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カテゴリ:SF小説
第25話 いのち宿るとき
浩次は、唯の背中に廻した腕の力を抜いた。 目の前にいる彼女は、唯にそっくりだ。それは、確かに 間違いのないこと・・・
喜びの涙は、乾いてしまっていたけれど いま、新たな涙が浩次の瞼に湛えきれず、あふれて 頬を伝う、落ちてゆく・・・
ほんのわずかの間、震えた・・・ (ん、?) 浩次の、心が動く。 つい、今しがたまで、冷めようとしていた想いが ふたたび、熱を帯びてきた、彼の中で、それは 人の知識では、計りしることのできない いのちあるものに与えられた、感性としか説明のつかない、 同じいのちを持つものと者との間に通い合う、 言葉ができる、はるかむかしより いのちあるものに具わっていた、意思の疎通としか言えない
唯の身体から少しだけ離れ、彼女の表情を読み取ろうとしていた。 (表情?やはり人形だと、認識したばかりなのに・・・)
つぶらな瞳が、大好きだった長い睫毛が、 濡れている!
「浩次・・・ねえ、あなたなのね・・・」 「唯、? そうなのか?」
(そんな・・・ことが・・・) 浩次のこころを読み取ったのか、唯の手が震えながら 彼の手をとる
いま、わたしの命が降りてきたの、ただ、あなたに・・ あなたに会いたい、そのためだけに、会いにきたわ・・・」
唯の想いは、このうたのようだと思うのです、
完 最後までお読み頂けて、ありがとうございます 一日一回有効です お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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