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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会
映画の話 第二次世界大戦直後にオーストラリアを訪れたイギリス人貴族レディ・サラ・アシュレイ(ニコール・キッドマン)。サラは死んだ夫が残した広大な土地と1,500頭の牛を相続し、土地を守るために粗暴な現地のカウボーイ(ヒュー・ジャックマン)と手を組み、遠く離れたダーウィンまで牛を引き連れて行かなければならなかった。反目しあう二人だったが、長旅やアボリジニの孤児の少年との出会いを通し、徐々に惹(ひ)かれあっていく。 映画の感想 一見、歴史ロマン超大作を装った大味な凡作だ。映画は大きく分けて第一部が西部劇、第二部の戦争劇と言う2部構成で上映時間は2時間45分。かなり苦痛の長尺作品なのでこれから見る方は覚悟が必要である。 まず多くの日本人にとってオーストラリアの歴史に疎く、更にオーストラリアの原住民アボリジニが物語のキーポイントになるので、国の時代背景が良く判らない日本人観客には辛い内容になるのでは? 以下ネタばれ注意 出足こそバズ・ラーマンらしい小気味良い演出が冴えるが、主人公が第一部の舞台となる牧場に着いてからはまったりとした展開が続き、睡魔が襲ってきてしまう。 第一部のクライマックスになる牧場から1500頭の牛を連れて、牛を乗せる貨物船の停泊する港まで荒野を大移動するシークエンスが出てくるが、途中で飲み水が尽きてしまい「さぁ、どうする」と言うピンチになるが、次のシーンではその事は思いっきりすっ飛ばして港に着いてしまう、どうしようもない展開にはガックリである。あの牛たちは最終的には食用のオージービーフになってしまうのだろう。 そして第二部は戦争の話になってしまい、オーストラリアに日本軍が攻めてくると言う日本人観客にはこれまた辛い展開で、ゼロ戦の攻撃シーンは本作と同じ20世紀FOX作品「トラ・トラ・トラ」(70年)のライブラリ映像の流用と最新のCGのミックスと言うお粗末な仕上がりである。日本兵の描き方も“鬼畜日本人”的な侵略者としてしか描かれてないのも辛い。 流用と言えばMGM作品「オズの魔法使い」(39年)のテーマ曲「虹の彼方に」が効果的に使われていたが、“人のふんどしで相撲をとる”的な作り手のあざとさが付きまとって素直に感動できない。大体、今「オズの魔法使い」のライセンスは誰が持っているんだ? まぁバズ・ラーマン監督には本作は荷が重すぎた感は否めない。彼は「ムーラン・ルージュ」の様な小さな世界の中でチマコマとしたディテールを極める監督なので、本作の様な広大な作品の監督には合わなかったような気がする。ニコール・キッドマン&ヒュー・ジャックマンのファン以外の方にはお勧めできない作品である。 それからオープニングでアボリジニについて英語のテロップが出てくるが、日本語字幕が付いていなく何が書いてあったのか判らないのも難点であるし、映画上映前に本作に対して届いた様々な媒体からの賞賛の声を文字で流して、観客の心理をコントロールしようとする20世紀FOXの姑息なやり方が気に入らない。 映画「オーストラリア」の関連書品はこちら バズ・ラーマン コレクション(初回生産限定) 【中古】洋画DVD オズの魔法使い 特別版(’39米) (WHV) スタジオ・クラシック・シリーズ::トラトラトラ! ゼロ戦の戦闘シーンの元ネタとなった「トラ・トラ・トラ」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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「トラ・トラ・トラ!」の流用だったとは! よく気付きましたね。 流石、映画を大量に観ている人は目の付け所が違うなぁ、と感心しました。
確かに、調子が悪いときに見ると、凄まじく眠気を誘う映画かも知れませんね… (2009.02.09 13:22:31)
この季節は花粉症の発症する時期で、昼過ぎに鼻炎薬を飲んだら前半は眠くて眠くて睡魔との戦いでした。
この映画のゼロ戦は「トラ・トラ・トラ」の実写と新たなるCGとのミックスでした。 いくら金が掛かると言えども手を抜きすぎです。 (2009.02.09 18:41:37)
バズ・ラーマンの新作ということで、興味があったのですが、”鬼畜日本人”が出てきちゃうんですね(笑)う~ん、しかも長時間ということですし、これは劇場観賞パスで、放送待ちします・・・
(2009.02.11 22:16:54)
同じ試写会だったようです。
>映画上映前に本作に対して届いた様々な媒体からの賞賛の声を文字で流して観客の心理をコントロールしようとする20世紀FOXの姑息なやり方が気に入らない。、 あれはなんだったんでしょうかね? もう寒気がしました。 僕も正直途中眠かったです。 これだけ長い作品なのに、印象に残ってるのは牛を追ってる姿くらいでした(苦笑) (2009.02.11 23:05:17)
はじめまして!
オーストラリアのあのエリアで、あの服装はちょっと暑すぎるでは?と思いながらの映画をみていましたが、オーストラリアコーヒーが飲めるカフェがあるってご存知でしたか? 神田小川町ペレは、オーストラリアメルボルンにあるペレグリーにというカフェがモデルです☆ 是非ご来店下さい! www.dfv.jp (2009.02.17 19:14:38)
貴重な情報ありがとうございます。
確かにあの服装は暑いですよね! 荒野の大地を牛1500頭大移動での水のエピソードも、問題を振っておきながら答えが無かったりで演出も手抜きだったようです。 (2009.02.17 22:57:56) |
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