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カテゴリ:ベトナム文学
バオ・ニンはベトナム国外ではもっとも名の知れた現代ベトナム人作家だと思います。代表作は『戦争の悲しみ』というベトナム戦争(北ベトナム側の表現だと抗米救国戦争)を題材にした長編小説です。内容もさながら、訳者が正確に訳していないという批判も飛び出し、「改竄疑惑」としてもすこし話題になりました。英語からの重訳ですので多少の誤訳は致し方ないと思いますが、確かに訳者が想像をたくましくしすぎた箇所もあるようです。
私の大学の恩師が、日本ペンクラブの作家をベトナムに案内したときにバオ・ニン氏とお話する機会があったそうです。日本の作家は『戦争の悲しみ』に感銘を受けていたため、あの部分がよかったと具体例を挙げて賛辞を送るのですが、バオ・ニン氏はキョトンとしておられたそうです。後ほどあたってみると、日本語訳には出てくるその場面が、原文(ベトナム語)ではまったく記されていなかったとのことです。 翻訳とは「まったく新しい作品をつくりあげることだ」、という考え方もあるかもしれません。ですが翻訳と名のる以上は翻訳としての節度をまもるべきであり、まったく新しい場面をつくってしまうとそれはもう翻案小説となってしまうように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年05月15日 16時59分40秒
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