新書というものに出会った頃
思えば中学生時代の後半のどこかではじめて新書版というものを知ったと思うのだけれど,最初に手に取ったのが何だったのかどうもはっきりしません.「カンの構造」(中公新書,1968)や時実利彦さんの「脳の話」(岩波新書,1962)に出会ったのは少しあとの高校生の時.「心の風物誌」(岩波新書, 1963) 「現代人の心」(中公新書, 1965) 「幻想の現代」(岩波新書, 1966) のどれかを出されたばかりの島崎敏樹さんが藤沢に見えて講演をされた.公民館か何かが主催した講演会だったはずだけど会場はなぜか駅の近くの銀行の2階の会議室だった.講演が終わってから駅まで戻られる先生を案内して(?)一緒に歩いたのを憶えています.本を出版するようなエラい先生と言葉を交わすことができたので得意でした.先生のほうとしては中学生にご自分の本の内容が理解できるものかどうか心配だったでしょうね.そんなことがきっかけで新書を読み始めたのだと思います.ひょっとしたらもっとあとのことだったかもしれないけど,ここは胡麻さんにでも聞かないと自分の記憶は怪しい.後年,ドラッカーの「断絶の時代―来たるべき知識社会の構想」(1969)を翻訳中だった林雄二郎さんが講演に見えたときも聴講に行って,どきどきしながらなにか質問した.大学に入学する直前の春休みじゃなかっただろか.林先生の「情報化社会」は同じ年に講談社現代新書から出ました.印象ではもっとずっと前だったような気がするのに実は同じ年の7月に岩波新書で出ている梅棹忠夫さんの「知的生産の技術」.新聞社に就職した友人の薦めですぐ読んだと思います.