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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 2 ~落し物~ 家をでてから、リンはゆっくり小道を歩きます。 ぽかぽかとお日様のあたたかい陽射しに、目を細めて、 朝のさわやかな空気を胸いっぱい吸い込みました。 まだ、めだってふくらんでいるようにはみえない おなかに手をあてます。 自分が母になるのだという、嬉しいような恥ずかしいような 気持ちでいっぱいでした。 しばらく歩いていると、前の方に天狗のルーンがしゃがんで 何かをつついているのが見えました。 「ルーン、おはよう」 手を振ると、天狗は立ち上がって答えます。 「リン!」 一体に何をやっているのかと聞くと、少し体をずらして つついていたものをリンに見せます。 「剣?」 「道端に落ちてたんだ」 拾おうと思っても、封印されていて触れることが できないのだと言います。 「どこかで見た覚えがあるんだけど」 難しい顔をするルーンの横にしゃがみこみ、剣を眺めます。 目を細めてじっと見ると、持ち主の名前が頭に浮かびました。 「これ、通鷹のだよ」 以前に竹林の庵で見せてもらったことを思い出しました。 なんのてらいもなく、剣を持ち上げて、返しておくねと笑います。 自分が触れることもできなかった剣を、なんなく持ちあげて みせたので、ルーンはびっくりしました。 「リン、触ってもなんともないの?」 「ん?」 なんともなさそうなのを見て取って、通鷹に返して くれるよう頼みます。 それから、封印がしてあるから、もしかしたら 体になんらかの影響があるかもしれない。 すぐに、通鷹に言うようにとだけ言って、飛び去っていきました。 ルーンの言葉に、首をかしげながらもそのまま、竹林の 庵に向かうことにしました。 久しぶりに通る丘と竹林の風景を思い浮かべて、 リンは嬉しそうに目を細めました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.12.24 10:06:25
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