|
はじまりのひと 13 ~子~ 「魂は必ず引き合うのだとおっしゃってましたね」 「ええ、私、身をもって体験しましたわ」 穏やかに笑んで、ソウとリンが微笑みます。 リンとソウが出会った時、お互いずっと知っていたかのような 不思議な感覚にとらわれました。 はっきりわからなかったのは、ソウがこの世界で生きていくために 記憶を失い、思考優位であったため、自分の直感がわからなかった ことでした。 リン自身も古い記憶を持っているものの、思い出す きっかけがありませんでした。 それでも二人は惹かれあい、一緒に暮らすようになって、 様々なことを思い出し始めました。 それは、やわらかく優しく、時に切ないものでした。 互いに過去の記憶を癒しあううちに、リンは子供を身ごもりました。 一番驚いたのはソウでした。小さい頃、病にかかり、それ以来 子をなすことはできないと言われていたのです。 ルエラを嫁がせたあと、清々しい気持ちでリンと接している時に できた子でした。 精神と肉体と、魂の癒しをすすめるにつれて、 正常な状態にもどったのだろうと言われ、気恥ずかしい思いがしました。 「それだけ、痛みを抱えていたのですわ」 リンはふわりと微笑んで、ソウの顔を見ます。 銀髪にきらきらと光る翠の瞳を目を細めてみると、 そっとおでこにキスをしました。 くすくすと笑って、クローディアはカップに口をつけます。 長い長い時を超えて、こうしてみんなで笑ってお茶が 飲めるのはとても素晴らしいことだと感じました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.02.14 11:18:09
[【物語】はじまり:はじまりのひと(番外編)] カテゴリの最新記事
|