経堂界隈

「ヘリコプターが農薬撒くから見に行こうぜ」
爆音とともにヘリコプターが通過、子供たちの誰かが叫ぶと、皆が一斉に爆音のする方向へ走りだした。土曜日の午後、ちょうど小学校からの帰宅時間。
赤堤小学校の北側。四谷軒牧場の東側一帯が散布場所。
僕らが、向かう方向に、小型ヘリコプターが白い煙のようなものを後ろに引きながら、こちらへ飛んできて、そのまま飛び去りました。
子供たちは、またヘリコプターが飛んでくるのを、まだかまだかと待ちましたけれど、ちょうど所定の散布を終えたのでしょう、ついにヘリコプターは現れませんでした。

今思えば、いくら、まだ農地が多い時代とはいえ、ヘリコプターで世田谷区内に農薬散布（或いは、農薬でなく、伝染病の消毒薬のようなものだったかもしれませんが）するなど、考えられないことです。でも、あの頃は、まだ、そういうことが平気で行われましたし、畑へ行けば、お百姓さんは、手押しポンプで、毎日、作物に農薬をやってました。
水俣病の原因が有機水銀にあると、熊本大学などが発表したのは1959年。農薬を薬剤散布していた当時もまだ、チッソは無機水銀が有機水銀に変換される実験結果だけで、水俣病の原因がチッソの工場であるとはいえないと主張していました。
チッソ(当時は新日本窒素肥料）が製造していたのは化学肥料でしたけれど、このあとしばらくが、化学肥料の使用、農薬散布のピークだった時期ではないでしょうか。