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カテゴリ:作家
あらすじ
悠介は、長野県安曇野の隣、池田町に産まれ、長野高校に進学した。2年の春、写真部の新入生歓迎撮影会で、小平由樹枝に会う。その後、恋人関係になる。3年の夏休み、北海道無銭旅行を遂行。大学の推薦が決まった後、上高地へ出かけ二人は結ばれる。実力試しに受験したW大学に合格するも、M大学に進学する。そして1年が過ぎた。春休み、希望大学に合格した由樹枝が東京に来て、短いが二人の充実した同棲生活を送った。しかし、そのわずか1週間後、矢代美恵子と関係してしまった。 写真はネットより借用 =================================== 「それはそうだろう、同棲を始めてから、まだ2ヶ月半位じゃーないか?」 「そうですが、初めから出て行って欲しいと頼んでいたのです。」 「だって、あの飲み会の帰り、ずいぶん、しつっこく、泊まって行けと言っていたぞ。初めから出て行って欲しいなんておかしいじゃないか!」 「それは、全く覚えていないのですよ。本当に申し訳ないのですが・・・。」 「それが本当としても、同棲を続けていたのでは、信用出来ないな。酔った勢いだけじゃない。」 「それも意志薄弱で申し訳ないとしか言えないのですが、ずるずると引き延ばしてしまったのです。若しかしたら、矢代美恵子さんを好きになるかも知れないと思ったこともありました。ですが、日にちが経てば経つほど、小平由樹枝を好きで、とても別れられないと思うのです。」 「そんな事では、矢代さんも納得しないし、怒ると思うよ。」 「そうなんです。今まで何度話しても堂々巡りで、同じなんです。それで、紹介して貰った北村さんに相談したのです。」 悠介は必死であった。美恵子を説得する自信はない。このままではずるずると同棲して別れられないことになってしまう。何とか、第3者の北村に説得して貰いたい。 「話してみるけど、説得する自信はないな。彼女、寺本を気に入っているんだろう。初めからそんな感じだった。」 「同棲していて申し訳ないのですが、僕は好きだと思った事がないのです。いつも頭にあるのは、小平由樹枝なんです。」 「話してみるけど、単に好きでないから出て行ってくれでは納得しないよな。」 「僕の出来ることは何でもします。」 「何でもって何がある?」 「例えば、引っ越しして貰うアパート代金を支払うとか・・・。」 「そうか、金か。それは良い考えだな。」 「アパート代、1年分位なら、バイトで貯めた金があります。」 「1年分と言うと、10万円位か?」 「その位になると思います。」 「そうか、そうだな、それで話をしてみるか?」 「お願いします。恩に来ます。」 悠介は大学入学以来、土日は休まずバイトを続けて来た。夏休みは毎日である。小遣いらしき支出はない。食事だけである。遊びたいと思った事もないので、辛いとか大変だと感じたこともないが、それほど働いて1年と少々貯めた金が10数万円である。そのほとんどを恵美子へ支払うつもりでいる。それほどまでして恵美子と早く別れ、由樹枝との仲を修復したいのであった。 この出来事の本質は北村と恵美子にあり、彼らの作戦にまんまと嵌まってしまった悠介であるが、そんな作戦とは全く知らない悠介であった。北村と話したその日も、悠介は美恵子と同じ部屋でご飯を食べそしてテレビを見ている。悠介は美恵子に対して申し訳ないと思うが、愛する気持ちになれないのであった。従って、別れるしか道はない。性の面では相性は悪くない。いつも積極的でサービス精神は満点である。その点もあるので出て行って欲しいと強引に言えないのであった。 数日経った日、夕食が終わった後、美恵子から話があると言われた。悠介は、北村から話を聞いた結論であるとピンと来た。 「北村さんから話は聞いたわ。」 「・・・」 「どうしても別れたいの? 私は出来ればこのまま悠介と一緒に暮らしたい。」 「大変申し訳ない。夕食も作ってくれたり、そのほかの面でお大変よくしてくれた。それは間違いない。でも、駄目なんだ。愛する気持ちと違うんだ。自分でも自分自身にうまく説明出来ない。僕は前の彼女が忘れられない。それが愛情だと思う。大変申し訳ないが、別れて欲しい。」 「分かったわ。態度からも私は愛されていないと感じたけど、毎晩、愛してくれたから気持ちも変わって来ていると期待していたの。アパートを探すからそれまで待ってね。1年分のアパート代を払ってくれるって本当?」 「うん、本当です。貯金を見たら、12万円溜まっている。それを全部使って貰って構いません。3ヶ月も一緒に住んで申し訳ないけど、そんな事しか出来ない。」 悠介は必死であった。これで出て行って貰ったら、全てが元通りになる。あの安心した幸せに浸れるのである。由樹枝の事がなかったら、美恵子と暮らしても良いと思うのだが、比較したら、どうしても由樹枝になってしまう。振り返って見れば、悠介がつれない態度であっても、美恵子は怒りもせず、尽くしてくれた。食事も作ってくれたし、性の面でも満足であった。美恵子が理解を示し、アパートが見つかり次第出て行くとなると、名残惜しい気になった。出て行くまでは抱いても良いのだろうと都合よく思った。 =================================== お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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