「グエムル/漢江の怪物」(06韓)
韓国映画に、監督のフィルモクラフィに突然変異的にあらわれた怪獣映画。冒頭から白昼の河原を蹂躙、人々を殺戮する醜い怪物グエムルに唖然。邦画ならウルトラマンや自衛隊、専門家集団、洋画でも軍隊や保安官の出番だが、本作で立ち上がるのは家族の一員を奪われたやや下流の一家で、軍隊などはまるで役立たない。主人公のソン・ガンホは老父と共に河原に売店を出しているが居眠りばかり。釣り銭や客に出すするめの足を着服とやることも情けない。合同葬儀でかつての活動家である大卒フリーター弟に娘を失った責を問われ、低空ドロップキックをかまされ、娘奪回に立ち上がってからもなにかと捕まっている時間の方が長いくらい。家族中、唯一アーチェリーのメダリストと輝かしいジャージ娘ペ・ドゥナも急発進の車に乗り遅れたりと今一つ信頼性に欠ける。そんな彼らが身体を張って怪物に挑む姿からなぜか目が離せなくなる。政府や米国への不信、かつての政治の季節を思わせるデモなどが怪物出現という非日常を機に浮かび上がる様もこの監督ならではの骨太さである。