風が吹けば…
どうして人の心はこうも硝子のように脆(もろ)く傷つきやすいのであろう世のすべての人に鋼(はがね)のような心があれば誰をも傷つけず誰にも傷つけられず平穏無事にことは済む人を傷つけることも人に傷つけられることも知らなかったあの頃誰もが笑顔で自分に何かを語っていたそして自分自身もまた笑顔でそれを聞いていた愛を知り傷つけることと傷つけられることを知った願わくば誰をも傷つけず誰にも傷つけられず平穏に生きて行きたい自分をうまく理解できていないから自分をうまく表現できないから自分をうまく生きていないんだろうか訳もなく悲しくなったり思い出し笑いをしたり1分が1時間に感じられたり10年前を昨日のことと錯覚してしまったり研ぎ澄まされた鋭利な刃物のようにシャープな心を持って一分一秒を真剣に生きていくべきなのだろうけど闇夜にぼんやりと浮かぶ上弦の月を見ていたらそんなことどうでもよくなってきたよ空が曇っていても月は必ず雲の後ろにあっていつも変わらずにその光を放っている風が雲を取っ払ってくれさえすれば月は気持ちよく輝くことができるものそんな風が吹きさえすればいいのに