「元赤いクメール兵の生活を視察して」 チューク・カンポット 曇り
コンポンスプー州、タケオ州、カンポット州のちょうど州境が交差する山の中に、ポツンポツンと家の点在するエリアがあります。元赤いクメールの人々の住まいだということです。アクセス路も未整備で通常はバイクか荷車付き小型トラクターでしか入れないような所に、ひっそりと生活されているようにも見えました。その地に開発の手が入ろうとしています。樹々は既に何十年か前に伐採されたかのようで丘の側には他の植生の繁殖を拒むように笹が群生し、土壌は雨季だというのに乾燥化が進んでいるのかカサつき、土漠化しているところがチラホラと見られます。山を登りきり裏側の南面に行くと少し植生が変わり、野生のバナナや低木が群生し水も豊かに湧き出していました。そこにコショウ農園を作ってみたいということで相談を受けました。相談者は、国防省高官の奥方で、80年代にその地域の教育局に努めていた方。その地域への思い入れが深く、そこに住んでいる人々の生活の向上を支援したいとのことでした。「コショウを生産したら売ってくれますか?」ととわれ、「世界でコショウの欠品している今の現状であれば、いくらでも簡単に高値で売れますが、5年後は保証できません。少量であればなんとかなるかもしれませんが」としか答えられない自分に、とても情けなくなりました。家族ですら、満足に面倒見れていない自分が、関係のない多くの人の生活まで、背負うことなどできません。最終的に、フェアトレードとして成り立つのかも不安です。立場の弱い「元赤いクメール兵」を安く使って、高官が私腹を肥やす可能性もあるかもしれません。「元赤いクメール兵」の人々の生活は、とても質素なものでした。子どもたちもたくさん居ましたが、教育はどうなっているのかとか、余計なお世話ですが、考えたりしてしまいました。農園ができて働く場所ができるのいいことかもしれませんが、彼らの自由な生活は奪われてしまいます。指導者が住民に家や食料、教育などの生活の保証を与え、その見返りに、指導者のために住民が働く。中世に戻ったような気分です。国(政府)にも予算がなく国民の生活を保証できていません。一部の政府高官にその仕事を振り分けて、地方住民の生活向上を委託しているように感じます。指導者が富を分散できる人ならばいいのですが、指導者のみが富を牛耳ることも容易です。ここから5年、カンボジアはどう動いていくのでしょうか。過去のにのまえだけは踏まないように願うばかりです。