祠:黄金 14
祠:黄金 ~合格~ 守がコテージを去ってしまってから、また前田家のみの 生活に戻りました。 華たちの住む家の窓から、こっそりコテージの様子を伺う必要も まくなり、少し寂しく思ったものです。 そのかわりといってはなんですが、華は守に入れつづけていた ハーブティーを本格的に宿泊客へ提供することに決めました。 「ただのお茶だと思っていたのに」 奥が深いのねとたくさんの本と専門書、いつのまにか増えた ハーブとにらめっこするようになりました。 「ゆっくりやれば良いよ」 学は学で、お寺の人たちと会い、実際に活動にも参加するように なりました。 現場に行ってみなければわからないことだらけです。 福祉施設での職員とのやり取りから、実際に障害を持っている ことで受ける世の中の壁。 彼らの目線から見る世界は、学には想像もつかないことでした。 「もっと勉強するよ」 学は、ずいぶんとショックを受けたようでした。 それ以来、よく本を読むようになりました。 華もそんな学を見守り、二人でよく話をするようになりました。 長男の智樹も、両親の様子から自然と放たれる真剣な様子を 感じ取り、前のようなわがままをあまり言わなくなりました。 いつのまにか寒い冬が過ぎ、春のやわらかな香りが漂い始めた頃、 合格通知を持った守が華と学の家を訪れました。 「大学、行くことになりました」 開かれた扉の向こうから、春の陽射しがさしこんで、 坊主頭の青年がさわやかに笑っていました。 おわり***************************************ご愛読ありがとうございました(^^)ここで。こぼれ話をひとつ。私には弟が一人いるのですが、弟は知的障害をもっています。大学に行くにあたって、家から通えるということもあって、淑徳大学の福祉学部に通っていました。淑徳大学の創設者である長谷川良信先生は、お寺の方です。大学のすぐ隣には、お寺もあって、希望者は座禅や勉強会もあったそうです。朝早かったので、私はチャレンジしませんでしたが^^;別の大学に行きたいと思いながら、この大学に入学し、弟や弟をめぐる家族関係、世の中のことを学ばせてもらいました。結局、福祉の道を歩むことはありませんでしたが、大学4年間、通うことができてよかったです(^^)当時はそうとう苦しかったのですが、向き合うチャンスをもらえました。ずっと重りを抱えていたような気がするのですが、やっと手放せそうですvいつも、私のつたない文章を読んでくださってありがとうございます。これからは、新しいブログでの更新になります。引き続き、お付き合いいただければ嬉しく思います。新ブログ⇒アメブロ 憩いの森