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JEWEL

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完結済小説:lunatic tears

2013.02.28
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「別れるって・・一体どういうこと!?」

アウロラ皇女は、そう言うとアンジェリカを睨んだが、彼は冷静な口調で話を続けた。

「もう君と暮らすのは限界だ。」
「何よそれ!まるでわたしがすべて悪いみたいという言い方じゃないの!」
「じゃぁ今回母上がストレスで倒れたのは、君がくだらない嘘を吐いた所為だとは思わないのか?」
あくまでシラを切りとおそうとしているアウロラ皇女を前にして、アンジェリカは徐々に彼女に対する怒りが湧いてきた。
「くだらない嘘って何よ?あなたは自分の妹を庇いたいんでしょうけど、彼女には本当に酷い目に遭わせられたんだから!」
「もういい、君は自分の都合の悪いことには蓋をして、自分の都合の良いように嘘ばかり吐くんだな!君とは付き合いきれないよ!」
「わかったわよ、あんたとはもう終わりにしたいわ!」

アウロラ皇女はそう叫ぶと、部屋から出て行った。

「母上、先ほどアウロラが離婚に承諾しました。」
「そう。アンジェリカ、余り気を落とさないでね。人生色々とあるものなのだから。」
「そうですね。親不孝な息子ですいません。」

そっとミズキの手を握りながら、アンジェリカは溜息を吐いた。

皇太子夫妻のスピード離婚は、世界中のマスコミに瞬く間に報じられ、アウロラ皇女はスウェーデンへと帰っていった。

数ヵ月後、皇帝一家はマヨルカ島の別荘へと向かった。

「お兄様、どうぞ。」
「ありがとう。」
プールサイドで、一泳ぎして疲れてベンチに横たわっているアンジェリカに、キンバリーがジュースを差し出した。
「それにしても、大変だったわね。」
「ああ。やっぱり結婚するのはまだ早すぎたみたいだ。もうあの悪夢のような結婚生活の日々がトラウマになって一生独身でいたいって気がしてくるよ。」
「いいんじゃない。お兄様が結婚しないのなら、わたしがいい方を見つけないと!」
そう言うとキンバリーはおもむろに立ち上がり、プールサイドからビーチへと出て行った。
「あの子は相変わらず元気ねぇ。」
「そうだな。ミズキ、体調の方はどうだ?」
「もう大丈夫よ。それよりもいつまでここに居るつもりなの?来月はローゼンシュルツ皇太子夫妻がいらっしゃるんだから、失礼のないように準備をしておかないと。」
「そうだな。まぁ、あと二週間くらいはここに居ようか?」
「そうね。」

二週間後、スペインから帰国した皇帝一家は、小麦色に日焼けした肌でローゼンシュルツ王国皇太子夫妻を迎えた。

「ようこそいらっしゃいました。この度はご成婚、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。アンジェリカ、紹介するよ。妻のアイコだ。」
「初めまして・・」

少し恥ずかしそうに挨拶する親友の妻が、アンジェリカは初々しく見えた。

「幸せにしろよ、彼女を。」
「ああ、そうするよ。」
「さてと、久しぶりに会ったんだから、積もる話は明日にしようか?」
「そうだな。」

アンジェリカとガブリエルが二人仲良く並びながらホーフブルクへと入っていくのを見たガブリエルの妻・アイコは、不安そうな顔をしながら彼らの後をついていった。

(終)

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最終更新日  2016.05.08 21:23:45
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「母上、僕はもうアウロラと別れることにするよ。」
「それは、本気なの?」

アウロラ皇女が実家へと帰った日の夜、ミズキは息子の口から初めて彼がアウロラ皇女と離婚することを聞いた。

「ああ。もう彼女とはやっていけない。今まで彼女と夫婦として分かり合おうと、歩み寄ろうとして努力しましたが、無理でした。」
「そう・・アウロラには伝えたの?」
「彼女が帰ってきてから言おうと思う。」
「そう。わたしはあなたが決めたのなら、何も言わないわ。これをお飲みなさい。」
ミズキはそう言うと、アンジェリカのカップにカモミールティーを淹れた。
「結婚してまだ数ヶ月も経っていないのに、離婚か・・」
「余り気に病まないほうがいいわ。それよりもあなた、これからどうするの?」
「さぁね・・ちょっと疲れているから、暫くゆっくりしようかな。」
「そうしなさい。」

アンジェリカはアウロラ皇女がスウェーデンに帰っている間、地中海のリゾート地で静養に入ることになった。

そのことを何処からか聞きつけたのか、マスコミが彼を槍玉に挙げ、“自己中心的な甘えん坊王子”というレッテルを貼り始めた。
それは、嫁ぎ先で精神的虐待を受けたというアウロラ皇女の訴えを鵜呑みにした彼女の父である国王・アレクセイ7世が原因だった。
彼はアウロラ皇女を三人の娘の中で最も溺愛しており、その所為でアウロラ皇女は我が儘で傲慢な女性になってしまった。
嫁ぎ先で精神的虐待を受けたというのはアウロラ皇女が吐いた嘘で、彼女はミズキ皇后を徹底的に陥れて苦しめてやりたいという思いからだった。
彼女の目論見は着々と進み、マスコミやネット上ではついこの間までミズキ皇后とアンジェリカを擁護する声が多かったのが、今やアウロラ皇女擁護派が彼らを糾弾する立場に回っていた。

“ハプスブルク帝国皇后は、傲慢な女だ。”
“息子を一人しか産んでいない癖に、偉そうな態度をしている。”
“何故爵位を持たぬ女のいう事を陛下は聞くのか。”

ネットユーザー達は、ミズキが民間出身の妃であること、アウロラ皇女を精神的に虐待したこと、そして息子の為に地中海のリゾート地に別荘を国民の血税で建設したことを槍玉に挙げ、彼女をバッシングした。
ミズキは誹謗中傷の書き込みが毎日絶えず、それに耐え切れずにフェイスブックを退会することとなった。
ストレスの所為で不眠症となり、公務を終えた後ミズキは誰とも話さずに自室に籠もる事が多くなった。
そんなある日の朝、ミズキが朝食の時間となってもなかなかダイニングに姿を見せないことを不審に思った女官が彼女の部屋に入ると、浴室の床で手首を切って倒れている彼女の姿を見つけた。

「ミズキ、こんなにやつれて・・」
「皇后様は、不眠症となられて睡眠導入剤なしには眠れない夜を最近過ごされていたようです。」
「そうか。」

搬送された病院で、ミズキは一命を取り留めたが、精神的ストレスと過労の所為で暫く入院することとなった。

「皇太子様には?」
「わたしから連絡する。」

スペイン・マヨルカ島で静養していたアンジェリカは、母がストレスで入院したという知らせを受け、休暇を切り上げてウィーンへと戻った。

「母上、すいません。僕の所為で、こんなことに。」
「いいのよ、わたしのことは心配しないで。」

ミズキは弱々しく微笑みながらアンジェリカの手を握った。

「アウロラ、話がある。」
「お話って何かしら?」

ミズキが入院した翌日、アウロラ皇女がスウェーデンから戻ってきたので、アンジェリカは彼女を自室へと連れて行き、離婚することを切り出した。

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最終更新日  2016.05.08 21:23:31
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「お前、最近アウロラとは上手くやっているのか?」
「・・正直、わからないよ。」

皇后・ミズキが体調不良のため公務を休むと伝えられたその日の夜、ルドルフは自室にアンジェリカを呼び出した。

「ミズキとアウロラは、育った環境も価値観も違う。だがあいつはアウロラに歩み寄る努力をしようとしていた。」
「母上がアウロラと仲良くしようと思って、乗馬やお茶会に誘っていることは知ってたよ。でもアウロラは何か口実を作っては会おうとしないんだよ。あの音楽祭のことをいまだに根に持ってるんだ。」
「もう過ぎたことだし、キンバリーも謝罪したんだろう?」
ルドルフは数ヶ月前の出来事をいまだにアウロラが根に持っていることを知り、唖然とした。
「あいつは、まだ許していないんだよ。プライドが高いし、常に自分が一番ではないと気が済まないタイプなんだ。」
「困ったものだな。」
「もう限界だよ。やっぱり結婚するのは早すぎたかな。」
アンジェリカは溜息を吐きながら、すっかり冷めてしまったコーヒーを飲んだ。
「そんなに悩むことはない。一度話し合ってみたらどうだ?」
「そうするよ。」
ルドルフのアドバイスどおり、アンジェリカはアウロラ皇女を遠乗りに誘った。
「なぁ、どうして母上と仲良くしてくれないんだ?」
「だってあの人、お高くとまっているんだもの。」
「母上はお高くとまってなんかいないよ。君の思い違いじゃないのか?」
「まるでわたしが悪いって言いたいの!?」
アウロラ皇女が苛立ったかのように乗馬用の鞭で地面を叩いたのを見たアンジェリカは、また彼女の癇癪玉が破裂するのではないのかとビクビクしていた。
「そんな風には言っていない・・」
「あなたにはわからないでしょうけど、わたしは孤独なの!それをわかってくれないと・・」
「どうすればいいんだ!?一方的にそんなことを言うだけで、僕がわかるとでも!?」
「だってあなた、いつもわたしのメールに返信してくれないし、電話もしてくれないじゃない!」
「そんなことを言っても、電話に出られないときがあるんだから、仕方がないだろ?」
「それが嫌なのよ、あなたのそういう所が!」
冷静な話し合いの場を設けようとしたアンジェリカであったが、アウロラ皇女の棘のある言葉に、ついついきつい言葉で言い返してしまう。
「一体何なんだ、君は!いつも自分中心で世界が回らないと気が済まないのか!?いつも何かと言えば“誰々の所為”・・もううんざりだ!」

アンジェリカは生まれて初めて感情を爆発させると、アウロラ皇女をその場に残して去っていった。

「どうだったんだ、アンジェリカ?その様子だと、上手くいかなかったようだな。」
「父上、もう彼女とはやっていけません。幸い子どもが居ないし、離婚に向けて準備をしようと思っています。」
「早まるな、冷静になって考えて・・」
「考えた末に出した結論です。お願いですから、僕達夫婦の問題に口出ししないでいただきたい。」

ルドルフにつかまれた腕を振り払うと、アンジェリカは憤然とした様子で厩から出て行った。

「・・全く、あいつもアウロラの毒に当てられてしまった・・独身のときは、あんな風じゃなかったのに。」

ルドルフが溜息を吐きながら愛馬に鞍を付けようとしたとき、雨が降り始めた。
遠乗りをやめた彼が執務室で残った書類仕事を片付けていると、突然事務机に取り付けられていた電話がけたたましく鳴った。

「もしもし・・」
『ルドルフ陛下、娘を実家に戻すとはどういうつもりだね!』

受話器越しに聞こえてきたのは、アウロラの父であるスウェーデン国王・アレクセイ7世の怒鳴り声だった。

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最終更新日  2016.05.08 21:23:08
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ミズキ皇后とエリザベート皇太后とのやり取りを目撃していた女官がその会話の内容をフェイスブックに書き込んだことにより、アウロラ皇太子妃へのバッシングはますます高まっていった。

“皇太子妃はスウェーデン皇女時代に国民の血税で豪華なクルーザーを購入した。”
“コペンハーゲン市内のナイトクラブで何度か乱闘騒ぎを起こした。”
“ベルギーの学生時代、その傲慢さでルームメイトたちと何度か衝突した。”

世界中のネットユーザー達は、アウロラ皇女の過去の悪行をネット上で暴露し始めた。
その所為で、アウロラ皇女は毎日ヒステリーを起こすようになり、そのストレスのはけ口は全てアンジェリカに向けられた。
「あなた、どうして反論しないのよ!」
「そんなこと言われても、僕にはどうすることもできないよ。それに、こんなことで目くじら立てなくてもいいだろう?愉快犯も居るんだから。」
「何よそれ、またわたしが悪いって言いたいわけぇ!?」
アウロラ皇女は癇癪を起こし、傍にあった置時計をアンジェリカへと投げた。
「皇太子様、大丈夫ですか?」
皇太子妃の部屋から、頭から血を流して出てきたアンジェリカを見て、皇太子妃付の女官達は顔面蒼白になりながら彼に駆け寄った。
「大丈夫だよ、それよりもアウロラを落ち着かせてあげて。」
「わかりました・・」
一体部屋の中で何があったのだろうと女官達は勘繰りながらも、アウロラの部屋へと入った。
するとそこは、まるで猛獣が暴れまわったかのように家具や調度品が破壊されていた。
「皇太子妃様、落ち着いてくださいませ。」
「うるさい、あんた達に何がわかるっていうのよ!」
アウロラは癇癪を起こし、女官たちにも当り散らしていた。
「全く、一体どうしてしまったのかしら?」
「ええ。スウェーデンに居る頃はあんなにおかしくはなかったのに。」
「ええ・・やっぱり、キンバリー様やミズキ様に苛められたから、おかしくなられたのかしら?」
「きっとそうよ!皇后様は何かと威張っておいでじゃないの。キンバリー様はことあるごとにアウロラ様の悪口をネットに書き込んだり、女官達に吹き込んだりしているし!」
「わたし達に対して失礼な態度を取っておられるわ!この間、音楽会で言われたこと、まだ覚えているわ!」
「アウロラ様がお可哀想よ!」
アウロラ付の女官達は、嫁ぎ先で冷遇されている主の身を嘆くと同時に、彼女を苛めている姑と小姑に対して敵意を募らせていった。
「皇后様、そろそろ朝食のお時間でございます。」
「ごめんなさい・・今日は頭痛がしてベッドから起き上がれないの。」
「まぁ、それは大変ですね。侍医をお呼び致しませんと。」
「心配要らないわ。少し横になれば治まるから。」

ミズキはそう言うと、ベッドから弱々しく起き上がってルドルフに心配要らないと伝えてくれと女官に命じた。

「そうか、ミズキが・・」
「先ほど様子を拝見いたしましたら、かなりお辛いご様子で・・」
「侍医を呼べ、今すぐに。」

大した事ではないと侍医の診察を最初は拒んだミズキだったが、夫であるルドルフの狼狽ぶりを心配して渋々侍医の診察を受けた。

「脳に異常はありません。どうやら心因性のもののようです。」
「いつ治るんだ?」
「それはわかりかねます。」

言葉を濁す侍医の顔を見て、ルドルフは嫁姑問題が妻の頭痛の原因だと少し勘付いていた。

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最終更新日  2016.05.08 21:22:41
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宮廷内のアウロラ皇女への批判が日に日に高まりつつある中、ハンガリーからエリザベート皇太后がホーフブルクへとやって来た。

豊かで艶やかな黒髪は若干白髪が混じり、女神を思わせるかのような神々しく美しい彼女の目尻には幾筋もの皺があったが、欧州随一と謳われたその美貌は、傘寿を超えても衰えてはいなかった。

「お久しぶりね、ミズキ。アンジェリカの結婚式にこれなくてごめんなさい。」
「いいえ、お気になさらず。お義母(かあ)様もお元気で。」
「毎日のウォーキングと乗馬のお陰で、まだ元気に世界中を駆け回っていられるわ。そちらが、アンジェリカのお嫁さんとなられた方?」
エリザベート皇太后の目が、ミズキからアウロラ皇女へと移った。
「お初にお目にかかります、お義祖母(ばあ)様。」
アウロラ皇女の挨拶に、エリザベートの眦が少しつりあがったのを隣で見たキンバリーは、彼女がとんでもない過ちを犯したことに気づいた。
エリザベートは年老いた己の姿を嫌い、周囲には自分のことを“お祖母様”ではなく名前で呼んで欲しいと言っていた。
ルドルフやアンジェリカ、キンバリーは彼女と会うときは、“エリザベート様”と必ず呼ぶことにしているのだが、新参者であるアウロラ皇女はそのことを全く知らないらしい。
気まずい空気が流れる中、最初に口火を切ったのはキンバリーだった。
「今年のクリスマスは、みんなでゲデレーに行こうって話していたのよ。そうよね、お兄様?」
「あ、ああ。何て言ったって、初めてアウロラが家族の一員となって過ごすクリスマスだもんな?」
アンジェリカはそう言ってアウロラ皇女を見たが、彼女は夫の言葉に相槌を打たずに、エリザベートのことを真っ直ぐに見ながら言った。
「お義祖母様はマディラ島に素敵な別荘をお持ちだとか。是非行ってみたいものですわ。」
「まぁ・・」
「あと、ハンガリー産の馬も。最近では名誉あるレースで優勝した馬はみんな、お義祖母様が所有されていらっしゃるサラブレッドばかりなんですって?」
アウロラ皇女の嫌味とも取れる発言に、エリザベートの美しい顔が徐々に怒りで強張ってゆく。
「ミズキ、久しぶりにあなたのピアノを聞きたいわ。」
エリザベートはアウロラ皇女の話を途中で遮り、彼女の顔を見ようともせずにミズキにその顔を向けた。
「ええ。何をお聞きになりたいのですか?」
「そうねぇ・・リストがいいわ。」
「わかりましたわ。」
ミズキはエリザベートとともにダイニング・ルームを後にすると、ルドルフとキンバリーも彼女達に続いた。
「ねぇ、一体わたしの何がいけなかったの?」
「アウロラ、エリザベート様はご自分のことを名前で呼んで欲しいんだよ。それに、皇后時代にされたことを、何もあそこまで論(あげつら)うことはないだろう?」
「何よ、それ!まるでわたしが悪いみたいに言うのね!あなた、そんな事一言も教えてくれなかったじゃない!」
確かにアンジェリカは、妻に祖母のことを事前に教えていなかった。
ただ、彼女にそういった家庭内のルールを教えようとしたのだが、そうする前に彼女は大声で喚き始めた。
「この間の音楽会でも、思い切り恥をかかされたわ!それに、あの人、自分の娘がわたしに嫌味を言っているっていうのに、止めもしなかったわ!」
「それは誤解じゃないのか?」
「わたしにはそう見えたのよ!あなたは家族のことを悪く言いたくないんでしょうけど!」

彼女と会話しているうちに、アンジェリカは偏頭痛がしてきた。

「あの子、一目見たとき何処かで会ったかしらと思ったのだけれど、顔すら違えども、あの性格はシャルロッテそっくりね。」

帰り際、エリザベートはアウロラ皇女への嫌悪を生前険悪であった義妹の名を出してそうミズキに漏らしたことを、傍に居た女官が聞き、彼女はすぐさまそれを自分のフェイスブックのページに書き込んだ。

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最終更新日  2016.05.08 21:22:30
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スウェーデンからアウロラ皇女が輿入れしてから数日後、キンバリー皇女は彼女の元を訪れた。

「暫くお待ちくださいませ。」
「あなた、ここはウィーン宮廷ですよ?あなたのご主人様は、まだご自分のことをお客様と思っていらっしゃるのかしら?」
暫く別室で待機するようにアウロラ付の女官から言われたキンバリーが刺々しい言葉でそう返すと、彼女は気色ばんだ後彼女を主の部屋へと通した。
「何かしら?まだ着替えを済ませていないのに、ノックもしないなんて。」
そう言って鏡の前に立っていたアウロラ皇女は、ブスッとした顔をしてキンバリーを見た。
「あら、ノックはしましたわ。それよりもお義姉(ねえ)様にお知らせしたいことがございましてね。」
「何かしら?」
「今度の日曜の正午、音楽会がありますの。もしよければお義姉様もいらして。少しは気晴らしになるといいのだけれど。」
キンバリーは少し含みのある笑みを浮かべると、アウロラ皇女の部屋から辞した。
「アウロラ様、如何なさいますか?」
「別にいいんじゃない、行っても。気晴らしになるだろうし。」
アウロラ皇女はキンバリーの言葉を好意として受け取り、音楽会に出席することになった。
「お母様。」
「あらキンバリー、どうしたのこんな時間まで夜更かしして?」
「音楽会に向けての練習をしていたのよ。ああ、あの人も招待したわ。」
「あなた、一体何を企んでいるの?」
ミズキがそう言ってキンバリーを見ると、彼女は嬉しそうに笑った。

「何も企んでいないわよ、お母様。気にし過ぎよ。」

音楽会当日、会場となる音楽室にはミズキとキンバリー皇女、彼女達付の女官達や懇意にしている貴族の婦人達で賑わっていた。

「キンバリー様、素晴らしい演奏でしたわ。」
「ありがとう、皆さん。あら、お義姉様の演奏がまだでしたわね?」
完璧なショパンのエチュードを披露したキンバリーは、そう言って意地の悪い笑みをアウロラ皇女に向けた。
「何を言っているの?」
「あら、ここでは皆さんの演奏を聞くのが目的の“音楽会”なのよ。」
「そんなこと、何も聞いていないわ!」
「さてと、自己紹介代わりに何か弾いてくださる、お義姉様?」
アウロラ皇女の言葉を途中で遮って、キンバリーはそう言って彼女を見た。
「よくもわたしに恥をかかせたわね、覚えていなさい!」
悔しそうに唇を噛み締めたアウロラ皇女は、キンバリー達に背を向けて音楽室から出て行った。
「キンバリー、あれは余りにも酷いんじゃなくて?」
「あらお母様、わたしちゃんと伝えましたわよ?ねぇ?」
「ええ、ちゃんとキンバリー様は皇太子妃様にお伝えいたしましたとも。」
「それにしてもスウェーデン皇女というお方が、ピアノもお弾きになれないなんて・・」
「あの方は、じっとピアノの前に座るよりも、ナイトクラブで踊るのがお好きなのよ、きっと。」
「そうでしょうねぇ・・」

まるで漣(さざなみ)の様に、意地の悪い笑い声が音楽室に広がった。

ウィーン宮廷に蔓延(はびこ)っている密かな悪意を目の当たりにし、ミズキは嫌な予感がした。
その予感は的中し、やがてアウロラ皇女を面と向かって批判する女官たちが日を追うごとに増えていった。

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最終更新日  2016.05.08 21:22:17
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食事会では終始アウロラ皇女は未来の姑であるミズキを完全に無視し、アンジェリカとルドルフ、そして自分の両親にだけ笑顔を向けていた。

「何ですか、あの態度は?仮にも未来の姑でいらっしゃる皇后様に対して無視とは・・」
「それを諌めようとしない国王夫妻の無礼さには怒りを通り越して呆れましたわ。アンジェリカ様がお選びになられた方とはいえ、あんなに非常識な方だとは・・」
食事会でのアウロラ皇女の非常識な振る舞いは女官たちの間にたちまち知られることとなり、彼女達は暇さえあればアウロラ皇女の陰口ばかり叩いていた。
「そこで何をしているの?」
「こ、皇后様・・」
「口を動かすよりも、手を動かしなさい。まだあなた方には沢山仕事が残っている筈よ。」
ミズキがぴしゃりと女官たちにそう言うと、彼女達はあたふたと自分達の持ち場へと戻っていった。
「お母様、どうかなさったの?」
「なんでもないのよ、キンバリー。」
「またあの人達、アウロラ皇女のことを話していたんだわ。まぁ、あんな非常識な振る舞いをあの人達が見逃すわけないもの、当然よね。」
母親譲りの黒髪の巻き毛を揺らしながら、キンバリーはそう言って笑った。
「止しなさい、あなたまでそんなことを言うのは。」
「そうだけど・・わたし、あの人余り好きになれないわ。何だか、下品な感じがする。女の勘でわかるの、あの人とお兄様は長くはいかないって。」
「キンバリー、言葉を慎みなさい。」
キンバリーをミズキがたしなめていると、向こうからアウロラ皇女がやって来た。
「あら、アウロラ様、御機嫌よう。」
キンバリーが精一杯の作り笑いをアウロラ皇女に浮かべたが、彼女は憮然とした表情を浮かべて去っていった。
「なぁにあの態度、嫌な人。」
結婚式を迎え、新郎の親族としてアウグスティーナ教会の祭壇で永遠の誓いを交わすのを見ていたミズキは、キンバリーの不吉な予言を思い出した。
アンジェリカの隣に立ち、豪奢な花嫁衣裳を纏っているアウロラは、輝くばかりに美しかったが、外見の美しさだけではハプスブルク帝国の皇太子妃が務まらないことを、ミズキは長年の宮廷生活で知っていた。
「母上、これから宜しくお願いいたします。」
「ええ。よろしくね、アウロラさん。」
「ええ、宜しく。」
アウロラは渋々ミズキに握手すると、まるで汚らわしい物にでも触れたかのように、パッとその手を離した。
「気にすることはない、行こう。」
「ええ・・」

夫に支えられながら劇場へと入っていくミズキの顔は、蒼褪めていた。

ミズキはアウロラ皇女のことを快く思っていなかったが、アンジェリカと結婚し彼女がハプスブルク家の一員となってから、その思いはますます強くなっていった。
「まだなのか、アウロラは?」
「ええ、何でも皇太子妃様は貧血がおありとかで・・朝食は部屋でお取りになるとおっしゃられて・・」
「まぁ、何様のつもりなのかしら?あの方、ご自分はまだここでお客様扱いされると勘違いされていらっしゃるようね。」
宮廷のしきたりを無視したアウロラの行動に、キンバリーが憤った。
「キム、止めろ。彼女はまだここでの生活に慣れていないんだよ。優しく見守ってやってくれ。」
「お兄様がそうおっしゃるのなら、今回だけそう致しますわ。でも、次はありませんからね。」

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最終更新日  2016.05.08 21:22:06
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「母さん、今まで俺のこと育ててくれてありがとう。」
「あら、何言ってるの。あなたが決めた相手と幸せな結婚をしてくれたんだもの。それだけで充分親孝行しているわよ、あなたは。」

ハプスブルク帝国皇后・ミズキは、息子・アンジェリカの人生最良の日に立ち会う日を迎えた。

北陸地方の資産家の令嬢として育ち、大学進学を機に上京。
そしてハプスブルク帝国皇太子・ルドルフと合コンで知り合い、紆余曲折の末に結婚。
一男一女に恵まれ、これまで順風満帆な生活を送っていた。
目に入れても痛くないほど溺愛する息子・アンジェリカの結婚が決まってからは。
「結婚ですか?アンジェリカが?」
「ああ。何でもこの前のポロクラブの慈善試合で知り合った、アウロラ皇女と親しくなったようだ。」
「アウロラ皇女って・・確かスウェーデンの?」
ミズキはそう言うと、アウロラ皇女の名を聞いた途端眉をしかめた。
というのも、アウロラ皇女の評判が少し芳しくないというのを聞いたからだ。

ミズキは数日前、彼女に対する週刊誌の記事をたまたま目にしてしまった。

“アウロラ皇女、飲酒運転で起訴”
“スウェーデン国王夫妻、娘の事故について一切語らず。”

センセーショナルな見出しの上には、クラブで缶ビール片手に踊るアウロラ皇女の写真が載っていた。
チューブトップにホットパンツを纏い、9センチのピンヒールでブロンドの巻き毛と乳房を揺らしている彼女を、何故かミズキは良い印象を持っていなかった。
こんな女と結婚だなんて、アンジェリカは一体何を考えているのだろう?
「どうした、ミズキ?」
「いいえ、何でもありませんわ。」
すぐさまミズキはあの週刊誌の写真を頭の隅へと追いやり、息子の結婚を心から祝福しようと思った。
「それで?アンジェリカはいつ結婚式を挙げるって?」
「三ヵ月後だそうだ。色々と準備しなければならないことが多いからな。」
「そうですの。楽しみですわね。」
心にもないことを言ってしまったーミズキはそう思いながらも、少し憂鬱な気持ちになった。
アンジェリカとアウロラ皇女の婚約発表がホーフブルクで世界中に生中継された二週間後、アウロラ皇女とミズキは初めて両家の食事会で顔を合わせた。
「初めまして、ミズキ様。お目にかかれて光栄ですわ。」
「あら、わたくしもよ。これからは仲良くしましょうね。」
ミズキはにっこりとアウロラに微笑み、彼女と握手をしようと右手を差し出したが、アウロラはミズキにニコリともせず、彼女の脇を通り過ぎて両親の元へと駆け寄っていってしまった。
「きっと緊張しているんだよ、気にしない方がいい。」
「ええ、そうね・・」
険悪なムードが少し漂い出したことを察したルドルフは、そう言って妻を励ましたが、彼女の聖母のような笑顔は少し引き攣(つ)っていた。

(やっぱり、あの子とは仲良くなれそうにはないわ・・)

隣に立っている夫には聞こえぬよう、ミズキは小さい溜息を吐いた。

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最終更新日  2016.05.08 21:21:53
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2012.03.20
2012年12月24日、ウィーン。

ホーフブルクでは皇帝と皇太子夫妻主催のクリスマスパーティーが開かれ、そこには珍しくエリザベート皇妃の姿もあった。

「まぁアンジェリカ、会わない内に大きくなったこと。」
エリザベートは初孫のアンジェリカの姿を見ると、彼を抱き上げた。
アンジェリカは最初祖母の顔を見てキョトンとしていたが、キャッキャッと彼女の腕の中で笑い始めた。
「ミズキ、わたくしの代わりに公務をして下さってありがとう。いつも済まないわね。」
「いいえ、皇妃様。ギリシャへのご旅行はいかがでしたか?」
「素晴らしいところだったわ。あなた達も一度いらして、ケルキラ島に別荘を買ったのよ。」
「ええ、機会があれば伺いますわ。」
嫁と姑の間に流れる和気藹藹とした空気に、周囲の宮廷人達は少し訝しがりながらも、2人は上手くやっていると認めた。
「皇妃様、お誕生日おめでとうございます。これは、わたくしからのささやかなプレゼントですわ。」
瑞姫はそう言うと、真紅の包装紙にラッピングされた小箱をエリザベートに手渡した。
「あら、何かしら?」
エリザベートがそっと白いリボンを解き、小箱の蓋を開けると、そこにはハート形をしたビーズ細工のバレッタがあった。
「まぁ、可愛らしいこと。あなたが作ったの?」
「ええ。皇妃様は宝石がお好きですから、ルビーと翡翠で作ろうと思ったのですが、材料費が高くて・・安っぽいもので、申し訳ありません。」
「何を言うの、ミズキ。わたくしの為に作ってくださったあなたの心を、このバレッタとともに頂くわね。」
エリザベートはそう言うと瑞姫を抱き締め、艶やかな黒髪にバレッタを留めた。
「どう、似合うかしら?」
「ええ、良くお似合いですわ。」
「ありがとう。大切にするわね。」
エリザベートと瑞姫が微笑み合っているのを見ながら、ルドルフはシャンパンを飲んだ。
「少し暑いですね。」
ドレスの衣擦れが聞こえたかと思うと、いつの間にかセーラ皇太子がルドルフの隣に立っていた。
「セーラ様、ご懐妊おめでとうございます。経過は順調ですか?」
「ええ。つわりが漸く治まりましてね。」
セーラ皇太子はそう言うと、少し丸みを帯び始めた下腹を擦った。
「リヒャルト殿はどちらに?」
「彼なら皇帝陛下と話しております。恐らく子どもについて色々と相談しているのでしょうね。ルドルフ様、彼は良い父親になるでしょうね。」
「ええ。それよりも子どもが産まれたら色々と大変ですから、今の内に夫婦として話し合った方がいい。」
「解りました。」
「おやおや、仲がおよろしいようで。」
瑞姫が扇子を片手に携えながらルドルフ達の元へとやって来た。
「セーラ様、予定日はいつですの?」
「来年の6月です。ミズキ様は?」
「わたくしはまだ・・でもアンジェリカが幼稚園の年長さんになったら考えますわ。」
「そうでしたか。ミズキ様、色々とお話を聞かせて下さいません?」
「ええ、勿論ですわ。」
女達は笑いさざめきながら、バルコニーの近くにある長椅子へと向かい、腰を下ろした。
「ルドルフ様。」
「シリル、来ていたのか。」
「ええ。それよりもルドルフ様、今年は賑やかなクリスマスですね。」
「ああ・・」
ルドルフはそう言うと、両親に抱かれている息子の笑顔や、セーラと瑞姫の笑顔を見た。
今年は最高のクリスマスだ―ルドルフはそう思うと、ゆっくりと妻達の方へと歩き出した。


―FIN―






最終更新日  2016.05.08 21:10:47
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瑞姫は封筒の蜜蝋をペーパーナイフで切り、セーラからの手紙を読み始めた。

“ミズキ様、お元気ですか?
本当は直接お会いして報告したかったのですが、時間が無いのでお手紙でご報告させていただきます。
ウィーンを発った後、体調を崩してしまい、ストレスの所為かと思っておりましたが、医師の診察を受けて妊娠8週目だということが判りました。
丁度リヒャルトとは、子どもがこのまま出来ないのなら夫婦2人だけの生活を楽しもうと話し合っていた矢先の事で、彼に妊娠を告げると狂喜乱舞致しました。
来年は3人でウィーンを訪問したいと思いますので、その時は宜しくお願い致しますね。

―あなたの愛しい友、セーラより“

ゾフィーの件もあって、ストレスが溜まっていた瑞姫であったが、セーラ皇太子からの手紙を読み終わった彼女は、久しぶりの笑顔を浮かべた。
「どうしたんだい、ミズキ? 何やら嬉しそうじゃないか?」
「ええ。セーラ皇太子様からお手紙が届いてね。妊娠したんですって。」
「そうか。」
ルドルフはそう言って破顔すると、瑞姫を抱き上げた。
「きゃぁ!」
「そろそろ2人目を作ろうか、ミズキ?」
「そんな・・早いですよ。まだアンジェリカは1歳にもなってないのに。今は避妊してくださるから・・」
「言っただろう、君とは子どもを何人でも作りたいって。時期が早いとか遅いとか、そういう事を気にしているとストレスが溜まってしまうよ?」
ルドルフは瑞姫にキスしながら、彼女の身体をまさぐった。
「もう・・駄目ですよ。」
「いいじゃないか、減るもんじゃないし。」
ルドルフと瑞姫がいちゃついていると、アンジェリカを抱いた乳母が部屋に入って来た。
「どうしたの?」
「あの、アンジェリカ様が最近、つかまり立ちをなさいました。その事をご報告に上がりました。」
「まぁ、わざわざありがとう。アンジェリカ、おいで。」
瑞姫が乳母からアンジェリカを抱こうとすると、彼は手足をバタつかせながら暴れ始めた。
「もしかして、歩きたいのかしら?」
乳母がゆっくりとアンジェリカを床に座らせると、彼はゆっくりと立ち上がり、覚束ない足取りながらも瑞姫の元へと歩いて来た。
「良くできたわね、アンジェリカ。偉いわね。」
瑞姫がそう言って息子の髪を撫でると、彼は笑顔を浮かべた。
「これから大変な時期だな。子どもは好奇心の塊だからね。」
ルドルフはアンジェリカと瑞姫の様子を微笑ましく見ながら、そう言ってアンジェリカを抱き締めた。
「明日、アンジェリカの靴を選びに行こう。子どもの成長は早いから、オーダーメイドの靴にしよう。」
「ええ。でも既製品でもわたしは充分だと思っています。これから色々とお金がかかるのに、靴でお金を掛けるのは・・」
「何を言ってるんだい。子どもにかけるお金の事は、君が心配しなくていいほど沢山あるんだから。」
「ええ・・」
翌日、瑞姫とルドルフはアンジェリカの靴を選ぶ為に、靴屋へと向かった。
足のサイズを測る際、アンジェリカはじっとしていられず、ルドルフが何とか宥めて落ち着かせた。
「靴を仕立てるのにも一苦労だね。」
「ええ、そうですね。」
疲労困憊しながら靴屋から出てきた瑞姫とルドルフは、溜息を吐きながらルドルフに抱かれながら眠っているアンジェリカを見た。
「もうすぐこの子は1歳になるのか。長いようで短かったな。」
「ええ。あっという間の1年でしたね。」
「まぁ、アンジェリカの誕生日の前に、クリスマスパーティーが待っているな。」

皇太子夫妻は、クリスマスのイルミネーションに彩られたウィーンの街を歩きながら、幸せな気分に浸っていた。






最終更新日  2016.05.08 21:10:37
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