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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 8 ~聴~ 通鷹が倒れてから、数日が過ぎました。 最初の2~3日は、こんこんと眠っていましたが、 少しづつ布団の上に起き上がれるようになってきました。 「すみません」 リンと式神の世話を受けながら、それだけ呟いて すぐに眠りへと落ちていきます。 話をするのも億劫なようで、白湯を飲んだだけで 深い眠りにつきます。 桃林の方は、リンがいなくても大丈夫とまわりの者が 請け負ってくれたので、ほとんど竹林の庵で過ごしていました。 縁側に座って、さわやかな風を送ってくれる竹林の葉を眺めます。 それから、手元にある蒼い剣に視線を向けました。 剣の手入れは、通鷹がやっていたのをみようみまねで やっていましたが、どうもすっきりしません。 「やり方が違うのかな」 高時は、リンがこの剣をつくったのだから、わかるはずだと 言い置いていきました。 ですが、リン自身この剣に関して何も知らないのです。 まだ、自分の中に眠る古い記憶なのだろうと思いましたが、 思い出せる気配もまったくありませんでした。 剣の鞘をゆっくりとなでて、ため息をつきます。 「私にどうしてほしい?どうしたら良いか教えてくれないか?」 剣に呟いて、そんな自分が少しおかしくなってくすりと 笑います。 剣がしゃべるはずがないのにと、剣を床の間に戻そうと 立ち上がった時でした。 (みず…) どこからか、声が聞こえて、リンはどきりとしました。 通鷹かと思いましたが、眠っていて身じろぎひとつしません。 気のせいかと思った時、もう一度声がしました。 (みずをください) 手元の剣がぽうっと青白く光ります。 どきどきしながら、青白く光る剣にそっと手をそえました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.12.30 10:05:48
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