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Atelier Mashenka

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2005.10.30
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カテゴリ:ウォーキング・旅
【 試練の区間 】

40kmから50km地点までが、私にとっては一番の恐怖の場所だった。
特に、まっすぐのびた23号線が。
昨年突然脚が動かなくなり、体全体を使ってコンパスのように一歩一歩歩いた道。
コンビニもほんのわずか点在するだけで、街灯もなく、
前にも後ろにも誰もおらず、真っ暗でどしゃぶりだった23号。

ここまで順調に来たけれど、この場所はさすがに黙りこくって黙々と歩いた。
昨年は雨風に向かって、泣いたりわめいたりしながら
歩いたことが頭にこびりついている。
しかし今年は段違いに楽だった。
一緒にリズムをつくって歩く仲間がいて、時間的にも余裕があり、そして雨もやんだ。
相変わらず暗くて、交通の激しいぶっきらぼうな感じの23号だが、
左ひざの痛みさえのぞけば、まったく穏やかに楽に歩ける。
マイナスのイメージも私を侵さない。
それでも早くこの恐怖の区間を乗り切りたくて、本当に口数少なく歩き続けた。

やがて、長い長い一直線の23号がT字につきあたる信号に出た。
昨年、縁石に座り込んで途方にくれた場所だ。
携帯はぬれて使えない。公衆電話もない。
MDを聞いて元気を出そうとしたけれど、機械が動かない。
もう次の50kmチェックポイントの撤収時間をとうに過ぎている。
伴走車も見えない。
関係者とはまったく会えず、どういう状況になっているのか皆目わからない。

そんな中、ひとりで縁石に座り込んで、
30km地点でいただいたみかんをのろのろと食べた。
(今思うと、われながらヒサンだ・・・(^^;))
行くことも戻ることもできないとはこういう状況のことだ、
まるで遭難者のようだ、とぼんやり思っていた。

それでも、コンビニまで行けばなんとかなる、と思いなおし、
のろのろと腰をあげ、再び寒さにふるえながら歩き出した。
そうして撤収時間を延長してくださっていた50kmチェックポイントまでは
なんとかたどり着き、腰の痛みも始まっていたのでそこでリタイヤしてしまった。

今年はそのT字交差点へたどり着いたとき、私は笑っていた。
この先もまだ50kmチェックポイントまで2~3kmあるけれど
それでも暗い一直線の23号をなんとか乗り切ったことで
私は第2の万歳をし、やったー!とまた叫んだ。
私にとってはすでにここで50kmポイントを通過した気がした。
一番の恐怖の場、試練の場をクリアしたからだ。

また、昨年は警備員のおじさんはいなかったけれど
今年は次の角に立っていて、声をかけ、案内してくれた。
M上さんに「一番ラストの人ってどうなんだろう?去年どうだった?」と聞かれたので、
「おじさんなんていませんでしたよ、警備員が立ってるなんて初めて知りました」と答えると
「そっか~、おじさんも撤収されちゃってるんだ!」と笑われてしまった。

すると、警備員のおじさんもいない中で
ひとり歩いた自分が、けなげでいじらしいなと思えてきて、
「去年の自分がいとおしい・・・」と言うと、M上さんに本気で笑われてしまった。
しかし、そのとき、昨年の挫折した自分を初めて受け入れることができた。
昨年の自分がいたから、今の自分がいる。
一挙に気持ちが軽くなった。

あと気になるのは、M上さんのことだ。
M上さんは48km地点のコンビニから50kmチェックポイントまでが
試練の区間だと私は知っている。
私と違って、いやな記憶をすでに払拭できているのかもしれないが
少しは緊張しているかもしれない。
私は、私が23号の試練を乗り越えた、と感じているように
おこがましくも、M上さんもこの区間を乗り切れるのを見守ろう、と思いつつ歩いた。

しかし、そんな矢先、M上さんの携帯にご家族から電話が入った。
ご家族もちゃーんとわかってるんだなあ・・
そして4歳の娘さんからこんなときに
「ぱぱぁ、はちみつってなにでできてるの~?」という
力の抜けるようなかわいらしい質問があり、一気に気分がほぐれた。

そのあとはM上さんとK坂さん、それぞれのお子さんの話に花が咲き、
試練の区間のはずが、楽しく和やかに歩けてしまった。
おふたりとも、いいパパらしくて、お話を伺ってほんわか気分になれた。

50kmチェックポイント前の橋の上で、Y本さんとすれ違った。
脚の痛みがつらそうだった。
ひとりだとよけい痛みを感じるし、精神的にきついかもしれない。
一緒にがんばって歩きませんか?と言おうか迷ったが、
ペースがまるで違っていたので、結局そこでお別れして
また3人で50kmへ着々と向かった。すでに豊橋市に入っていた。

50kmチェックポイント前で、M上さんと私を気遣ってか、
K坂さんは「ここはさらっと通り過ぎて、次のコンビニで休もう」と提案してくださった。
そしてその通り、50kmチェックポイントには長居はせず、すぐ出発した。



【 第2のスタート 】

夜7時だった。歩き始めてちょうど12時間。
私は本当のスタートを切った。
少しテンションも上がっていたけど、これからは未知の領域。
しかも昨年、この50km過ぎの区間は、道を間違えてリタイヤが続出したり、
歩道橋でHさんが転んでリタイヤの原因にもなったりと
何かと人を惑わす"魔の区間"なのかも・・と警戒する気持ちもあり、慎重に進んだ。

愛知大学付近から、前日の勉強会でのI川先生のアドバイスを生かし、
より歩くリズムを気にするようになった。
"さんげさんげ"の唄はずっと私の中に流れていたが、
(懺悔懺悔六根清浄・・修行者が富士などの山をのぼるときに唱える言葉だそうです)
脚がつらく感じると、「きっと肚(はら)で歩けてないんだ」と思い、
腰に見えないひもがついていて、それを自分の手で前へ前へひっぱるような
動作をすると、少し腰から歩けるようになるのか、楽になる。
脚がきつくなるたびにその動作を繰り返し、姿勢を保つようにした。
あるいは、M上さんのリズムについていけなそうに感じると、
腕を強く振ってリズムについていった。

道が広く平坦だったので、歩き方に注意することができた。
そのころは、とにかく70km地点までがんばって行こう!と3人で言い合っていた。
70kmまで行ければ、絶対81kmのカニ汁を配ってくれるチェックポイントまで行ける、
そして81kmまで行ければ、絶対100km行ける、と確信していた。

そしてM上さんが天気予報を調べ、夜中になると晴れると教えてくださった。
M上さんのデータや準備などにずいぶん助けられていた。
夜中に晴れると聞くと「じゃあ、星空の下でカニ汁ですね!!」と
嬉しくなり、そこでまた1つ、くっきりした現実のイメージが形作られた。

実は、前日の懇親会のときに、Sさんが
「ゴール前の海岸のところでビールかけしてあげる~」と約束してくださったり、
Oさんの奥様のK子さんが「絶対85kmまで来てくださいね!!」と言われたりして、
そんなふうにサポートの方たちに会うことをとても楽しみにして、
現実的にイメージしてきたのだ。

50kmクリアしたら、次は70km、
そして77kmでは、元気なH川さんに会って、
81kmでは、星空の下でKさんのカニ汁を食べる。
85kmではK子さんやOさんの笑顔を見て、
ゴール手前の海岸でSさんにビールかけをしてもらう。
ささいなことだけど、すべてくっきりとイメージできた。
そこへ向かっていて、何の不安もなかった。

順調に56kmチェックポイントに到着した。
しかし気持ちは70km地点へ向かっていたので、そこも長居しなかった。
マッサージは一度もしてもらわず、それぞれ自分でストレッチをし、
あたたかい飲み物と食べ物を買って、歩きながら食べる。
その繰り返しだった。それが合っていた。
コンビニでは見知らぬ地元の方が、「がんばってくださいね!」と
励ましの言葉をかけてくださったりして、とてもあたたかい気持ちになった。

56kmから63kmのチェックポイントまでは
田畑の中の農道のような道だった。
平坦で歩きやすく、だんだん歩くのに集中できるようになってきた。
脚は痛くても「痛い」とは言わず、K坂さんの表現を見習って
「脚がはる」と言うようにしていた。
腰も、笑ったりくしゃみしたりすると痛みがあったけれど
それも「痛い」とは言わず、「笑うと腰に響きます~」と言っていた。
でもそれでも一緒に歩く方と笑ったりできることは何てありがたいことだろう。

その区間では、途中、K坂さんの脚がつった。
私は信号待ちのときに足の裏や甲の部分で、違和感あるテーピングを切り取って外した。
少しでもストレスなく歩くことを心がけていた。
やめたいとか、どうなるんだろうとか、全く思わなかった。
とにかくなるべくいい状態を保ち、このまま歩き続けることだけ考えていた。
M上さんとK坂さんも同じだったのか、マイナスな言葉は一切聞かなかった。
それは大きいことだったと思う。

途中、地球緑化クラブのHさんと何度かすれ違った。
もう脚は開き切り、昨年の私のリタイヤ前のような状態できつそうだった。
しかしまったくたゆむことなく、ひとり黙々と歩いている。
強い精神力を感じた。


つづく






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Last updated  2005.11.24 01:49:50
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