これは設定というか世界観というか、そういうのが好みでした。
かかみさまドクター
―怪医イサナさんの症例報告―
西塔鼎
かみさまドクター -怪医イサナさんの症例報告- 電撃文庫
西塔鼎
星が消えた星凪(オカルテーション)の夜に神々は世界を放棄し、それまで伝説・伝承・怪異譚の中で語られる存在だった怪異たちが世界に姿を現し始めた。
そして世界は怪異を認識し、その存在を認め人権を与える「出雲宣言」を採択した。
これだけですでに好みすぎてタマラン!ってものを感じます。
存在を認めて人権を与えたからには様々な変化が世界に訪れます。
しして星凪から十年。
この物語はそんな変化の中の医療分野のことを描いた物語です。
一章で訪れたのは吸血鬼。
それは怪異の中でも有名すぎるぐらいに有名な存在。
ですが、病気の原因が しらす の食べすぎって、かなり残念な吸血鬼でした(笑)
作者が医療関係者でないなら、この物語を描くにあたって相当に資料を読み漁ったんだろうな~と思います。描かれてる病気の原因や専門知識は物語にリアリティーをもたらしてくれてます。
二章では夢魔、三章では鴉天狗、四章では寓象人格体(フォルクロアド・イグジスタンス)を診療します。ちなみに四章の患者はかの有名な かぐや姫 の娘でした。
そんな怪異たちを治療する医学が寓象医学で、芦原総合病院に設置された総合生物診療科に恩師のほぼ強制的な誘いにより赴任してきた医師・伊佐奈詠(小柄めがね女子)が物語の主人公です。
恩師の名は空騎剣(ウツロギ ツルギ)いかにもラノベっぽい名前です。
元は怪異狩りでその世界では「教授」と呼ばれ超有名人。
その仕事の関係で詠とも知り合ったんですけど、そうなってくると詠の名字である伊佐奈っていうのが物凄く気になります。神すら狩ってしまう怪異狩りと深く関係があるのならば詠もただものであるはずがない。
そして伊佐奈(イサナ)から連想する神の名前は......
正体をハッキリとは書きませんが、少しでも記紀神話に興味のある人ならすぐに思いつくぐらいの超絶有名神です。それが何故に人の身を得て医師になってるのか?そういうのは本を読んで楽しく確認してもらいたいです。面白い本なのでオススメです。
純愛ゆえに悩む夢魔とかなかなか読み応えがあります。
恋愛的な話は漫画でも小説でもハッキリと嫌いといえるぐらいに苦手なんですが、これはかなり面白かったです。怪異が絡むと苦手も苦手ではなくなります私。
それぐらいに好きです怪異譚って。
怪異婚姻譚なんてのも面白いんですよね~。
とくに記紀神話の神々の物語なてのは大好物です。
漫画・ラノベ・小説・アニメ関係なく好きです。
だからこの物語はツボを見事に突かれました。
表紙絵をよく見るとレントゲン写真の人物?の鼻が長く尖ってるのが見えたりするのも面白いです。天狗以外にはありえないシルエットですよね~。
表紙絵手前のメガネが主人公・伊佐奈詠で奥で座ってるのが空騎剣。
そのさらに奥にいる看護師が見た目も中身も天使そのものである あきみさん です。年齢不詳で正体不明。読みながら怪異である可能性もかなりありそうだなと思いましたけど、そのあたりはハッキリしないまま一巻は終了。
続きをかなり読んでみたい一冊でした。