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「な、何だろう・・この音・・・・」
「さ、さぁ・・とりあえず、嫌な予感しかしねぇのは確かだな」 「私には岩がこっちに向かって転がってる音のように聞こえますが・・気のせいですよね」 「あ、あまり見たいとは思いませんけど、一応確認してみませんこと・・」 皆で一斉に音のする方へ振り向いてみると・・大きな岩が、インディー○○ーズばりに私達の方に向かって転がってきてたよ…… 「わ!?わ、わ、わ、わぁあああ!!岩、岩だよぉお!!」 「セ、セラ!!わ、わかってます!!それは分かってます!!」 「げげっ・・ど、どうすんだよこれ!流石に、その場に止まってる岩ならまだしも、転がってる岩を受け止めて壊すなんて芸当は私には出来ねぇぞ」 「に、逃げますわよぉおおお!」 私達は急いでその場から逃げるように走りだしたんだけど・・ 「うわ!行き止まりだよぉ」 「おい、こっちに抜け道があんぜ」 クレッシルの方を見ると、そこにはどこか別の場所につながってるように見える横穴。私達は急いでそこの中に入って岩が通り過ぎるのを見守った。 「ふわぁ・・危なかったぁ・・もう少しでおせんべいになっちゃうところだったねぇ・・」 「うぅ・・矢セトになりそうになったり、おせんべいになりそうだったり・・本当踏んだり蹴ったりですわ・・」 「セラ、アセト。見て下さい。何やら広い場所に出れそうですよ」 ミハイルが奥の方を指差してるから、そっちを見てみると、確かに奥には何か湖のようなものが見えるよ。 私達が通路を通り抜けると、そこは大きな広場があって、その奥には湖、そしてその湖の奥には更に奥へ続くと思われる通路が見えた。 「この湖を渡って奥に行けってことなのかな?」 「多分、そうだと思います」 「でもよ、橋とかも見当たんねぇぜ?」 「何かあるかもしれませんわね・・少し調べてみませんこと?」 皆で何かないかキョロキョロと辺りを見回して見たんだけど、隅の方に立て看板みたいなのを見付けたから、皆でそれを見てみる事にした。 「何だろ?これ」 「何か書いてありますね」 天を仰ぎその先に見ゆる目を隠せ。さすれば道は開かれん 立て看板にはそれだけが書かれていた。 「何のことだろ?天を仰ぎって上を見ろってことなのかな?」 私達が上を見てみると、天井には楕円形の穴が並ぶように二つぽっかりと空いてる。 「あの穴をふさげば奥に行けるんでしょうか?」 「でもよ、ここまで来るのに、それらしいもの何てなかったぜ?」 私達は近くに何かその穴にピッタリとハマるようなものがないか探して見たんだけど、何も見つからなかったよ・・ 「もしかしたらさ、まだ行ってない場所があったのかな?」 「戻るのも面倒だしよ、泳いでこうぜ」 クレッシルが軽く準備運動をしてから湖に飛び込もうとしたんだけど、その時湖の中で何かがキラッと光ったと思ったら、バシャン!と水しぶきをあげて、大きな魚が飛び跳ねた。 「何だありゃ!?」 「あれは人喰い魚ですね・・しかも、沢山いるみたいですし、これは泳いで渡るのは諦めた方がいいですね」 「あ、あはは・・流石にズルは出来ないよねぇ・・」 諦めて今来た道を戻ろうとしたんだけど・・ 「閃きましたわ!!」 「ん?何を閃いたの?アセト」 「どうせアセトの事です、大したことじゃありませんよ」 「んで、何だってんだ?」 「ふっふっふ、見てればわかりますわ♪」 凄い自信満々にそう言ってから、タリスマンへ両手をかざして魔法の詠唱を始めるアセト。 私達はそんなアセトを、一体何を始めるのか。期待1・不安9の割合で見つめてたんだけど…… 「サンダーボルト!!」 タリスマンの力を借りて、大きな落雷を湖に落としたと思ったらそのまま続けて 「フリーレンヴィント!!」 辺り一帯に凍える程の冷気が発生して、湖の氷を凍らせちゃったよ・・ 「さ、これで通れますわ」 大きな胸をこれ見よがしに張りながら「お~ほっほっほっほ!」って、高笑いを始めたアセト。 だけど、体をのけぞらせ過ぎたのか、そのままアセトは後ろに倒れたよ・・ 顔を真っ赤にさせながら立ち上がって土を払うアセト。そして、何か拍子抜けっていうか、困惑した感じのクレッシル。 「な、なぁ・・こんなんで本当に良いのか?何かズルしたみてぇで気が引けるんだが」 「まぁ、何はともあれこれで通れるんですし、それでよしとしましょう。先に唱えたサンダーボルトの意味が分かりませんけど」 「おほほ、あれで人喰い魚を感電させたのですわ♪湖を凍らせても人喰い魚が氷の中から襲ってきたら嫌ですし」 「すっごぉおい!私、そんなの思いつかなかったよ♪アセトも“たまには”役に立つんだね!」 目をキラキラさせながらアセトを褒めたつもりだったんだけどね・・ 「セラ……何やら一言余計ですわよ・・」 じと~っとした目でアセトに見つめられちゃったよ・・あれ?私、何か言ったかな? 「そうだな、本当アセトはこういうのだけは冴えてるみてぇだな」 「ク、クレッシル・・貴女はわたくしの味方だと思っておりましたのに」 がっくりと肩を落とすアセトをミハイルは無視して凍った湖を渡り始める。 「ほら、いつまでそこにいるんですか。氷が解けきる前に渡りますよ」 湖を渡った私達は更に奥に向かって進んでたんだけど、しばらくするとそこは洞窟の中だというのに、凄く手入れがされた場所に出た。 そして、その場所の奥にはポツンと古びた宝箱が一つだけ無造作に置かれてる。 「ね、ねぇ・・アレって何かな?」 「流石に、こんな場所にさっきみたいなのがあるとは思えませんし・・」 「考えたってしゃあねぇぜ、きっとクリスタルだぜ」 「用心するに越したことはありませんけど、一応確かめてみますわよ」 私達が宝箱の方に近づこうとした時だった。 急に目の前に空間の裂け目っていうのかな?真っ暗な暗闇が現れたと思ったら、そこから全身が黒く、頭を3つ持ち背中に翼を生やした犬が目の前に現れた。 「この先にある宝を盗ろうとする愚かなる人の子よ。よくぞここまでたどり着いた、と褒めて使わそう。だが、ここから先は通さんぞ」 「ちぃ、何だってんだてめぇは!いきなり現れやがってよ」 「ふ、我を知らぬというのか、無知なる人の子よ。我は地獄の番人ケルベロス。この先の宝を欲するのならば、我を見事倒してみせよ」 「くっ・・まさかここでケルベロスに出くわすなんて・・これはかなり厳しい戦いになりそうですね」 「地獄の番人だか番犬だかわかりませんけど、邪魔をするというのならば倒させてもらいますわよ」 ケルベロス、そして皆が戦闘態勢に入り、まさに一触即発という状態。 「わ!わ!?凄い、人語を話す犬なんて初めてみたよ!!ケロちゃん可愛いなぁ♪ね、ね、ミハイル。あの子ペットにしたいよ♪」 緊張感のない私の言葉に、その場にいた全員が前のめりにこけたよ・・・・あれ?私、何か変な事言った? 「じ、地獄の番人たる我をケロちゃんなどと・・・・それに可愛いと、そなたはどんな神経をしておるのだ……」 はぁ・・ってため息をつきながらそう言ってたけど、ケロちゃんのその顔はちょっと赤く照れてるように見える。か、かわいいよぉ♪ 「セラ・・あれのどこが可愛いんですの?どうみても可愛く見えないですわよ?」 「ケルベロスと言えば、畏怖することはあれど・・可愛いと思う人はそうそういないですよ?」 「と・に・か・く!コイツはここの宝を守る番人なんだ、ここは戦って退けるしかねぇんだ!」 「えぇ~・・こんなに可愛いのにぃ?私、ケロちゃんと戦いたくないなぁ」 ケロちゃん含めたその場にいた全員に説得されて、渋々ながら私はヴィーキングソードを手に持ち構えた。 第24話 グリーディの洞窟 その2.終わり その3.へ続く お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年11月07日 01時08分08秒
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