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Atelier Mashenka

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2005.10.30
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カテゴリ:ウォーキング・旅
【 プラス思考を学びつつ歩く 】

63kmチェックポイントについたのは、夜10時ころだった。
このころにはだんだん応援メールをくれる友人へのメールも
余裕がなくなってくる。
休憩のたびに脚が冷え、固まり、歩き出しの1kmくらいが
けっこうペースも落ち、きつい。
しかし体があたたまると、また"さんげさんげ"のリズムに戻れることを
知っているので、焦ることはなかった。
ただ休憩はなるべく短かめに、を心がけた。

63kmチェックポイントを出ようとすると、突然冷たい強風が吹いた。
防寒のための身支度を整えた。
ここでもK坂さんのプラス思考に救われた。
K坂さんは初挑戦の大胆さなのか、ひょうひょうとして力みのない感じに見えた。
後で100kmレポートの中で、普段はマイナス思考で
このときはカラ元気だったとおっしゃっていたが、とてもそうは見えないほどだった。

K坂さんは、昼間の強い雨のときは、
「大き目の靴を買ったから、雨で靴下がふくらんでちょうどいいサイズになった」と言い、
「雨がやんで乾いたら、そのころには足がむくむからまた靴のサイズがぴったりになる」と言う。
夕方、雨はやんだけど、今度は風が吹くらしい、という話になると
前方の雲を指差して「雲があっちへ流れているから、
きっとあの辺を歩くころには追い風になるよ、ラッキー!」と言う。

脚がつって痛そうなときもどうなることかと心配したが、
そのことさえ「あれでストレッチのやり方を変えれたからよかったよ」と言う。
63kmポイントで冷たい強風が吹いたことも、少し歩いてから
「さっき風が吹いてよかったよ。歩き出しは体がなかなか温まらないから
着込んでおいて正解だよ」と言う。
確かに暗い道端で荷物を降ろして着替えたりするより、
チェックポイントで防寒の準備ができ、その後集中して歩けたからよかった。

プラス思考なだけでなく、自然まで味方につけてしまうような
K坂さんの一連の発言には、ほんとに目からうろこが落ちる思いで学ばせていただいた。
気分的にもずいぶん救われた。
するとだんだん私にもK坂式プラス思考がうつってきて、
「●●でよかったですよね!」と自然といいほうへ考え、
言葉に出せるようになるから不思議だったし、面白かった。
普段、自分がどんなにネガティブか、自覚している以上に痛感した。

夜中12時少し前に70km地点に到達した。また万歳が出た。
70km行ければ絶対100km行けると信じていたから。

ここのローソンで、私はよれてしまったテーピングはみな外し、
まめのできたところにテーピングをしたが、
手も少しかじかんで手間取ってしまい、2人を待たせてしまった。

ふたりとも、私の足や腰の状態を気にかけてくださってるのがわかる。
おふたりから前向きなパワーをもらいながら歩いてきて、
私からは何もお返しできていなかったけれど、
せめて心配をかけないよう、足をひっぱらないよう、気をつけた。
「お待たせしました!大丈夫です、行きましょう!」と元気に言うとき、
最強チームに属しているような気がして、誇らしかった。



【 無の境地 】

70~77km付近の山中では空も晴れてきた。しかし辺りはまっくら。
ひとりだったらとてもこわくて歩けないような道だった。
ときどき、「あ、誰かが縁石に座り込んでる」と思うと
それは草や葉っぱだったりして、幻覚にドキドキした。

そんな山の中に、ぽつーんぽつーんとこの大会のために
立っている警備員のおじさんの存在に本当にほっとし、感謝した。
私たちはポイントへゴールへ向かっているけれど、
あんなまっくらな中に寒さにふるえながらじっと立っているなんて、
仕事とは言え、本当にありがたいことだった。
しかも「がんばって」「もうすぐだよ」などと声をかけて下さる。
警備服についたV字の赤い灯は、まさに灯台の灯のようだった。

夜の闇に閉じ込められて、小さなライトを頼りに進んでいくと、
不思議と白い丸いライトの光が、魂か何かの導きのように感じられてきた。
暗くて周囲が気にならないのもいい。集中できる。
やがて先頭を行くM上さんのナイロンパンツがシャッシャッシャッシャッと
一定のリズムで鳴る音に、自分も歩調を合わせ、心の中で"さんげさんげ"を唄っていた。

体重や脚の痛みを肚(はら)から下へすとんと落とし、歩くようになった。
先ほどのように見えないひもを前へひっぱる動作も、
腕を強く振ることも必要なくなった。
上半身は力が抜け、とても楽になった。脚も振り子のように動く。
そうすると痛いのに、痛くない。
肉体の痛みと精神とが、分裂した。
非常に楽だった。

やがて私の中で、唄さえも消え、リズムだけになり、そこへ自分の呼吸を合わせてみた。
4拍吸って4拍吐いたり、2拍吸って6拍吐いてみたり試してみた。
結局、2拍吸って2拍吐くのに落ち着いた。
そうして深い呼吸をしていると、これは寝息のようだと思った。
思えばI川先生のおっしゃっていたメトロノームの120~126の早さで、というのは
2拍ずつ呼吸すると、ちょうど安静時の心拍数と一緒ではないだろうか。
そのリズムで単純に脚を振り子のように前に出し、呼吸を続けていると
半覚半夢の状態になり、脳が非常にやすまった。

苦痛はあるのに、精神を苦しめない。
そしてこのまま行けば、どこまででも行けるんだ、と力むことなく悟った。
森の中から聞こえてくる虫の声さえ、同じリズムだった。
森羅万象に包まれている安らかさを感じた。
そしてなぜか地球緑化クラブのHさんの話された、はるかモンゴルの砂漠のことを想った。

暗い足元にはじゅうぶん気をつけていたが、
この状態でいると、足の裏はソフトに地をとらえ、多少の石を踏んでも
衝撃を吸収してしまって、気にならない。
重力に逆らわない歩き方、自然に逆らわない歩き方、
そして無心で集中して歩く。修行僧の心もちが少しわかった気がする。
"無の境地"を垣間見たような気がする。



【 夜中の奇跡と出会い 】

夜中2時、77kmポイントに到着。小さく暗くさびしいところにあった。
しかし、H川さんの笑顔と明るい親しげな声に心がうるおされた。
初めてマッサージしていただいた。
でも横たわることはせず、座ってふくらはぎをマッサージしてもらうだけにとどめた。
M上さんも初めてマッサージを受け、K坂さんは独自の方法でストレッチをしていた。

このチェックポイントでは、奇跡があった。
反射たすきを注文して、受け渡してもらうことにしていたBさんと会えたのだ!
同じ勉強会に所属しているものの、まだ顔をあわせたことがなく、
メールでのやりとりで、今回の持ち物のことなどでお世話になっていた。
スタート前でも30km地点でも、Bさんの番号を探したけれど見つからず、
ゴールで会うしかないのかなあ、と思っていたのが
こんなところで初対面し、無事反射たすきを受け取ることができた。

大会側の用意してくれたたすきをすでにつけていたけれど、
ずっとここまで持ってきてくれたBさんの気持ちとパワーを
一緒に身に着けたかったので、ありがたく着けさせていただいた。

Bさんは一緒に歩いてきた人は途中でリタイヤして、
ひとりで歩いたり、見知らぬ方と一緒に歩いたりしていたらしい。
ずいぶん強い人だなあ、と思った。
そしてBさんが加わり、一緒に歩くことになった。
不思議な縁だなあ。
気さくでかわらしい女性だし、出会えて嬉しかったし、何より心強かった。

77kmの地点を出発し、しばらく4人で連なって歩いていたけれど、
K坂さんと私は、徐々にM上さんのペースについていけなくなってきた。
そこでM上さんと、しなやかに歩けているBさんに
先に行ってもらうことにし、二手に分かれた。
しかしその後のチェックポイントごとに顔を合わせたので
時間的にはそんなに差はひらいていなかったのだろう。

腰の痛みも気になっていたので、77kmチェックポイントで
腰痛ベルトを着けていた。
昨年は腰痛が出たところでリタイヤしたけれど、
今年はその先へ行く、と最初から決めていたのだ。
とにかくここまで来れば次はカニ汁の待っている81kmポイントなので
絶対ゴールできると思った。
だから腰痛も不安にはならなかった。

M上さんが前にいないので、自分でより足元の危険に注意しなければならない。
先ほどの半覚半夢の状態ではいられない。
あの心地いいほどの無心状態も、M上さんが先頭にいたからこそ
入れた境地だったのだ。
しみじみM上さんの力を思い返した。
とにかくここまで来て足を痛めないように、気をつけて歩いた。

だいぶペースは落ちたけれど、淡々と81kmのチェックポイントを目指し歩いた。
冷たい強い風が吹いてきても、うまく体がかわしてしまうのか、
不思議と衝撃も冷たさも感じなかった。
K坂さんも全く同じことを感じたらしく、そのことを口にした。
風に抵抗しない歩き方をしていたのだと思う。
昨年の、雨風に泣き叫び、恨み、抵抗していた自分からは考えられないことだった。

時間的余裕があったので、この後時速3kmで歩いても
歩き続けていればゴールに着く、ということだけが見えていて、
脚の筋肉の痛みも、足裏のまめや水ぶくれも、腰痛も
苦痛ではあっても精神は穏やかだった。
麻痺していたのかもしれないけれど・・


つづく






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Last updated  2005.11.24 02:16:31
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