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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 12
~昏倒~ それから、数日、通鷹は外を歩きまわれるようになりました。 竹林の中を散歩して、家事の手伝いもしようとしますが、 リンは譲りませんでした。 「しばらくの間は、私に任せて」 「でも、あなたは妊婦ですよ?」 「家事や軽い運動は、おなかの赤ちゃんにもいいのよ」 しばらくは体力の回復に専念してというリンに押し切られ、 通鷹はのんびりと過ごします。 植木鉢に花を植えて、育てます。 不思議なほどのんびりとした空気に、リンはほっとします。 通鷹が倒れた時は心臓が止まるかと思いました。 まだまだ、本調子とはいかないらしく横になっている時も あります。 リンは、今まで剣でみた不思議なビジョンを通鷹に伝えました。 黒髪の少女のことも、通鷹は驚いていたようでした。 「剣がみせたんですか」 「うん、何かおかしい?」 「そうではないんですが…」 難しい顔をしてうつむく通鷹の顔を覗き込みます。 「あの龍は、通鷹だよね?」 にらむようにじっと見られて、通鷹はどきりとしました。 しばらく視線をさ迷わせてから口を開きます。 「リンの言う蒼い龍は…」 通鷹の言葉を聞いた瞬間、剣がまた蒼く光り始めました。 驚く通鷹を尻目に、リンは剣を膝元におきます。 それから、おもむろに剣を鞘から抜きました。 そのとたん、刀身から星屑のような光が四方に散って、 部屋を白銀に満たします。 光がふくれあがって、ぱちんと弾けると、 目の前でリンが剣を抱きかかえたままうつぶせになっていました。 急いで通鷹は抱き起こして、リンの顔を覗き込みます。 頬を軽く叩きますが、目を覚ましません。 ふと、リンの口と鼻に手をあてます。 「息が…」 呼吸のないリンを目の前にして、通鷹は真っ青になりました。 リンの手の中にある蒼い剣は、白く不思議な文様を発していました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.12 09:05:33
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