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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
13日、ヒストリーチャンネル主権「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」を、北の丸公園のサイエンスホールにて鑑賞した。客入りは9割くらい、客層は作品柄か高めの年齢層だ。映写機2台の内、1台が完全にピンボケでの上映。
映画の話 1956年、ソ連の弾圧支配に抵抗すべく民衆が蜂起したハンガリー。メルボルン五輪に向けて水球チームのエースとして活躍するカルチ(イヴァン・フェニェー)は、学生デモを統率する女子学生ヴィキ(カタ・ドボー)と出会う。革命を信じる彼女と接し、ソ連軍が市民を撃ち殺す光景を見たカルチは、自由のための戦いに身を投じてゆく……。 映画の感想 とても見ごたえのある作品だ。本作のキーポイントは、あまり見ることの無いハンガリー映画であるが、スタッフがハリウッドの第一線で活躍する人物が参加している事だ。 まず私は脚本のジョー・エスターハスの名前を本作のスタッフに発見した事で本作に興味を持った。彼は「フラッシュダンス」「氷の微笑」「硝子の塔」「ショーガール」などメガヒット作を立て続けに送り出した人気脚本家で、最低映画を賞するラジー賞の常連でもある人物だ。そのジョー・エスターハスが母国のハンガリーに戻り書き上げた作品は史実に基づいた話で、「ハンガリーの動乱」と呼ばれる革命と「メルボルンの流血線」と呼ばれるオリンピックの事件を背景に、水球でオリンピックに出場する青年と革命家の女学生の恋を絡めた脚本は、エスターハスらしい力強さと強引さを同居させている。特に革命家の女学生ヴィキの言動と行動にはエスターハスの過去の作品に見られる女性像そのものであり、エスターハス節の健在ぶりに感服させられる。 そして本作は女性監督らしい繊細なドラマシーンとは対照的に、ダイナミックなアクションシーンが素晴らしい!そのアクション監督を務めたのは「MI:3」の他「レイダース」「宇宙戦争」などのスピルバーグ作品で手腕を発揮するヴィク・アームストロングである。ダイナミズム溢れるアクションシーンが随所に挿入されていて作品にリアルな生命感を与えている。 それから音楽にはニック・グレニー=スミスが担当している。彼はハンス・ジマーの門下生とでもいうべき人物であり、本作の曲を聴いてもらえば多くのジマー作品をサポートしていた事をうかがわせる。劇中曲は正式にクレジットされている「ザ・ロック」や、クレジットされていない「クリムゾン・タイド」にそっくりで思わずニヤリとしてしまう。個人的な見解であるけど、現在のハンス・ジマーは音楽集団のチーム名に近い形で、ジマーを頂点としたチームに有能な作曲家が芸者の置屋みたいに沢山居て、その若手を適材適所に使いクレジットではハンス・ジマーが代表として表記されているのではないだろうか? 話が逸れてしまいましたが、とにかくハンガリー映画に有能なハリウッドの人材が投入されて素晴らしい映画が完成したことは確かである。日本人にはなじみの無いハンガリーの史実に基づいた物語であるけど、十分に見ごたえはあった。映画の頭にハンガリーとソ連の水球の試合で幕を開けて、その後の展開を予感させ、革命に飲み込まれる主人公達と街の人々を描き、ハンガリーとソ連の因縁の水球の試合と主人公ヴィキの運命の明暗を対比をさせて描く構成も実に良い。 先にも書いたジョー・エスターハスが脚本を書いた「氷の微笑」と「ショーガール」でタッグを組んだポール・ヴァーホーベンも、母国帰り史実に基づいた映画「ブラックブック」と言う素晴らしい作品を撮り上げた。二人ともハリウッドからはラジー賞の烙印を押され苦い思いをしただけに、母国を舞台にした物語には心を突き動かされたのだろう。今年見た作品の中で本作と「ブラックブック」は突き抜けたクオリティであった。ただ難点は邦題が何とも安っぽい題名になってしまい映画をイメージ出来ないのがとっても勿体無い。知らない俳優ばかりで公開規模も小さいけど劇場で掛かったら是非見て頂きたい作品である。 映画「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」の関連商品はコチラをクリック。 ハンガリー1956 1956年のハンガリー革命 氷の微笑(DVD) ◆20%OFF! ショー・ガール プレミアム・エディション ブラックブック お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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