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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 10 ~水~ しばらく剣を抱きしめて泣いてから、リンは顔をあげました。 「水…」 剣は水を求めていました。どうしたらいいのかわかりませんが、 水を汲みにいこうとして立ち上がります。 「その必要はありません」 先ほどまで、深い眠りについていた通鷹が目を覚まして 布団から起き上がりました。 リンは急いで、通鷹を助け起こします。 「大丈夫?」 「はい」 眉尻を下げて、通鷹は微笑みます。 心なしか頬に赤みがさし、元気になっているようでした。 すっとリンの手元にある剣に視線を向けます。 「さっき夢をみていました」 「夢?」 涙をぬぐって、剣を膝元におきます。 「とても喉がかわいていて、水がほしかったんです」 そうしたら、一人の少女が現れて、綺麗な水を自分に 与えてくれたと通鷹は語ります。 「へえ?その少女って?」 リンの言葉に首を振ります。 リンは先ほど自分がみた不思議なビジョンと、 同じものを通鷹がみたのではないかと思ったので少し がっかりしました。 「名前も誰なのかもわかりませんが…」 「黒髪とあなたと同じ翠の瞳をもった、優しそうな少女でした」 そうとうなづいて、リンはぽろぽろと涙をこぼして、 通鷹の肩にもたれます。 久しぶりに通鷹と会話をして、思ったよりもとても 不安で寂しかったのだとリンは気づきました。 「リン…ありがとう」 剣を抱きしめるリンを通鷹が抱きしめます。 幸せそうに目を細めて、そのまま、また眠りの世界へと 入っていきました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.01 10:38:14
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