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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 5 ~高時~ 「高時」 「ルーンから、話を聞いてきたんだが…」 遅かったようだな、といつものように縁側から あがりこみます。 不安そうな顔をしているリンの背をなでて、何事か 呟いて通鷹の額に人差し指を当てました。 それから、剣に触れて、また何かを呟きます。 一体どうして通鷹は倒れてしまったのか、なんで、 高時は落ち着いていられるのか。 わけのわからぬまま、リンは通鷹を抱きしめました。 高時が剣に向かって、何事かを唱え終わった時、 通鷹が身じろぎました。 「…すみません…」 うつろな目で、リンを見て高時を眺めます。 「大丈夫?」 「気分はどうだ?」 「あまり…」 良いとはいえませんと、心配そうな二人に、情けない想いで答えます。 なんとか、起き上がろうと試みましたが、体に力が入りません。 「無理するな」 意識があるだけありがたいと思えと、厳しい表情で 答える高時に顔を伏せました。 困惑したように二人のやり取りを見るリンに、大きく ため息をつきます。 「リンには伝えてなかったんだな」 「言おうとは思ったんですが…」 リンのお腹には赤ん坊がいるのでと、か細い声で 伝えます。 また大きくため息をついてから、さっと立って、寝床の準備を始めました。 「高時…これは一体…」 「あとで説明する」 動揺しながらも、また意識を失ってしまった通鷹をそっと 畳の上に寝かせます。 別室に行って、熱を冷やすために桶と手ぬぐいを取りに行きました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.12.27 07:52:46
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