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2012.01.12
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 桃剣幻想記 12

 ~昏倒~


それから、数日、通鷹は外を歩きまわれるようになりました。
竹林の中を散歩して、家事の手伝いもしようとしますが、
リンは譲りませんでした。

「しばらくの間は、私に任せて」

「でも、あなたは妊婦ですよ?」

「家事や軽い運動は、おなかの赤ちゃんにもいいのよ」

しばらくは体力の回復に専念してというリンに押し切られ、
通鷹はのんびりと過ごします。
植木鉢に花を植えて、育てます。

不思議なほどのんびりとした空気に、リンはほっとします。
通鷹が倒れた時は心臓が止まるかと思いました。
まだまだ、本調子とはいかないらしく横になっている時も
あります。

リンは、今まで剣でみた不思議なビジョンを通鷹に伝えました。
黒髪の少女のことも、通鷹は驚いていたようでした。

「剣がみせたんですか」

「うん、何かおかしい?」

「そうではないんですが…」

難しい顔をしてうつむく通鷹の顔を覗き込みます。

「あの龍は、通鷹だよね?」

にらむようにじっと見られて、通鷹はどきりとしました。
しばらく視線をさ迷わせてから口を開きます。

「リンの言う蒼い龍は…」

通鷹の言葉を聞いた瞬間、剣がまた蒼く光り始めました。
驚く通鷹を尻目に、リンは剣を膝元におきます。
それから、おもむろに剣を鞘から抜きました。

そのとたん、刀身から星屑のような光が四方に散って、
部屋を白銀に満たします。

光がふくれあがって、ぱちんと弾けると、
目の前でリンが剣を抱きかかえたままうつぶせになっていました。

急いで通鷹は抱き起こして、リンの顔を覗き込みます。
頬を軽く叩きますが、目を覚ましません。
ふと、リンの口と鼻に手をあてます。

「息が…」

呼吸のないリンを目の前にして、通鷹は真っ青になりました。
リンの手の中にある蒼い剣は、白く不思議な文様を発していました。



つづく





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Last updated  2012.01.12 09:05:33
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