根深誠「求道の越境者 河口慧海」は面白い
今日、根深誠「求道の越境者 河口慧海」(中央公論新社2024年刊)を読み終えました。1900年、ネパールから鎖国しているチベットに潜入した仏教僧河口慧海の越境ルートを探る著者の30年の記録です。慧海の旅行記で不明だったところを日記を探し出して補い、現地を歩いて、日記の描写と照らし合わせたり、地元に伝わる謎の仏教僧の足跡を聞き出したりして、ついにゴップカル・ラ(峠)を越えたことを突き止めます。著者は1947年生まれで、最後の旅は、2022年です。チベット側からの国境付近の調査は、現地公安当局に拒否され、ネパール側からの調査でした。いくら若い頃ヒマラヤ登山隊の一員だったとはいえ高齢での踏破行は、困難を極めたと思います。軽い気持ちでは読めません。著者も実感していますが、秘境と言われていた奥地でも、道が整備され、中国製オートバイが走る時代です。人々の信仰ももっと失われていくでしょう。