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カテゴリ:【物語】桃剣幻想記
桃剣幻想記 15 ~時代~ 遥か昔の話です。 神々が争いに身を置いていた時、神々の武器を創る 鍛冶職人がおりました。 もう、古く擦り切れてしまいそうな遠い過去に、 一人の鍛冶職人がいました。 『絶対的に強い剣を作ってほしい』 その依頼をありがたく受け取って、鍛冶職人は 一振りの剣を創りあげました。 蒼く輝く鞘に龍の飾りをつけます。 『誰よりも強く、使い手のよき剣を』 その想いをこめてつくった剣は、不思議な剣となりました。 まず、剣の飾りの龍が動きます。 創り手の意思を受けて、剣は龍のかたちをとるようになりました。 剣と龍と、二つに分かれる不思議な剣は、 使い手と意思疎通しながら、強き剣となり、世をにぎわせました。 しかし、意思をもった剣は、次第に使い手をくってしまうように なりました。 剣の気に入らない使い手を、逆に殺してしまうようになったのです。 戦乱の中、荒れていく世と呼応するように、剣も荒れていきました。 使い手も我こそはと剣を握りましたが、すぐにくわれてしまいます。 神々の剣というよりは、邪な剣だと言われるようになり、 剣は鍛冶師のもとに戻ってきました。 「なぜ、使い手を殺してしまうんだい?」 「使い手の心が穢れているからです」 最初は、優しい心根と正義のためという気高い心の持ち主と 力をあわせていました。 ですが、強さを求めるものは己の欲に抗いきれなくなりました。 功を成したい、という欲に取りつかれた使い手といるうちに、 自身も穢れていったのだと語ります。 唯一、剣の創り手である鍛冶師には心を許していましたので、 戦の世にある人の心のことを語りました。 鍛冶師は、困り果てたようにため息をつきます。 「それじゃあ、お前が良いと思う者が現れるまでここにいなさい」 蒼き剣は喜びました。 鍛冶師とともに、このままここにいられればと思いました。 鍛冶師と生活を共にする内に、人の姿をとるようになり、 書物を読んで知恵をつけるようになりました。 その剣を欲しがって、多くのものが現れましたが、 剣は戦の世にでることを嫌がりました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.01.15 10:35:57
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