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テーマ:辛口映画批評(354)
カテゴリ:試写会2010
客入りは8~9割くらい、客年齢は若い。
【25%OFF】[DVD] ヒーローショー 映画の話 アルバイトでヒーローショーの悪役を務めるユウキ(福徳秀介)。バイト仲間のノボルが、ユウキの先輩である剛志の彼女を寝取ったことから、ある日ショーの最中に激しい殴り合いが始まる。それだけにとどまらず、剛志は悪友たちと共にノボルをゆすろうとするが、ノボルも自衛隊出身の勇気(後藤淳平)を引き入れ、対抗する。 映画の感想 予定調和的な邦画が多い中、あえて予測不能のストーリー展開を用いた井筒和幸監督の意欲を感じる不器用な若者たちを描いた青春群像劇の力作だ。映画の出発点はたぶん、ちびっ子の前でヒーローショーと言う形で勧善懲悪を演じる若い男女を見た井筒監督が「コイツラ、ほんまはステージの裏では乳繰り合っているのとちゃうか?」という単純な閃きから生まれた物語なのかもしれない。 映画のオープニングは主人公・ユウキが漫才コンテストに出場しているシーンからの幕開けなのだが、そのコンテストの舞台となるのが私の地元にある施設“きゅりあん小ホール”だ、個人的に地元がロケーションとして使われ非常に嬉しい。このシーンから私のつかみはOKだ。映画はしばらくユウキの自堕落で孤独な日常が描かれ本題に入ってゆく。 バイトをくびになったユウキの次のバイトがヒーローショーの悪役だ。7~8名の男女がチームとなり一緒に1BOXカーで巡業しながら仕事をするバイトである。何ともゆるい出足で映画はスタートするが、物語は観客の予想だにしない方向に転がりだす。“ヒーローショー”と言う小さなコミュニティの中で男女間の愛情のもつれから、主人公たちは血で血を洗う抗争に発展してしまう。 以下ネタばれ注意 映画は表向き“ヒーローショー”という柔らかい看板を下げているが、蓋を開ければ井筒監督らしいヴァイオレンス&艶めかしいSEX描写を観客にぶつけてくる。特にヴァイオレンス描写は筆舌に尽くしがたい位に力が入っている。まぁ、これは井筒監督流の現代若者に向けたアンチテーゼなのだろう。“脅した相手に焼きを入れる”位の軽いノリが、いつの間にか集団心理が働き殺人に発展してしまう。これは近年報道されている若者たちが犯す集団リンチ殺人への作家からの警笛であろう。暴力の加減を知らない若者たちが一人では何も出来ないが、集団になることで暴力がエスカレートして殺人に至ってしまう。そんな若者たちに向けて監督はあえて正面から描き反面教師として本作に盛り込んだのではないだろうか? そして本作にはバブル崩壊後、物質主義にひた走る日本を強かに生き、世の中“金”に支配された若者へのアンチテーゼも込められている。主人公の夢は「M-1グランプリで優勝賞金¥1000万円獲得する事」であり、苦労もしないで一獲千金を夢想する現代若者像であるのが象徴的だ。他にも彼女を寝取った相手から莫大な金を請求する輩もいれば、デートクラブでスケベ心の客から金を騙し取り、何事も金で物事を処理する若社長であったり、死体を埋めるために闇の仕事を請け負う仕事人、選挙で有権者にビール券をばら撒く立候補者、金融業者から金を借りる為に要らぬ世間話で自分の心象をよくしようとする哀れな主人公など、映画にはありとあらゆる金にまつわる話が盛り込まれている。そんな、欲深い金にまみれた登場人物の中で異彩を放つのが、もう一人の主人公・勇気だ。勇気の夢は年上子持ちバツイチな彼女と石垣島で料理店を開く事だ。そんな勇気も仲間の誘いに乗り、暴力の魔力に負けてしまい、取り返しの付かない事態に陥ってしまう。 映画は観客の予想できない展開を貫き、とても不安定な形で着地するが、作家はあえて明確な答えを用意せず、観客の想像に身を委ねるように幕を引く。楽をして一獲千金を夢見たユウキは親の背中を見て¥100位のたい焼き1個1個を汗水たらして地道に売る仕事を選択し、暴力で道を外れた勇気は因果応報の様に暴力が自分の身に返ってくる。きっと勇気の仲間も皆同じ目にあっていると想像できる。 まぁ、井筒監督の言いたい事は「ヒーローと言う衣を身にまとった者の外見にだまされず、その人間の本質を見抜け」そして「汗水流して地道に働け」と言わんばかりの余韻のあるエンディングには感銘を受けた。本作は女、子供を相手に作られる生温い邦画界に一石を投じる反骨精神に満ちた作品である事は確かだ、面白かった。 映画「ヒーローショー」関連商品 [DVDソフト] ガキ帝国 【送料無料選択可】邦画/岸和田少年愚連隊 [DVDソフト] パッチギ! 特別価格版 【新品】邦画DVD パッチギ!LOVE&PEACE スタンダードエディション【10P17may10】 【レコード・EP盤】(中古) ピンクレディー/S.O.S お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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短絡的、衝動的、集団性。。。
陰では人に言えないことをしていても 人前では普通の顔をして生きている、 若者だけでなく、大人もちょっとずつ変でしたよね。 エンディングのSOSは、 彼らが出している人生の遭難信号のようにも感じられました。 (2010.06.02 14:00:34) |
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