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真理を求めて

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2011.10.25
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次に判決要旨に登場するのは、4億円を分散入金したことが書かれている。ここには有名になった「推認」という言葉も登場している。とりあえずここで指摘されていることを事実と推測に分けて書き出しておこう。

・1(事実)被告人石川は、本件4億円を平成16年10月13日から同月28日までの間、前後12回にわたり、5銀行6支店に分散入金した。
・2(事実)後、りそな銀行衆議院支店陸山会口座に集約している。
・3(推測)このような迂遠な分散迂回入金は、本件4億円を目立たないようにするための工作とみるのが自然かつ合理的である。
・4(事実)本件4億円は、本件土地購入原資として小沢から借り、実際に本件土地取得費用等に充てられている。
・5(事実)被告人石川は、本件土地の残代等を支払った後に、小沢関連5団体から集めた金員を原資として本件定期預金担保融資を組み、小沢を経由させた上で陸山会が転貸金4億円を借り受けている。
・5(解釈)被告人石川は、これらの行為に及んだ理由について、合理的な説明をしていない。
・6(推測)このような一連の経過等をみると、被告人石川は、平成16年分収支報告書上、本件4億円の存在を隠そうとしていたことが強くうかがわれる。
・7(推測)被告人石川は、本件土地の取得費用等の支出を平成16年分収支報告書に記載せず、平成17年分収支報告書に記載しようと考えた。
・8(事実?)被告人大久保を介して売主側と交渉し本件登記を平成17年1月7日に延期している。
・9(推測)被告人石川は、本件4億円の収入や、これを原資とした本件土地取得費用等の支出が平成16年分収支報告書に載ることを回避しようとする強い意思をもってそれに向けた種々の隠ぺい工作を行った(ことが強く推認される)。
・10(推測)後述する背景事情をみると、被告人石川には種々の隠ぺい工作を行って本件4億円を隠そうとする動機があった。

ここで「?(クエスチョンマーク)」にしたのは、他の資料からの判断で事実かどうかが確認できなかったところである。後はおおむね事実ではないかと考えられる。そこで論理的に問題になるのは、これらの事実が「推測」によって結論を正当に導いているかどうかということだ。

まず3についての推測だが、これは「目立たない」ということが具体的にどのような意味をなすかをはっきりさせなければ、その犯罪性を云々することが出来ない。目立たないようにすることがすぐに犯罪と結びつくのではないからだ。マスコミにかぎつけられて騒がれるのがいやだ、というのも目立たないようにしたいことの理由になる。これは全く犯罪性のないものだ。単にいやだと感じたからそうしたに過ぎない。

しかし、その金の中に不正なものが入っていて、それを隠すために目立たないようにしたい、ということであれば犯罪性の指摘も出来る。検察はそれをしたかったのだろう。だがそのためには、その中に不正な金があるということを証明しなければならない。つまり犯罪性の証明には、もう一つ論理の前提が必要なのである。この推論は、目立たないようにしたいという石川さんの「思い」の推論としては妥当かもしれないが、それは単なる「思い」であり、それ以上の意味はない。

5の解釈については、これは推論ではないので、正しいか正しくないかという評価ではなく、その解釈が妥当かどうかという評価をしなければならない。合理的な説明というのは、論理的な前提がはっきりしていて、その前提から結論が正しく導けるという説明が出来ると言うことだ。これは犯罪の立証においては絶対的に必要なもので、それをちゃんとやっていない裁判所が、石川さんを批判するような解釈をするというのはおかしいと感じるのだが、そもそも合理的な説明というのは、それにふさわしい対象でなければ出来ないのが普通だという解釈の方を僕は取る。

たとえば、毎日朝食はトーストとコーヒーと決めている人が、朝食にそれを食べた理由を聞かれたら、「毎日それを食べることにしているから」と答えるのは合理的な説明だ。もし違うものを食べたときでも、「今日はパンがなかったから」と答えれば、違うものを食べたことの合理的な説明になる。

だが、何を食べるかを気まぐれに決めている人が、たまたま朝まんじゅうを食べたとき、どうしてまんじゅうを食べたかというような合理的な説明は出来ない。たまたまそれがあったから、という理由で納得してもらえるかどうか。それを合理的だと思ってくれればいいが、そう受け取ってくれない場合は、いくら合理的な説明を見つけようと思ってもそれは見つからない。

仮説実験授業では、選択肢付きの問題で、なぜそれを選んだのかという理由を聞く。その時に合理的な説明をする者もいるし、何となく選んだと答える者もいる。そのどちらも仮説実験授業では認める。人間の思考というのはそういうものだと思っているからだ。何でもすべて合理的に判断しているのではなく、無意識のうちに何となくやっていることもたくさんある。

合理的に説明できないから悪いことを考えていたのだろう、という解釈と推論は論理的には正当性がない。人間は合理的ではない行動などいくらでもあるからだ。それをすべて悪意から出たものだと解釈されてはたまらない。検察と裁判所がやるべきことは、このようなデタラメな推論ではなく、悪意を持って行動していたと推論できるような事実を突き止めて、真っ当な論理で犯罪性を証明することなのである。それが出来ないのでこのような詭弁を使っているように僕には見える。

6から後の推測については、石川さんの頭の中のことや動機を語ったものであるから、これは推測するしかない内容になっている。頭の中や動機は直接知ることが出来ないので事実としては確立しない。だがここで違和感を感じるのは、これらの推測が正しいとしても、そこにどのような犯罪性が帰結するのかというのが分からない。

僕は、4億円の不記載という解釈には賛成できないので、それを犯罪として告発するのにも反対だ。だが、検察と裁判所がそれを犯罪だというなら、不記載そのものの犯罪性を語るべきだろう。どうしてここで推測しかできない動機について語るのか。動機があれば犯罪性の証明になるのか?

実際には、石川さんは、4億円については一つ記載すればいいと考えたので二つを書かなかったというだけのことだと思う。書かなかった動機は、それが必要ないと思っただけのことだ。この動機でも犯罪性が見出せるか?それは無理だろう。書かなかったことの判断が間違いだというなら、それは訂正すればすむだけのことだ。逮捕して起訴するような犯罪ではない。

この動機が犯罪に結びつくのは、隠したいと思った金が不正な金だったという証明が必要なのだ。それは後に水谷建設の金で語られていると思っている人がいるかもしれないが、神保哲生さんの指摘によれば、水谷建設が違法献金をしたと言っている時期よりも、陸山会の収支報告の流れの方が早いそうだ。つまり、水谷建設の金は、物理的に問題となっている収支報告の金にはなり得ないのだ。

神保さんによれば、水谷建設相手にこのようなことをしているのだから、その隠そうとした4億円だってきっと怪しい金が入っているはずだ、と推認してこのような判決になっているのではないかと指摘していた。つまり、この推認には全く事実的根拠がなく、単に動機がありそうだから悪いことをしたのだろうと決めつけているに過ぎない。全く滅茶苦茶な論理だ。この論理では全然説得力がない。






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最終更新日  2011.10.25 10:52:37
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