その日、北海道は閉鎖地区となった。
帯に書かれたその言葉だけで面白そうな予感がプンプンしました。
ブラッドアイズ
北海道絶対防衛戦線
茜屋まつり
ブラッドアイズ 北海道絶対防衛戦線 電撃文庫
茜屋まつり
表紙絵の眼帯少女がメインヒロイン・棟方千景なんですけど、寡黙・無表情・狂気.....
当然理由があるんですけど明るさの欠片もない設定です。
しかし物語は表紙絵では目立ってない中央の少年・宮原希を中心に展開します。
突然の災害、同時多発した噴火により北海道は大混乱。
それに拍車をかけるように野生動物の凶暴化が頻発し、襲われた被害者に今まで似なかった病が発症。凶暴化した野生動物は赤い目になり、それらの動物に引っかかれたり噛まれたりした被害者が死亡。ウイルス性らしい新型狂犬病と名付けられたその病には謎が多く、そのウイルスに感染した野生動物は凶暴化し知能も異常に発達するので厄介極まりない。
政府はあてにならず北海道は消滅の危機に。
政府の依頼を受け害獣緊急防除に乗り出した民間企業<猟兵社>
その猟兵社の設立した「九頭竜学園」で学びつつ猟兵としての訓練を受けて、棟方千景・宮原希ともう一人の表紙絵の少年・藤堂奏也はハンターになっていきます。
が、高校生で銃器が扱えるのか?って疑問が当然ながら。
架空の物語でもそのあたりの設定は大事です。
しかし、そのために作中では青少年狩猟法というのがあって、しっかりそのあたりの問題にも対応してます。というかその法律自体「九頭竜学園」の創設者で環境省 総合環境政策局 緊急対策室 室長の肩書きを持つ鼠入疾風が手をまわして作ったような法律であり、害獣駆除は当然ながら最終的には人類を救うみたいなラノベにピッタリなテーマになってます。
タイトルにあってるブラッドアイズは悪の秘密結社的な組織の名称で、人類の進化を強制的に促すために新型狂犬病をばらまいた犯人で、これはよくあるパターンですけど悪の元凶は政府研究機関で、そこで研究開発されてた『動物の知能や肉体を強化した植えで毒性を獲得させ、動物兵器とする名もなきプロジェクト』が物語の悲劇の原因でした。
ブラッドアイズは
慢心した人類に、弱肉強食の地獄を捧げる、神の代理人である。
それが電波ジャックして政見放送のように流れたブラッドアイズの思想らしいです。
狂ってますがいかにもな悪で、それは昔のヒーローものにもみられるような見事な悪。
そういう悪が物語を盛り上げます。
けっして楽しい話ではないですが、今時のよくある軟弱な設定とは一線を画してるような気がしないでもないです。でも、しっかりと主人公たちの同級生として、射撃の天才で不思議ちゃんで美少女の十六夜白菊という人物も登場するので、それなりに今時の物語でもあります。
そこから
人類に未来は、希望はあるのか?
みたいな壮大なことになっていくのかと思ったらそうでもなく、あくまでも北海道が舞台の高校生の物語のままでしたがなかなかに面白い本でした。
最後に千景が見せた素適な笑顔が印象的でした。
最後といっても物語の最後ってだけで、千景が逝ってしまうわけではないのであしからず。