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2021年10月14日
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カテゴリ:新聞などから
前からどうやっても、何回やっても最初の1行は段落にできません。飛び出していて不格好ですがお許しください。

 サンデー毎日の山下進執筆の『2050年のメディア』で、映画『MINAMATA』は「史実に基づく物語」と黒いスクリーンに白いテロップがものものしく浮かび上がるが、すべてが史実であるわけではない、と指摘している。その部分は、「チッソ社長がユージン・スミスに現金で賄賂を渡そうとし、それを突き返すシーン」「スミスの暗室となっていた小屋が何者かに焼かれ全焼するシーン」どちらも真実ではない、とする。賄賂はスミス本人しか知り得ないことで、彼がどこかで口に出すか書かない限り確かなことは分からない。
 さて、本題はここではない。山下が「中でもあり得ないと思ったのは、チッソが経営する病院に医者の変装をしてもぐりこみ、会社お抱えの医者の資料を盗撮するシーンだ」と記述するシーン。こんなことが描写されては宇井純も草葉の陰で泣いていることだろう。こんな有名な話をジョニー・デップという役者の見せ場にするとは本当に許せない。
 以下で宇井は子供向けの「のびのび人生論11」『キミよ歩いて考えろ』(1979年ポプラ社)でことの真相を書いている。
 「水俣病という不思議な病気がある。地元の大学の工場排水の中の水銀が原因ではないかという説に対して違うという説もあり真相は不明だ。水銀といえば勤務していた日本ゼオン高岡工場で私も川に流したことがある。工場から出る少しばかりの水銀でそんな恐ろしい病気が出るとは思えない。念のため調べてみよう。万が一そんなことがあったら高岡工場だって気をつけなければならない。
 私たちの身の回りにある電線やビニールの風呂敷などは塩化ビニール樹脂で作られているが、特別な油でないと柔らかくすることができない。この油は新日本窒素水俣工場で作られている。水俣工場の一手専売だからいつもフル稼働で不況の波を受けなかった。
 2度目に現地で知り合ったカメラマンの桑原史成さんと工場附属病院を訪れると若い真面目そうな医師がけっこう親切に教えてくれた。先生がノートを繰りながらデータを説明している最中に看護婦が先生を呼びに来た。先生はノートを机の上に置いて出ていった。桑原さんとのぞいてみると酢酸工場の排水の中に水銀がどの程度含まれていたかのデータがあるではないか。その排水をネコに飲ませると完全な水俣病の症状が出ること、排水を濃縮していくと有機水銀の結晶ができたこと、それを食べさせると水俣病がおこる、つまり有機水銀が原因と証明した報告書だった。
 今は退職した、病気の発見者である細川付属病院長の細川博士を訪ねて質すると、そこまでつきとめたのなら私も本当のことを話そう。実はもっと早くから水俣病の原因は分かっていた。今の日本では会社の力は強い。人に信じてもらえるようになるには慎重な準備がいるだろう。君は若いのだから、あせってはやまってはいけない。東京に帰ってからもこの大きすぎる秘密をどうするかは大変なことだった。
 1965年、新潟で水俣病発生のニュースを見て驚いた。批判を恐れず本当のことを発表していたら第2の水俣病が起こることを食い止められたかもしれない。もう繰り返すわけにはいかない。1967年、水俣裁判が始まり弁護団に加わった。」(83ページ~148ページ抄)
 事実を知り水俣裁判が始まるまでの約10年間、宇井は桑原の写真集の解説や合化労連の機関誌に事実を発表してきたが広く知れ渡ることはなかった。蛇足だが宇井が勤務した日本ゼオン高岡工場の水銀廃液は無機水銀で健康被害とは無関係だったという。
 さて、何故私が昔々の話を長々と書いているのか。私が反原発運動に関わったのは1993年の嶋橋原発労災、浜岡原発に9年半勤務し29歳の若さで亡くなった嶋橋伸之さんを知ってからだった。母の美智子さんと共にニュースを出し、『息子はなぜ白血病で死んだのか』という本も上梓した。10年以上、もっと前か、嶋橋さんから伸之さんのことを映画にしたいという申し出があったがどうしたものか、との相談があった。私は映画になると事実と異なることが描写されることもあると知っていたのでちょっと心配だった。だが嶋橋さんはとても乗り気でそんなことは言えない。年が明けて脚本の一部が嶋橋さん宅に届いて、読むとビックリ。なんと伸之さんは不良扱いで、おまけにお父さんは死んでいるというのだ。オイオイ、正秀さんはお元気で存命だ。嶋橋さんはカンカンに怒っていた。結局、映画の話は立ち消え。他の粗筋は許せても、自分の息子が不良扱いで夫まで殺されては許諾できかねた。
 そんな話を思い出して長々と書いてしまった。

追記
 正秀さんはすでにお亡くなりになり、美智子さんはいま介護施設でお過ごしです。





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最終更新日  2021年10月15日 08時32分23秒
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