で苦しそうに息をしているアレックスを励ましながら、漸く車のところへと戻ってきた。
運転席に入りエンジンを掛けようとしたが、こんなときに限ってなかなかエンジンが掛からない。
「畜生!」
汗でキーを回す手が滑り、なかなかエンジンが掛からない。
漸くエンジンが掛かり、ウォルフは勢いよくバックして窪地から脱出した。
「やつは?」
「もういない。もう何処かへ行ったんだろう・・」
「ウォルフ、前!」
アレックスが恐怖で顔を引き攣らせながら前を指すと、そこには足から血を流しながら憤怒の形相を浮かべるスティーブがショットガンを潅木(かんぼく)の前で構えていた。
もうおしまいだ―ウォルフがそう思った瞬間、突然スティーブの脇を一台のジープが突っ込んできた。
スティーブはショットガンを構えた格好のまま下の沼地へと真っ逆さまに落ちていった。
一体何が起こったのだろうかと思いながら呆然とウォルフとアレックスが突然現れたジープを見ていると、そこから一人の老人―アレックスの祖父・マックスが現れた。
「大丈夫か、アレックス?」
「おじいちゃん、何で?」
「さっき隣町に住むアレンからお前達が危ないと連絡を受けてな。何処も怪我はないか?」
「うん・・」

アレックスは急にへなへなと地面にへたり込んでしまった。

「どうした?」
「安心して腰が抜けたみたい・・」

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最終更新日  2012.10.08 20:51:04
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南部のレストランでは未だに「白人専用席」と、「非白人席」があり、偶然ウォルフ達が入ったダイナーには、それがあった。

「おいてめぇ、そこに座るなんて冗談がキツイぜ。」
そう言ってウォルフに詰め寄ってきたのは、この前交差点で彼に絡んできたスポーツカーの男だった。
「済まないな、こっちは腹が減ってて仕方ねぇんだ。」
「ふん、そうかよ!」
軽く男をあしらったウォルフは、平然とした様子でメニュー表を開いた。
「何を食べたい?」
「ステーキにしようかな。」
「俺もそれで決めた。」
ウェイトレスにステーキを注文した二人は、ラリーの事件について町中で様々な憶測が飛び交っていることをアレックスに話した。
「あいつは死んで当然だ、と言ってる奴が多い。」
「そうかなぁ?別に迷惑掛けてなかったけどなぁ、彼。」
「まぁ、ここはバイブル=ベルトに近いから、聖書の教えに反して堂々と姦淫の限りを尽くしていたラリーが目障りだったんだろうさ。特に、アビゲイル=タンバレイン率いる婦人会や、マーチャー牧師の信徒達なんかは。」

保守的でよそ者を嫌うこの町で、ラリーは孤立していた。

常に女装し、周囲の非難の視線をもろともせずに胸を張って堂々とハイヒールで闊歩(かっぽ)する彼の姿を、昔から住んでいる住民達は苦々しい思いで見ていたに違いない。
アレックスがラリーと打ち解けたのは、彼の自由奔放なところにアレックスがひかれ、自然と意気投合したからだ。
「あの人、一体どうするつもりなんだろう?」
「さぁな。恐らく直接手は下さないだろう。」
「そうかな・・」
「安心しろ、俺がついてる。」
ウォルフはアレックスを安心させるかのように、彼の手をそっと握った。
ダイナーで腹ごしらえをした後、ウォルフが車を走らせて暫くしていると、白い車が自分達の後をつけていることに気づいた。
「さっそくおいでなすったか。」
ウォルフはそう言って笑うと、アクセルペダルを踏み込んだ。
「何、どうしたの?」
「どうやらジャックは猟犬を放って、俺達を殺そうとしているらしい。」
「えぇ~!?」
「そんな変な声を出すな。俺に任せておけ。」
二台の車は徐々にスピードを出しながら、町を遠ざかり、森の中にある幹線道路へと向かっていった。
「畜生、しつこい奴め。」
「一体どうするの?」
ウォルフは幹線道路から外れて森の中へと車を走らせた。
泥濘のある道を猛スピードで走る所為で、車内は激しく揺れた。
巧みなハンドルさばきでウォルフは白い車を窪地へと誘(おび)き出した。
「よし、出るぞ!」
「う、うん・・」

二人が車から出ると、白い車からスーツを着た若い男が出てきた。
その手には、サイレンサーつきの拳銃が握られていた。

「お前は誰だ?」
「それは知らないほうがいい。」

男はそう言うと、拳銃を二人に向けた。

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最終更新日  2012.10.08 18:08:36
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「どうしてこの人が、ラリー殺害に関わっているわけ?」
「それはな、これの所為だ。」

ウォルフはあるファイルをアレックスに見せた。

そこには麻薬の売買に関する極秘資料があり、取引にはジャックが関わっているものがあった。

「ラリーはひそかに、ジャックを脅迫してたんだろう。これを公にしたくなければ、お前とメグから手をひけと。」
「どうして、ラリーがそんなことを?」
「それは本人にしかわからないな。死人に口なしってやつだ。」
「そうか・・」
「とにかく、これは安全な場所に隠そう。タンバレイン家の者の目に見つからない内に。」
「そうだね。でも何処に?」
「銀行の貸金庫に入れておこう。」
二人はラリーのラップトップとUSBメモリを銀行の貸金庫へと預けた。
「大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だ。貸金庫の鍵は俺とお前にしか開けられない。」
「そう、だったら安心だね。」
二人の会話は、ひそかに盗聴されていた。
「まさか、ラリーがあんなものを残すとはな。」
「ええ、失態でした。申し訳ありません・・」
「ふん、まぁいい。」
リムジンの中でジャックは、そう言って秘書をにらみつけた。
「いいか、あいつらを今晩中に始末しろ。失敗は許されんぞ!」
「御意。」
「よし、行け。俺の気が変わらぬうちに。」
慌ててリムジンから出て行く秘書の背中を睨みつけると、ジャックは忌々しそうに舌打ちした。

(まさか、あいつに脅迫されるだなんてな・・)


絶大な権力を持った大物政治家である自分が、あんな鄙(ひな)びた田舎町の男娼風情から脅迫されるとは、夢にも思わなかった。
『あんたに話があるんだよ。』
『なんだ、急に?』
『もうあの坊やからは手をひきな。そしたらあの忌々しいファイルを綺麗さっぱり消してやる。どう、悪くないだろう?』
『ふん、それはどうかな?』

ジョンはそう言うと、ラリーの後頭部を撃ち抜いた。

『愚かなやつめ。わたしにかなうとでも思ったのか?』
ジョンは強盗の仕業に見せかけて室内を荒らし、後はラリーのラップトップからあの忌々しいファイルを消去するだけだった。
だが、それは何処にもなかった。

(あれさえ見つかれば、わたしは政治生命を絶たれることはない!わたしの邪魔をするものは殺してやる!)

「なぁ、どこかで食べるか?」
「うん。」
「美味いステーキを出すダイナーがある。そこへ行こう。」
銀行を出たウォルフは車を走らせてダイナーへと向かうと、丁度ランチタイムの時間帯で店内は込み合っていた。
「どうする?」
「向こうが空いてる。」

ウォルフがそう言って躊躇いなく奥のテーブルへと座った途端、今まで騒がしかった店内が急に水を打ったかのように静まり返った。

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最終更新日  2012.10.08 14:32:26
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ウォルフが交差点で信号待ちをしていると、一台のスポーツカーが隣に停まった。

「おいてめぇ、顔見せろよ!」
スポーツカーの運転席に座っていた男は、ガラの悪そうな顔をしていた。
ウォルフがうんざりして窓を開けて外に顔を出すと、スポーツカーの運転手は彼に唾を吐きかけた。
「誰かと思ったら娼婦の息子じゃねぇか。まだこの町にいやがったのか、とっとと失せやがれ。」
未婚の母から生まれたということで今まで謂れのない差別を受けてきたウォルフにとって、男の罵声は大して心に響かなかった。
「俺だってこんなクソの掃き溜めのような町、居たくはないが、事情があるんでね。」
「へっ、そうかよ。」
スポーツカーの運転手は急に興味を失ったかのように、青信号になるとスポーツカーを急発進させ闇の彼方へと消えていった。
ああいう輩には関わらない方が身の為だ―そう思いながらウォルフはタンバレイン邸の敷地内へと車を入れた。
裏口から家に入ると、中には誰も居なかった。
そっと二階へと上がろうとした時、誰かが言い争う声が聞こえた。
「あなた、いつまであの子をそこに置いておくつもり?」
「アビゲイル、少し黙っておいてくれないか!?」
「何よ、わたしはあなたのために・・」
「うるさい!」
タンバレイン夫妻の会話をもうそれ以上聞きたくなくて、ウォルフは自室に戻るとアレンから渡されたUSBメモリをラリーのラップトップに挿し込んだ。
パスワード認証画面に素早くパスワードを打ち込むと、そこには信じられないものが入っていた。
ラリーは顧客情報の中でも最も重要なものだけを、USBメモリに保存していた。
そこにはある大物政治家の名があった。
「おはよう、どうしたの?顔色悪いよ?」
「ああ・・アレックス、朝食の後話せるか?」
「わかった。」
二人が階下へと降りると、タンバレイン夫妻はまるで通夜のように陰鬱な表情を浮かべて押し黙っていた。
「どうかなさったんですか?」
「あなたには関係のないことよ。それよりもあいつを殺した犯人はまだ捕まらないのかしら?」
「それは警察にお任せいたしましょう。素人ができる事は限られていますから。」
「そうね・・」
タンバレイン夫人にラップトップのことを話していなくてよかったとアレックスは思った。
「ご馳走様でした。」
「あら、もう食べないの?」
「このごろ食欲が余りなくて。失礼します。」
アレックスがダイニングから出て部屋へと戻ると、ラップトップの前にはアレックスが座っていた。
「ラリーを殺した犯人がわかった。」
「え?」
「昨日、彼の友人で隣町のクラブを経営するアレンからラリーのUSBメモリを渡された。そこにあったファイルを開いてみると、ある人物の名が出てきた。」
「誰なの、彼を殺した犯人は?」
「お前もよく知っている人物だ。」

そう言うとウォルフは、パソコンの画面を指差した。

そこには、自分の実の祖父であるジャック=ハノーヴァーの顔写真が映っていた。

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最終更新日  2012.10.08 14:05:03
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「一体どうして、これが俺の車のボンネットに?」
「さぁ。多分犯人じゃないかな?それとも、他の誰かが。」
「そうか・・」
タンバレイン邸へと戻る車中で、アレックスとウォルフは一言も喋らなかった。
「さてと、起動してみるか。」
ウォルフは封筒からラップトップを取り出してそれを起動すると、そこにはアンディが言ったとおり、店の顧客情報が入っていた。
「犯人はこれを見て困る人物だったんだな。」
「そうかもね。この中に犯人が居るかも。」
アレックスはラップトップの前に座ると、マウスを動かしてファイルをひとつずつ開いた。
一つ目のファイルにはめぼしいものはなかった。
二つ目、三つ目のファイルも同様だった。
「う~ん、あんまりめぼしいものはないな。」
「そうか。」
アレックスはラップトップを閉じると、ベッドに入って眠った。
「お休み。」
ウォルフはそっとアレックスの耳元にそう囁くと、彼の頬にキスした。
再びタンバレイン邸を出たウォルフは、車で隣町のクラブへと向かった。
「よぉ、誰だと思ったらウォルフじゃねぇか?」
クラブの駐車場に車を停めていると、クラブのオーナー・アレンがウォルフに話しかけてきた。
「アレン、久しぶりだな。」
「ああ。それよりもこのあたりは最近物騒になってきたな。ラリーのことは聞いたぜ。」
「そのことで話があるんだ。」
「今客がひけたから、事務所で話そうぜ。」
「わかった。」
アレンとともに店の事務所へと入ったウォルフは、そこでラリーの紛失した黒いラップトップを見つけたことを彼に話した。
「多分誰かが置いていったんだろうよ。犯人はラリーを殺した後、そいつをどこかに捨てようとしたが処分に困って、あんたの車のボンネットにうっかり置き忘れちまった。」
「とんだ間抜けだな、その犯人は。一応中を調べたが、何もめぼしいものはなかった。」
「ラリーは用心深かったからなぁ。一番大事な情報はUSBメモリの中に入れてある。ご丁寧にパスワードでロックしてな。知っているのは俺と、本人だけさ。」
「それを俺に教えてはくれないのか?」
「あんたはラリーの友人だから、特別に教えておいてやるよ。」
アレンはそう言うと紙ナプキンにボールペンでUSBメモリのパスワードを教えた。
「ありがとう、アレン。じゃぁな。」
「気をつけろよ、ウォルフ。犯人は必ずお前を狙ってくる。」
「わかってるよ。」

(今は誰も信用できない・・そう、アレン、あんたもな。)

クラブの駐車場から車を出し、タンバレイン邸へと戻る車中でウォルフがラジオを付けると、丁度ラリーが殺されたことでDJがしゃべっていた。

「あいつは殺されて当然よ。この平和な田舎町に混沌と破壊をもたらした悪魔だもの・・」

“悪魔”という言葉を聞き、ウォルフは反射的に身を強張らせた。
信心深い住民が多いこの町では、自由奔放で同性とためらいなく肌を重ねるラリーの存在は疎ましかったに違いない。
彼を殺した犯人は、この町のどこかに住んでいる。

そして今、そいつは自分達を狙っているのだ。

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最終更新日  2012.10.08 13:58:39
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2012.10.07

「本当なんですか?」
「ええ。明らかに顔見知りによる犯行ですけれど、何せ被害者の交友関係が幅広くて、犯人が特定できないんです。」
「それで、俺達に一体どうしろと?」
「大変申し訳ないのですが、一緒に現場まで来ていただけませんか?」
「わかりました。」
ウォルフとアレックスが殺人現場へと到着すると、そこにもマスコミが殺到していた。
「こちらです。」
立ち入り禁止テープを二人がくぐると、生々しい血痕がテーブルの上に広がっていた。
そばには空になったステーキ皿と、ワイングラスがあった。
アレックスはテーブルの血痕を見るなり、吐き気を催した。
「大丈夫か?」
「うん。」
「それで、ラリーの遺体は?」
「今解剖中です。彼の近親者に連絡は取れますか?」
「いいえ。」
確か、ラリーは天涯孤独だと言っていた。
「あの、遺体の引き取り手がないと彼はどうなりますか?」
「そうですね、無縁墓地に埋葬されます。」
「そうですか・・」
半開きになったクローゼットから、デザイナーズブランドのドレスが覗くのを見たアレックスは、もうこのドレスを着るラリーが居なくなったことを実感しはじめ、泣きそうになった。
「今日はわざわざ来ていただき、ありがとうございました。」
ラリーのアパートから出た二人に、パリス警部補はそう言って彼らに頭を下げた。
途中でタクシーを拾ってタンバレイン邸へと戻った二人に、ジェフが彼らに駆け寄ってきた。
「ラリーが殺されたっていうのは本当なのか!?」
「ああ。さっき現場を見てきた。」
「そうか・・信じられない、ラリーが死ぬだなんて!」
ジェフはそう叫んで肩を震わせながら嗚咽した。
ラリーの葬儀には『ジャーヘッド』の従業員たちや馴染み客達などが集まり、彼の死を悼んだ。
「ヘイ、ウォルフ。」
「アンディ、あんたも来てたのか。」
『ジャーヘッド』の用心棒・アンディは筋骨隆々とした体躯を喪服で包んでいる所為で、傍目から見ると『MIB』のエージェントに見えた。
「ラリーがあんな目に遭って俺も驚いてるよ。しかもあいつのラップトップも行方不明だと聞いた。」
「ラップトップが?」
「ああ、黒いやつだ。そこに顧客の情報が全部入ってる。まぁ用心深いラリーのことだから、バックアップはちゃんと取ってるさ。」
「へぇ、そうなんだ。」
「じゃぁな、お二人さん。」
「じゃぁね。」
アンディと別れた二人が墓地を後にすると、ウォルフは車のボンネットに何かが置いてあることに気づいた。
「何、それ?」
「さぁな。」
封筒の封を開けて中身を確かめると、それはラリーの黒いラップトップだった。
「ここから離れよう。」
「そうだね。」

墓地から走り去るウォルフの車を、木陰からある人物が見ていた。

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最終更新日  2012.10.07 20:36:06
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タンバレイン夫人が婦人会の会合に顔を出すため愛車を運転しながら町へと出ると、たちまち彼女の車をマスコミが取り囲んだ。

「退いてよ!」

まるでハエのようにまとわりつく彼らを、彼女はひき殺したい衝動にかられながらも、ハンドルを苛立だしげに叩くだけで終わった。

「遅くなってごめんなさいね。途中でパパラッチに会っちゃって。」
「まぁ、仕方ないわよ。今この町はあの事件で大騒ぎだったもの。」
婦人会のメンバーがいつものように紅茶を飲みながら刺繍をしていると、メンバーの一人がそう言って笑った。
どうやらタンバレイン家で起きた強盗事件は、彼女達の耳に既に入っていた。
狭い町で、善悪関係なく噂というものは瞬く間に野火のように町中に広がるものだ。

インターネットが普及した現代では、なおさらだ。

「あれは強盗が悪いのよ。」
「あら、あなた勘違いしていないこと?あの汚らわしい姦淫の館を経営していた悪魔が、殺されたのよ!」
「まぁ・・」
ラリーが殺されたことを聞き、タンバレイン夫人は思わず紅茶を刺繍布にぶちまけそうになった。
「それは、本当なの?」
「ええ。あの男の店の前に、パトカーが何台も停まっていたわ。ドラマとかで良く観る黄色い立ち入り禁止のテープなんかも張られてたわ。」
「どうして彼は殺されたのかしら?」
「そりゃぁ、あの男は色々と恨みを買っていたもの。それに男遊びも派手だったようだし。」
「へぇ・・」
会合からの帰り道、タンバレイン夫人はラリーの店の前を通ると、そこには黄色い立ち入り禁止テープが張られていた。
「ねぇ、いつまで観るの?」
「ここに関する下らないニュースが終わったらだ。」
「別に無理して観なくてもいいのに。」
ソファの前に座ってメロドラマの再放送に魅入るウォルフを見てアレックスが溜息を吐いていると、アーニーが部屋のドアをノックした。
「あのう・・警察の方がお見えです。」
「警察が?」
また事件のことを聞かれるのかとうんざりした表情を浮かべたウォルフは、漸くテレビを消し、一階のリビングへと降りていった。
「またお会いいたしましたね。」
そう言ったのは、ランシェード警察のパリス警部補はウォルフに微笑むと、太鼓腹を揺すり椅子から立ち上がった。
「またあんたか。強盗事件は正当防衛だと何度も・・」
「いいえ、今日は違う用件で来たんですよ。」
「違う用件だと?」
「ええ・・あなたのお友達・・『ジャーヘッド』の経営者・ラリーさんが昨夜何者かに殺害されました。」
「何だって!?」
ウォルフの眦がつりあがった。
「ラリーが殺されたって、本当なの?」
いつの間にかアレックスがルナを抱いてリビングに来ていた。
「ええ。昨夜21時過ぎに、何者かに後頭部を撃たれてテーブルに上半身をもたれかかるようにして倒れていました。今朝出勤してきた店の従業員が遺体を発見したそうです。」
「そんな・・」

ラリーが殺害されたことに、アレックスは俄かに信じられなかった。

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最終更新日  2012.10.07 20:07:34
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(何、泥棒?)

アレックスはサイドテーブルの引き出しにしまってある拳銃を取り出して逆鉄を起こすと、ゆ
っくりと一階へと降りていった。

物音はジョージの書斎から聞こえてきた。

なるべく足音を立てないようにアレックスが書斎へと向かいドアを開くと、中には目出し帽を被った二人組の強盗が金庫をこじ開けようとしていた。

「おい、まだか?」
「ああ。」
アレックスがドアの向こうに立っていることに気づかない彼らは、バールのようなもので無理やり金庫を開けようと必死だった。
「泥棒!」
ドアを開け、部屋の明りをつけたアレックスを見るなり、強盗が彼に襲い掛かってきた。
アレックスはためらわずに引き金を引き、銃弾を三発強盗の一人に撃ち込んだ。
「アシュリー様、一体どうなさったんです!?」
銃声を聞きつけたアーニーがジョージの書斎へと向かうと、そこには床に倒れた強盗と、拳銃を握ったまま震えているアレックスの姿があった。
「アーニー、警察を呼んで。」
「アシュリー様、お怪我は?」
「大丈夫だから。それよりも早く警察を・・」
「わかりました。」
数分後、パトカーが数台、タンバレイン邸の前に停まり、事件現場となった書斎では鑑識職員や刑事らが現場検証を行っていた。
犯人の返り血をつけた夜着を羽織ったまま、アレックスはダイニングの椅子に座っていた。
「それで、あなたが強盗を見つけたと?」
「はい、間違いありません。彼らは書斎にある金庫を開けようとしていました。バールのようなものを持って・・わたしの姿に気づいた途端、襲ってきました。」
「それで、撃ったと?」
「ええ。」
強盗事件で犯人に発砲したアレックスは、正当防衛が認められ罪を問われなかった。
小さな田舎町で起きた強盗事件は、当然のことながら注目を集め、たちまち全米のマスコミがこの町に集まり、中心部にあるホテルやモーテルの客室は満室状態となる日が続いた。
「全く、これからゆっくりできると思ったら、誰かさんの所為で安眠できないわ!」
タンバレイン夫人はそう朝食の席でアレックスを遠まわしに非難すると、ベーコンをフォークで突き刺した。
「ではあのまま、わたしが死ねばよかったのですか?仇敵の娘が死んだとなれば、それこそマスコミの餌食になりかねなかったでしょうに。」
「まぁ、あなたも言うようになったじゃないの。物静かなお嬢さんだと思っていたけれど、やはりあの家の血をひく娘だわね!」
今まで自分の言葉に決して逆らわなかったアレックスが急に反論し始めたので、タンバレイン夫人の機嫌はますます悪くなった。
「さてと、あなたの相手をしている暇はないわ。これから婦人会の会合があるの。」
「そうですか、お気をつけていってらっしゃいませ。」
タンバレイン夫人はアレックスを無視して、ダイニングから出て行った。
その日は一日中、アレックスは二階の部屋で読書や刺繍をしたりして過ごした。
テレビをつけると事件のことばかりどのチャンネルもやっているので、余り観たくはなかった。
「どこか出かけるか?」
「いい。今出て行ったらマスコミに付け回されるから。」
「そうか。」
ウォルフはそう言うと、テレビをつけた。
案の定、画面にはタンバレイン邸の前でリポーターが嬉々とした様子で事件の詳細を話していた。
ウォルフは苦々しい顔をしてリモコンでチャンネルを変えると、メロドラマの再放送を観始めた。

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最終更新日  2012.10.07 15:34:07
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「何処まで話そうかしら?あなたの本当のおじい様・・ジャックのこと。」
「あの人は一体、どうして俺を連れて行こうとするの?」
「それは、あなたがハノーヴァー家の血を唯一ひく子だからよ。わたしは、あの家から逃げたいばかりにあなたのお父さんと結婚してNYに住んだのに、結局戻されてしまったわ・・」
メグはそう言って言葉を切ると、溜息を吐いた。
「一体、その人と何があったの?」
「あの人はね、この家の人たちよりももっと冷酷な人よ。彼が信じているのは一族の名と血統と、金だけ。」
メグは深呼吸すると、再び話し始めた。
ハノーヴァー家の娘として生まれたメグだったが、女児の誕生に落胆したジャックは彼女をマックスとその妻の元へ養女として出した。
その後後継者となる男児に4人も恵まれたジャックは、成人した娘がNYで結婚し、男児を儲けていることを知り、彼女を取り戻そうとした。
だがそれを知ったメグはアレックスを養父であるマックスに託し、実父の手の届かない所へと向かった。
しかしジャックに見つかり、メグはハノーヴァー家という名の檻に閉じ込められてしまった。
「もうお前にはわたしのような辛い思いをさせたくないの。だからあの時・・」
「競馬場で再会したとき、無視したんだね?俺を守るために?」
「ええ。ごめんなさい、アレックス。」
メグはそう言うとソファから立ち上がり、アレックスを抱きしめた。
「ママ、俺は一人じゃないよ。だから心配しないで。」
「そう・・それなら安心したわ。」
メグはそっとアレックスの手を握ると、ウォルフを見た。
「あなたがウォルフ?」
「はい、ミス・ハノーヴァー。」
「そんな堅苦しい呼び方はよして。メグって呼んでちょうだい。」
「すいません。」
「アレックスのこと、宜しく頼むわね。」
「わかりました。」
「じゃぁね、アレックス。身体に気をつけて。」
「うん。ママもね。」
別れの抱擁をアレックスと交わすと、メグは涙を滲ませながら部屋から出て行った。
「話はもう済んだのか?」
「ええ。ジャック、あの子はわたしたちとは一緒に行かないって言ったわ。」
「そうか。まぁ時間が経てば気持ちが変わるかもしれん。」
「さぁ、それはどうかしら?」

メグとジャックを乗せたリムジンがタンバレイン邸から出て行くのを窓から眺めていたアレックスは、今度母に会えるのはいつだろうかと思いながら、溜息を吐いた。
「心配するな、また会えるさ。」
「そうだね・・」
「さてと、これからルナの為に色々としないといけないことがあるな。出来るだけ早いほうがいい。」
ウォルフは床に置いていた紙袋から猫用のゲージを取り出すと、それを組み立て始めた。
「これでよしっと。後はルナが気に入ってくれるかどうかだ。」
アレックスがおそるおそるルナをゲージの中へと入れると、彼女は嫌がることなくベッドの中に入り、身体を丸くした。
「逃げ出さないように窓やドア、ゲージの鍵は必ず掛けろ。」
「わかったよ。」

その日の夜、アレックスが寝室で寝ていると、下から大きな物音が聞こえてきたので、彼は恐怖で身を震わせた。

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最終更新日  2012.10.07 15:13:59
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