今日のLCA(Leadership & Corporate Accountability)で、印象に残るケースが出てきたので書きます。
固めの話題です。
テーマは、「企業は地域社会に対してどんな責任を有しているか」
Polartec(http://www.polartec.com/)という素材を見たことありませんか?
フリースみたいな生地の素材です。
Malden Millsという会社がこの素材を作っています。
Malden Millsが位置するのは、マサチューセッツ北部のヒスパニック系の移民が多い小さな町。
しかし、アメリカの産業空洞化の流れで、町にあったMalden Mills以外の工場は軒並み閉鎖。
安い労働力を求めて海外に出て行ってしまうわけです。
この会社のCEOは、従業員を守り抜くことに強い使命感を持つ70歳のおじいさん。
他の工場が出て行っても、自分たちは地域の雇用を守り続けるんだ!とがんばっていました。
ところが、1995年12月の乾燥した冬の夜に工場で火災が発生。結局工場が全焼。
利益追求型の経営者だったら、「災い転じて福となす」じゃないけど、これを機に、この町の工場は閉鎖して海外へ工場移転をするか、町に工場を残すにしても不採算部門を閉じてPolartec生産は思いっきり機械化する、などの施策をとるはずです。
ところが、このCEOは、不採算部門の工場も含めて、元通りに工場を立て直しました。
しかし、工場を立て直すための借入金の負担がボディーブローみたいに効いてきて、結局火災から6年後の2001年11月についに倒産してしまいます。
結局、このCEOの行動は、経営者として正しかったか?
* * *
最初は、会社は従業員にどんな責任を負っているか、という話から始まりました。
まあ普通に、「会社は従業員のwell beingに対して責任があるよね」とか、日本でいうところの「解雇権濫用の法理」みたいな話がでてくるわけです。
お決まりのように、株主へのfiduciary dutyや顧客に対する責任とのバランスも大事だよねえ、みたいな意見も出ます。
そこまではふむふむ、と聞いていたのですが、そこで、教授が話題を移します。
で、問われたのは、「じゃあ、企業は地域社会に対してどんな責任を有しているか」
こうやって、ちょっと大きな話になると今いちピンときません。
なので、
「従業員にちゃんと給料を払って、解雇するときもそれなりのプロセスを踏めば、その後は地域社会に対しては責任なんてないんじゃん?しかも、失業した人たちに対しては政府の失業保険とかがあるんでしょ。もちろん環境問題みたいな感じで、企業が巨大な負債を地域に残して去っていくとしたら問題だけどね。」
みたいなことを言ってみました(注1)
でも、教授やクラスメートから、「いや、そんな問題は単純じゃねえ」みたいに軽く刺されて、爆死しました。
で、結局よくわからないまま授業が終わりました。
だって、地域貢献は、もちろんやれるに越したことがないけど(例えば前職の会社も従業員は年一回地域ボランティアやってました)、それって、「責任」とか「義務」ではなく、「オプション」なんじゃないの?つまり、会社の経営に余裕があるときには頑張ってやりたまえ、みたいな話なんじゃないのかなあ。
このへんって、経営者の方々にとっては基本的な問題なんだろうけれども、どなたかわかる方教えていただけませんかねえ。
よろしこです。
あ、あと失業なんてどうでもいいと言ってるわけではないですので、念のため。ただ、問題をきっちり整理したいだけなのですから、やな奴と思わないでくださいね。
(注1)もちろん、下手くそな英語だから、ここまでポイントを明確には言えてないですけどね(泣)