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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 6 ~創造~ 寝室に布団を敷き、寝巻きに着替えさせ、 通鷹のおでこに冷たい手ぬぐいを乗せました。 死んだように眠る通鷹の横で、リンと高時はならんで座ります。 リンは、ちっとも目を覚まさない通鷹の黒髪をすきました。 「しばらくは、眠ったままだろう」 ぽつりと言った高時をじっと眺めます。 先ほどからわけのわからないことばかりで、 リンは胸が押しつぶされそうでした。 なぜ、通鷹は急に倒れてしまったのか、 どうして剣から変な光がでてきたのか、 この剣は一体なんなのか。 何を聞いていいのかわからず、ぐるぐる考えていると 目の前の男がふっと微笑みます。 「案ずるな。すぐに目を覚ます」 「けど…」 視線を落として、畳の目を数えるリンに深く息を 吐いてから、口を開きました。 「この剣について、どこまで知ってる?」 蒼い剣の鞘を抜くと、日の光に刀身がきらめきます。 リンは、いつも通鷹が手入れをしていることと、 いわば自分の分身のように大切な剣なのだと言っていた ことを話します。 「そうか」 うなづいて、刀身を鞘に戻してリンに手渡します。 「この剣を持ってみて、何か気づいたことはないか?」 「え?」 改めて剣を見てみましたが、これといって感じるものは ありません。 首を振って、高時に剣を返そうとすると、そのまま剣を押し戻されました。 「この剣は、これからお前が手入れしろ」 通鷹はできそうにないからなと、横目で寝ている通鷹を見ました。 もちろん、リンに異存はありません。 「でも…どうやって?」 リンは剣の手入れなどしたことがありません。 せめて、手入れの仕方を教えてくれと頼みましたが、 高時はにやにや笑って、教えてくれません。 困りきった様子のリンに、楽しそうに笑いました。 「好きにやってみろ」 さらに困惑した様子のリンに、微笑みます。 「お前は、この剣の創り手だからな」 できないはずがないのだと言われて、リンは驚きのあまり、 剣をごとりと落としました。 落ちた剣がリンの膝の上で、ぽうっと光ります。 光はすぐにおさまったので、リンはまったく気づきませんでした。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.12.28 07:57:19
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