三十何年ぶりの落馬
急に寒くなった那須です。私、この一月ばかり馬を1頭任されて乗っているのですが、その馬が20歳のアングロアラブ、元福山のチャンピオンホースのスイグンなのです。4年前に初めて乗った時は、割とおとなしい馬とのイメージがありましたし、この4年、初心者の乗馬に使っていましたから、もうすぐ64歳の私に預けてくれたのだと思いますが、まともに乗ってみたら大分印象が変わりました。私、馬を預かると、まずリズムを整えることから始めるのですが、跛行までは行かないまでも、何となくギクシャクしているのです。うーん、これだと20歳という年齢もあるし、無理はさせられないなと考え、本当なら一昨年リハビリを請け負った23歳のダブリンライオンのように速歩での坂路馬場の登坂を繰り返して調整したいところなのですが、普通に馬場で軽めに乗って調整することにしたのです。すると、時々大暴れをするのです。まあ、53年の経験というよりも、単純に小学生の時に暴れ馬に乗りまくっていた経験からなのでしょうが、私、何となく馬の動きについていけるのです。事実、小学生の時には、馬があちらに見えても落ちませんでしたし、いまだにそれに近いことができるのです。この一月間で、6回ぐらい普通なら絶対落ちたよなあと思う暴れ方をされましたが、落ちなかったのは動きについていけるからだったと思います。ですから、50年以上乗っていても数えられるほどしか落馬したことが無いのですが、先週、三十何年かぶりに落ちました。原因はカラスで、カラスが馬場に設置されている鏡に映った自分と喧嘩していたのです。それを見て驚いたスイグン君、まず左に反転したのですが、そのまま転倒すると思ったぐらいに傾いたのです。恐らく45度ぐらいは傾いたと思いますし、左足が地面に着くと思ったほどだったのですが、そこからが元チャンピオンのアングロアラブのバランスの凄いところで、こけなかったどころか、右向きに起き上がりつつ反転したのです。正直信じられないような動きでしたし、落ちないのが特技の私でもその動きにはついていけませんでした。それでも、左足がひっかりましたし、そのままは落ちず、馬の首の右側に手綱で宙ぶらりんになった状態で止まりました。冷静に考えた結果、この位置から這い上がるには手綱を引っ張るしかなく、そうなると頭絡が外れる危険性が大きかったので、諦めて降りました。ですから、落馬とは言えないような落ち方ではあったのですが、まあ、意図せずに降りることになったことに変わりはありませんから、三十数年ぶりの落馬としました。スイグン君、悪いと思ったのかおとなしく止まっていましたので、最近は無理せず踏み段のある所でしか乗らなかった私ですが、何も使わずに左足を鐙にひっかけてさっと乗りました。そして、まず「カーカー」と大声を出してカラスを追っ払い、安全を確保してから運動させました。今回、怪我をしないのも特技の私でしたが、反転した時に左足がひっかかったため、左足のふくらはぎを肉離れしました。2日間跛行し、腰や背中にも痛みが出ましたが、1週間たって走り回れるまで回復しましたから、年齢の割には強健なのだと思います。その後スイグン君、休日も休みなしに運動させていますが、そのせいか、大分おとなしくなりました。候補生だと何かあると直ぐ手綱を引っ張るため、背中を張って首を上げる癖がついていましたから、手綱は極力引っ張らずに脚で推進して首を前下方に伸ばさせて背中をほぐしてやるようにして動きを整えています。馬の20歳、普通そこまで生かしておくことが少ないため、一概に人間だと何歳とは言えないのですが、63歳の私よりも年寄りである可能性大です。ホースセラピーという療法がありますが、人間、普通に乗馬しているだけで、自然に体のバランスを取りますから、体幹を鍛える効果があります。爺が爺に乗ってお互い健康に生きて行くことを目標にすることにします。画像はスイグン君ですが、この馬、小さい頃にケガしたとかで、しっぽがないのです。見栄えが悪いので、現役の競走馬時代はしっぽに付け毛をつけて出走していました。ハエタタキの役目も果たすしっぽがないせいか、ハエを異常に嫌いますが、ピコピコと振るしっぽも可愛い馬です。