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カテゴリ:哲学
ある晴れた日に
公園のベンチに腰かけて バドワイザ片手に ハムサンドウィッチをかぶりつく これぞ最高の贅沢 サンドウィッチ目当てに寄ってきた野良犬に 人生について延々と語り続ける ことばは語り手の意志とは裏腹に宙を舞い 野良犬の耳ではなく魂に届く ひょっとしたら この野良犬の前世は自分自身だったのかも知れない そんな風に野良犬を見つめれば 仏教で言うところの「輪廻転生(=Reincarnation)」 を信じてもいいと思う 僕は野良犬にサンドウィッチの中のハムを 一枚くれてやった 野良犬は尻尾を振りながら せわしなくハムを貪り食う 来世の自分自身に感謝の眼差しを向けられて 悪い気はしないものの 妙に変な気分だ ある晴れた日に バドワイザを一気に飲み干す 胃袋の中に宇宙を感じる瞬間 僕はどこにでも行けるし どこにも行かない ハムを食べ終えた野良犬は 行儀よくお座りしながら 自分がバドワイザを飲み干すのをじっと見つめている 午後三時の公園 自分たち以外には誰もいない 静けさの中で僕はバドワイザの空き缶を 片手でグシャリと握りつぶす 野良犬は聞きなれない音に ニタリと笑みを浮かべる 笑みを浮かべたのではなく 笑みを浮かべたように見えたのかも知れない 銀河系の一惑星の中でそこだけ違った時間が流れたように感じた 少なくとも僕にはそう感じられた あるいはそれは何らかのメタファーだったのか… 僕にも野良犬にも、もはや知る由(よし)もない ある晴れた日に 僕の胃袋の中に四次元空間が生じようとしていた 神様にはすべてお見通しだった 起こるべくして起こったことを ただじっとうなずいて見守っているだけ 何の不都合もなく ごく自然に、ごく当たり前に… 野良犬は何度も何度も自分の方を振り返りながら やがて自分の視界から消え去っていった お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.04.04 21:33:46
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